なぜ捨てられなかったのか―服が伝える30人の記憶

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

何度季節が巡っても、なぜか捨てられない服はないだろうか。

今季着なかったら絶対捨てる!と衣替えのたびに決意して、やっぱり1回も着なかったのに、結局衣装ケースにそっと冷凍保存してしまう服。
(テレビか何かで冷凍庫はタイムマシンではないと言っていたけど、衣装ケースは間違いなくタイムマシンだなぁ)

先月、富山県で「なぜ捨てられなかったのか?〜30人の物語と、思い出の服の再会〜」というイベントが開催された。

洋服・着物のフルオーダーメイドリフォーム店「Atelier doudou de funfun(アトリエ ドゥドゥ・デ・ファンファン)」さんが企画した個展だ。

2021年のオープンから同店が手がけた800着以上の衣類のうち、30人の女性の服や小物35点を一堂に展示した。

それは、高級ブランドの洋服だったり、思い出の着物だったり、おばあちゃんから譲り受けたコートだったり、何度も着続けたお気に入りだったり。

リメイク後の衣類(写真1点を除き、現物)とあわせて、リメイク前の写真と、持ち主の女性たちが語る「捨てられなかった想い」がパネルで紹介されている。

同店のリメイク技術もさることながら、展示の軸はタイトルにある通り、「なぜ捨てられなかったのか?」という問いかけの答えにある。

衣類は古くなったら捨ててしまうことは多いし、新しく買い替えるという選択肢は自然だ。

だけど「捨てられない」のは、それがその人にとって「証」だったり「繋がり」だったり、「思い出」だったりするから。

それぞれが人生を振り返った時、その捨てられなかった服がいかに光を放つか。

ずっと思い出すわけではないけど、確かに光り続けるから、折に触れてはどうしようかなと迷い、出してみてはまたタイムマシンに仕舞うのだろう。

人間はどうしても年を取るし、形が変わる。環境も状況も変わる。

大切な服を今の持ち主の「今」や「希望」に沿って、サイズやデザイン、着やすさを仕立て直し、お気に入りのまま新しく再生する同店の取り組みは、服や人に対する愛を感じる。

同店代表の山口亜耶さんは富山県出身で、東京で約15年間、スタイリストアシスタントや銀座の⾼級仕⽴て直し店で経験を積んできた。

幼少期から服が好きだったという山口さん自身、「本当に惹かれていたのは、服そのものよりも、服にまつわる人の記憶や想い、物語のようなもの」だと話す。

今回の展示は山口さんにとっても、初の個展となった。

地元・富山に戻り、オーダーメイドで衣類のリメイクを行う中で、大切な服を大切にしていくために行動した30人の女性のエピソードを通じ、観た人が身の回りにある自分の大切なものを見つめるきっかけになればと思い、開催を決めたという。

3日間の展示には約2,000人が訪れた。

山口さんは「ほとんどの方がゆっくり、じっくり見てくださり、しっかり伝わっていると理解できた時、自分が信じてやってきたことは間違っていなかったと思えた」と振り返る。

服に限らず捨てられないモノ、自分のためのモノも誰かにもらったモノも、もしかしたらあってもなくてもいいモノも、それを大切にする気持ちが人をきっと豊かにする。

そう感じさせられた展示会だった。

「なぜ捨てられなかったのか?〜30人の物語と、思い出の服の再会〜」※展示は終了
会期:2026年7月3日(金)〜7月5日(日)
会場:富山市ガラス美術館 5階 ギャラリー1
主催:Atelier doudou de funfun

画像提供:Atelier doudou de funfun

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線、動画配信サービスのまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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