7月1日より募集開始のFFF-S。過去、最優秀賞受賞者が語る映画祭挑戦と映画作り

学生短編映画祭FFF-S
最優秀賞『花人』監督
Ayako Suzuki
鈴木 絢子

未来を担う学生クリエイターのための短編映画祭「Fellows Film Festival for Studemts(以下、FFF-S)」。国内の学生を対象に、4分以内のショートフィルムを募集したこの映画祭では毎年さまざまなジャンルの映像作品が集まり、賞に選ばれた作品はテレビ番組やSNSを通じて広く世に発信されます。

第8回を迎える今年は、新たに【実写部門】【アニメ・CG部門】【小学生部門】を設置し、各部門ごとに最優秀賞・優秀賞・観客賞などを選出し、一次審査通過作品は都内映画館にて上映されます。
最優秀賞の賞金総額は65万円。その他にも優秀賞(×2)には賞金10万円、観客賞には賞金10万円が贈られます。

2025年7月1日から募集が始まる「FFF-S第8回大会」を前に、今回は第7回大会で最優秀賞を受賞した鈴木 絢子(すずき あやこ)さんにインタビューを実施。少女の悩みと心の変化に迫った受賞作『花人(かじん)』はいかに生まれたのか?映画監督を目指したきっかけは?FFF-Sへの挑戦を考えている学生クリエイターたちへのメッセージもいただきました。

前回の映画祭で一次落選…。それでも、諦めたくなかった。

この度は第7回FFF-S最優秀賞受賞、おめでとうございます!まずは受賞時の率直な感想から教えてもらえますか?

ありがとうございます!本当に驚きました。どの作品もレベルが高く、まさか自分が選ばれるとは思ってなかったです。それと同時に、これまで携わってきた人たちへの感謝の気持ちが溢れてきました。でも、やっぱり今でもびっくりしています(笑)。

渋谷 ユーロライブにて開催された映画祭では、鈴木さんの作品含め、計14作品が発表されました。自分の作品が大きなスクリーンで映し出されるのはどんな感覚なんでしょう?

当日は審査員の方々含めいろんな方に劇場に来てもらっていたので、たくさんの人に作品を観てもらえるのが嬉しかったです。ただ、大きい画面で自分の作品が映し出されたとき「うわー…ここ別の撮り方にすればよかったな…」と、反省点が思い浮かんじゃって(笑)。

鈴木さんは前回開催の映画祭でも応募していましたが、その時は一次落選という苦い経験をされています。

悔しかったです。でもその時、自分がなぜ落選したのかを分析しました。理由はいろいろあると思うのですが、自分的に前回の作品はテーマが分かりにくく、観る手に伝わっていなかったと思ったんです。

FFF-Sは、私と同じ年代の学生が参加していて刺激になるし、審査員の方たちもすごい方々が多い映画祭です。前回はダメだったけど、今回は何とかノミネートだけでも…!と思い、映像面や演出もゼロから再構築しました。リベンジを果たすことができて良かったです。

“君はどこも悪くない”少女の心を描いた『花人』誕生秘話

今回受賞された『花人』は、自身の身体から花が生み出されてしまう「花人病」に悩む少女の葛藤が描かれていました。どのような着想を基に、制作が進んだのでしょう?

もともと花をモチーフにした写真や映像が好きだったので、自分の作品にも花を取り入れたいと思ったのがスタートです。加えて、『ハリーポッター』みたいな異能力を用いたファンタジー系の作品も大好きなので、花×能力を自分なりに広げていき、脚本づくりも進めました。

全体的にテンポの良い映像表現が印象的でした。制作の部分で意識したところはどんな部分ですか?

今回の作品は主人公の心の変化がベースにあり、その変化に合わせた映像表現を心がけました。そのため、序盤はモノクロのトーンが続きますが、登場人物の一言で心が晴れやかになる様を描くためにラストの色彩をカラフルにしています。

また、短い間隔で違うアングルのカットが連続したり、画面の切り替わりで横のスライドを使用したりしていますが、あれは当時夢中になっていた黒澤明監督の作品を踏襲してみました。

審査員で女優の広山 詞葉さんからも、「過去の自分への救済」というフィードバックがありました。『花人』を通し、観た人に何を感じてほしいと考えていましたか?

『花人』では、“コンプレックス”が作品のテーマになっていますが、観た人が少しだけ前を向ける物語でありたいと考えていました。作中で、花人病を治してほしいとつぶやく少女に「それはできない。だって君はどこも悪くないから」と男の子が語りかけるシーンがあり、その後のシーンは作品最大の見せ場でもあります。

得てしてコンプレックスというものは努力してもどうにもならないことが多く、一生付き合わなければいけないもの。大なり小なり苦しみが伴うと思います。そんなとき、「君はどこも悪くない」という、一見綺麗ごとにも思える言葉をかけてくれる人が周りに一人でもいれば、それだけで救われると思うんです。テーマは少し重いけど、ちょっとでも勇気を与えられるような物語を作りたいと思い、制作に臨みました。

実際に企画から撮影、編集まで、演者の方含めどのように進んでいったのでしょう?

期間で言うと4か月位ですね。あまり私がディレクションに深く入り込むというよりかは、脚本を固めて演者と一緒に話し合いながら撮影を進めていきました。とにかく明るい現場がいいなと思っていたのですが、演じてくれた二人は撮影の合間もずっと練習してくれていて、すごく助かりましたし、楽しかったです。

映画監督を目指すきっかけは『ナイト ミュージアム』

鈴木さんが映画監督を目指すようになったきっかけはなんでしたか?

子どもの頃に観た『ナイト ミュージアム』という作品が大好きだったのですが、その時はまだシーズン2までしかなかったんです。私はどうしても3作目が観たくて、そのためにはどうしたらいいかな?と思った時に、自分が映画監督になってナイト ミュージアム3を作ればいいんだ!と思ったことが、初めて“映画監督”という職業を意識した瞬間でした。

さきほど「ファンタジー系が好き」と言っていたのは、その時の影響もあったんですね!

そうかもしれないです。博物館の展示品が勝手に動き出し、俳優がその作品たちと仲良くコミュニケーションをとる姿に本当にワクワクしました。こんなに楽しい空間があるのか!って。

その後はどのように実績を積んでいったのでしょう?

中学のときは少しずつですが、映像編集をやりはじめていました。高校に入ってからは、小学校のときに抱いた夢を形にするために、「絶対に映画監督になる!」と本腰を入れ、独学で学んでいました。いくつかコンテストへの応募を始めたのもこの頃です。

その後入学した愛知県立芸術大学(現在4回生)では、カメラ機材の使い方、映像編集ノウハウ、脚本のまとめ方など、映像に関する内容を幅広く学んでいます。

現在、鈴木さんが目指している監督像や、尊敬している監督はいますか?

もう、たくさんいすぎて絞れないです…(笑)。例えば最近見たのが黒澤明監督の『七人の侍』なんですが、歴史を追うだけでなく物語のエンタメ性が高くてすごく面白かったです。それでいて、しっかりアカデミックな要素も入っていて感動しました。

あとは『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督は、黒澤監督の様にエンタメとアカデミックを両立させた作品をたくさん生み出しています。それから『南極料理人』の沖田修一監督は会話のテンポも軽快でテーマも伝わりやすくて…もうたくさんいすぎて一人には絞れないですね(笑)。まだまだ観ていない作品も多いので、日々勉強です。

挑戦することでしか見えない景色がある

現在大学4年で、今年度で卒業されます。卒業後はどんなキャリアを積んでいきたいですか?

一番はやはり、映画監督として活動だけで生きていくことです。今回のFFF-Sではいろんな方に協力してもらっていい作品ができましたが、私自身はまだまだ未熟な部分ばかりです。今回のイベントで最優秀賞をいただいたからこそ、よりいっそう気を引き締めていくのが、当面の目標です。

鈴木さんが映画を作るうえで、これだけは譲れない!と考えているこだわりはありますか?

また今後変わるかもしれないですが、やっぱりなるべく明るい作品を作りたいです。テーマがどれだけ重くても、明るいテーマの方がよりたくさんの方に観てもらえると考えているので。そして、実は現在、新作を作り始めています!学園モノで、少しラブストーリーの要素を織り交ぜた作品になる予定です。

そうだったんですね!新作も楽しみにしています!最後に、鈴木さんと同じく、映画監督を目指す若い人達にメッセージをいただけますか?

今回の映画祭では、全国にいる同世代、そして同じく映像業界を目指す方々と出会う機会に恵まれ、大きな刺激を受けました。だから、不安でも参加することで得られるモノは必ずあると思います。

私みたいに、1度応募して結果が出なかったとしても、何度でもチャンスを見つけてトライしてほしい。こうやってインタビュー受けるのは初めての経験ですが、そういう経験は何かに全力で取り組んでみないと、分からないことでもあります。皆さんもぜひ挑戦してみてください。

取材日:2025年5月27日 ライター:FM中西

第8回フェローズフィルムフェスティバル 学生部門(FFF-S)

株式会社フェローズが主催する学生のための「短編映画祭」では、国内の学生を対象に4分以内のショートフィルムを募集しています。
応募期間:2025年7月1日(月)~9月30日(月)

詳細はこちら→https://www.fellow-s.co.jp/fff-s/

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP