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CREATIVEクリエイティブ好奇心

日本発のミュージカル「2.5次元ミュージカル」を徹底解剖!

Vol.155
「日本2.5次元ミュージカル協会」広報 遠田尚美さん
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝はじまりの巨人〞

© 古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Aki Tanaka
漫画・アニメ・ゲームを原作とした舞台「2.5次元ミュージカル」は、今や年間上演作品数が130作品を超え、海外からも熱い注目を浴びていることをご存じでしょうか。2003年のミュージカル『テニスの王子様』の初演から15年。単なるブームで終わらない「2.5次元ミュージカル」の人気の秘密、ファンから支持される「2.5次元」を実現する演出、海外での注目度について「日本2.5次元ミュージカル協会」の広報担当、遠田尚美さんに伺いました。

そもそも「2.5次元ミュージカル」って、何?

まずは「2.5次元ミュージカル」について教えてください。

2.5次元ミュージカルは、漫画・アニメ・ゲーム原作の舞台化の総称です。ミュージカルとしていますが、ストレートプレイ、歌のないものも含まれます。

「2.5次元ミュージカル」という言葉は、いつから使われているのでしょうか?

この言葉はファンの皆さんの中から、自然発生的に生まれたものです。
2次元の原作を、舞台では3次元化しています。演じているのは3次元の役者さんですが、舞台化で一番大切にしているのは2次元である原作のキャラクターや世界観です。舞台を見たお客様が「これは3次元ではなく、2次元と3次元の間の2.5次元なんじゃないか」ということで、誕生した表現と聞いています。

2014年3月に協会を設立する頃には、「2.5次元ミュージカル」という言葉はファンの皆さんを通してある程度、広まっていました。これはとても素敵なネーミングじゃないかということで、協会名に採用させていただきました。
また、協会では「2.5次元ミュージカル」を英訳した2.5-Dimensional Musicalを略した愛称として2.5D(ニーテンゴディー)とも呼んでいます。

ブームでは終わらない「2.5次元ミュージカル」

ミュージカル『テニスの王子様』15周年記念コンサート Dream Live 2018
© 許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト
© 許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

協会が設立された経緯を教えてください。

協会が設立された2014年は、ミュージカル『テニスの王子様』(通称テニミュ)が初演から10年以上経過し、漫画やアニメ、ゲーム原作の舞台化作品も増え、多くのお客様に認知し始めてきたころでした。これを単なるブームで終わらせず、ジャンルとして昇華させようということで、協会設立の動きに至りました。

2011年頃から、公演作品数が急に増えているのですが(ぴあ総研調べ)、この時期、これまで漫画作品はTVアニメ化、アニメ映画化、実写の映画化やドラマ化が作品の二次利用として通常だったところに、テニミュが10年近く続き、動員数も増えてきていたことで、「舞台化」という可能性があることを出版社や原作者の皆さんが認知してくださるようになりました。また、漫画のほか、アニメやゲームを含めた多様な原作を舞台化できるようになってきて、そういった背景もあり、日本が誇る漫画・アニメ・ゲームを原作とした「2.5次元ミュージカル」を世界に向けて発信するエンターテインメントの一つとして、もっと成長させていこうという動きが生まれました。関連する各社が個々に何かをするのではなく、オールジャパンで取り組もうということになり、2014年3月に当協会が設立されました。

ジャンル化を目指したプロモーション活動

「日本2.5次元ミュージカル協会」広報 遠田尚美さん

協会は、どのような役割を担っているのでしょうか?

協会の担っているミッションは、大きく分けて国内と海外の2つあります。

国内においては、2.5次元ミュージカルをブームにとどまらずジャンルとして確立させていくことです。そのためには、まず認知を広げることが重要です。そこで2.5次元ミュージカル全体としてのプロモーションに関しては、協会で包括的にサポートさせていただいています。 また、協会員の皆様(現在、75団体が所属)に向けて隔月でセミナーを実施しています。セミナーには、毎回、主にエンターテイメント事業に関連するゲストスピーカーをお招きし、様々なお話をしていただいています。また、セミナーを通じて各協会員の皆様同士の交流や、情報共有の場として活用していただいています。
他には、ぴあ総研さんと組んで2.5次元ミュージカルに関連する数字関係の統計を毎年発表させていただいています。

海外においては、最終的には2.5次元ミュージカルが世界中の色々な国で上演されることを目標に掲げています。原作となる日本が誇る漫画・アニメ・ゲームは、すでに多くの国で認知されています。日本が国内で欧米ミュージカルの権利を買って上演しているのと同様に、「2.5次元ミュージカル」の作品の権利を海外に売ることで、世界各国で2.5次元ミュージカルが上演されることを目標にしています。

2.5次元ミュージカルの海外公演の実情

Anime Matsuri 2017
© 武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2016

海外公演は、どのように上演しているのですか?

上演のパターンには2つあります。1つは日本での公演同様、日本人のスタッフ、キャストがそのまま海外に行って公演するパターン。もう1つは例えば、「デスノート THE MUSICAL」のように海外に公演の権利を購入してもらうパターンです。この作品ははじめから世界を視野に置き、ブロードウェイの制作スタッフを起用し、音楽や脚本はすべて英語で作っています。日本で日本人キャスト・スタッフによる公演が終わった後に行われた韓国公演では、演出のみ日本公演と同じ日本人でしたが、キャストとスタッフはすべて韓国人で上演しています。

「2.5次元ミュージカル」は、海外ではどこの国で人気が高いのでしょうか?

作品によって異なります。ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」は、2017年にヒューストンで催されたアニメイベント内のショーで1万人を動員したり、パリのJAPAN EXPO等でも人気で、欧米人気が高い作品ですね。

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」(以下、演劇「ハイキュー!!」)もアメリカでアニメが始まってから日本での公演に多くのアメリカ人が来場するようになりました。「刀剣乱舞-ONLINE-」や『あんさんぶるスターズ!』などアプリゲームが舞台化した作品は、アジア人気が高いです。また、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」もアジアを中心に公演を行っていて、海外人気が高い作品です。やはり、原作人気に紐づくケースが多いですね。

最新の映像技術と演出のアイデアで実現する「2.5次元」の世界

舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇~箱根学園王者復格(ザ・キングダム)~
© 渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル04製作委員会
© 渡辺航(週刊少年チャンピオン)/マーベラス、東宝、アルテメイト

「2.5次元ミュージカル」の一番の魅力はなんだと思いますか?

すでに原作の漫画・アニメ・ゲームは多くの方にその世界観が認知されています。2.5次元ミュージカルは、自分が好きな原作の世界観やキャラクターが、実際に目の前で再現されます。この点にお客様は魅かれるのではないでしょうか。
シリーズ化されたり、多数のお客様を動員する作品の多くは、原作をとても上手に舞台に変換しています。たとえばテニミュでは、試合を光と音で表現していますし、演劇「ハイキュー!!」は、プロジェクションマッピングを上手に活用し、バレーボールの試合を表現しています。 原作の世界観をその作品にあった演出方法で3次元化することで、観る人の補完も相まって、舞台として楽しんでいただけているのだと思います。

そういった演出方法は企画の段階から決まっているのですか?

演出家とプロデューサー、そして原作者サイドの間で色々と試行錯誤して舞台の世界観が作られていくのだと思います。

テニミュに関して言うと、演出の上島雪夫さんは元々ダンサーそして振付家で、原作漫画を読んだ上島さんが「テニスの試合を踊っているようだ」と感じたことから始まったという話を聞いたことがあります。 舞台『弱虫ペダル』は劇中のロードレースに自転車は一切出てきません。役者が手にしているのは自転車のハンドルだけなんです。これは演出家の西田シャトナーさんが、役者さんの身体を使った演劇表現を得意とされる方だったこともあり、実際にはハンドルだけしか持っていないけれど、舞台上では不思議と自転車が見えるんです。(笑)

演劇「ハイキュー!!」のプロジェクションマッピングは斬新な演出ですよね。

そうですね。少し前までは舞台の照明と映像は相性が悪かったそうです。照明を生かすと映像が見えにくくなってしまったり。それが、ここ数年の技術の発達もあり、映像と照明が共存できるようになって、演出の幅も広がったと聞いています。

2.5次元ミュージカル専用劇場「アイア2.5シアタートーキョー」

「アイア2.5シアタートーキョー」について伺います。なぜ専用劇場が必要だったのでしょうか?

ちょうど建物自体の耐久年数の問題で、老朽化を迎える劇場が多く、建て替えの時期も重なったことから、ここ数年、2.5次元ミュージカルのみではなく、演劇業界がずっと劇場不足に悩まされていたのが現状です。協会設立時に、せっかく作品数も増えて「2.5次元ミュージカル」が普及しはじめているのに、上演する場所がない、という懸念があり、いつでも2.5次元ミュージカルが観られる場所として、専用劇場を、何とか準備し提供したいと考えていました。

こうしたことを背景に2015年3月から「アイア2.5シアタートーキョー」を2.5次元ミュージカル専用劇場として、協会で運用しています。稼働率は現在、ほぼ100%で、上演予定は一年先まで埋まっているような状態でした。しかし、残念ながら、劇場のある土地の返却期限によって、今年の10月で運用が終了します。

専用劇場には、何か特色はありますか?

インバウンド向けのサービスとして字幕メガネ(メガネ型字幕システム)を常備しています。 海外の方たちは、日本の漫画・アニメ・ゲームを私たちが思う以上にご存じです。それが原作の舞台であれば、きっと楽しんでいただけるはずだと考え、ウェアラブルタイプの世界初の多言語対応字幕メガネ(最大4か国語対応可能)を導入しました。実際に、字幕メガネを導入していた公演では、多いものだと公演期間中に100台以上貸し出したこともあり、利用されたお客さんには楽しんでいただいています。

インバウンドに対してのプロモーションは、どんなことをしているんですか?

協会が出来た頃は、まだ海外から直接チケットを買うことができませんでした。現在は協会員でもある各プレイガイドさんにご協力いただき、協会サイトから海外からでも直接チケットを購入できるシステムを作らせていただきました。

また、アイア2.5シアタートーキョーは渋谷にあるので、渋谷区観光協会や、渋谷区内にあるホテルに日本語・英語・中国語3ヶ国語を併記した劇場リーフレットを置いていただき、認知を広めています。その他、原宿にあるH.I.S.が運営してるツーリストインフォメーションセンターでチケット販売をすることもあります。

12万人が参加するメルマガ会員「2.5フレンズ」

「2.5フレンズ」について教えてください。

「2.5フレンズ」という無料のメルマガ会員の組織を協会で運営しています。現在は会員数が12万人。昨年の5月頃から考えると2倍以上になりました。「2.5フレンズ」では、協会の公式サイトに掲載している作品の公演情報やチケットの先行販売情報など、各種情報をメールマガジンでお届けしています。また、「2.5フレンズ」会員を対象に「2.5Dゲネプロレポーター」としてゲネプロのレポーターを不定期に募集したり、「あなたにとっての2.5Dとは?」というキャッチコピーを募集したりしています。このキャッチコピーは協会で定めた“毎月25日は「2.5Dの日」"というプロモーションの一環で、応募していただいものを25日の2.5Dの日に、協会の公式サイト上で、発表しています。
また、今年3月から二代目2.5Dアンバサダーに、演劇「ハイキュー!!」で主演の日向翔陽役を務める須賀健太さんをお迎えして、GYAO!で協会の公式番組「What's 2.5D?」(https://gyao.yahoo.co.jp/p/11251/v00001/)の無料配信も開始しています。2.5Dアンバサダーの須賀健太さんが、毎回ゲストを招いて2.5次元ミュージカルを中心にお話を伺う「健太ラボ。」や、毎月様々な公演出演者が登場する「すっぴんキャスト」など、2.5次元ミュージカルに関する情報をお送りしていますので、まだ2.5次元ミュージカルについてよくわからないという方にもぜひ、ご覧いただければと思います。

※オペラやバレエ、演劇などの舞台芸術やクラシック音楽において、初日公演や演奏会の本番間近に本番同様に舞台上で行う最終リハーサル、「通し稽古」のことを意味する。

最後に。協会設立から5年目になりますが、ジャンルとして確立している実感はありますか?

最近は「2.5次元ミュージカル」で初めて演劇に接して、ほかの古典や欧米ミュージカルを観に行くという方も多くいらっしゃるそうです。そういった演劇世界の入口としても2.5次元ミュージカル作品が受け入れられているのはうれしいなと思います。演劇業界全体の活性化にもつながりますから。さらに、以前は原作が好きで観劇に来られるお客様がほとんどでしたが、最近は友人に誘われて原作を知らずに観て「面白かったので、また違うものを観てみたい」という方も非常に増えています。

また、今年は「ジャポニスム2018」という日本とフランス政府の文化交流の芸術イベントに、公式演目としてミュージカル『刀剣乱舞』と「美少女戦士セーラームーン」のパフォーマンスショー「"Pretty Guardian Sailor Moon" The Super Live」が選ばれ、パリで公演を行います。

「2.5次元ミュージカル」がどんなジャンルなのかを、一般の方にも少しは分かってもらえるようになったかなと、やっと感じるようになってきました。でもまだまだ知らない方や観たことがない方も多いのが現実です。

以前、日本語学校の取材で、海外の方が日本語を学ぶきっかけの多くは漫画だと伺いました。日本の漫画やアニメ、ゲームが世界に及ぼす影響力や魅力は高いとますます実感しています。こうしたことを強みに、2.5次元ミュージカルを世界中にライブ・エンターテインメントの一つとして広めていきたいですし、協会として、そのお手伝いができたらいいなと思っています。

取材日:2018年5月9日 ライター:渡辺りえ

一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会(VenusLaser Inc.)

  • 代表者名:代表理事 松田誠
  • 設立年月:2014年3月
  • 事業内容:
    以下の事業を通じて、2.5次元ミュージカルに関する活動を支援します。
    ・ 2.5次元ミュージカルに関する実態調査及び報告書の作成
    ・ 2.5次元ミュージカルの推進・支援事業
    ・ 2.5次元ミュージカルに関するイベントの実施及び運営
    ・ 2.5次元ミュージカルに関する海外コンベンションへの参加
    ・ 2.5次元ミュージカルに関する研修会及び勉強会の実施
    ・ 2.5次元ミュージカルに関する海外興業の企画及び実施並びに運営
    ・ 海外への知的財産権の使用並びに利用許諾に関するサポート業務及びそれに付随する管理業務
    ・ 2.5次元ミュージカルに関する国内外におけるネットワークの構築
    ・ それらの事業に附帯又は関連する事業
  • 所在地:東京都目黒区東山1-2-2 目黒東山スクエアビル
  • TEL:03-6758-0871
  • FAX:03-6758-0872
  • URL:https://www.j25musical.jp
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