「ありがとう!スズトウシャドウ展」で紙と人とのつながりを知る
金沢で5月19日から、「ありがとう!スズトウシャドウ展」が開催されている。
スズトウシャドウは、石川県珠洲市にあった印刷会社。能登半島地震による被災や職人の退職などが重なり、2025年7月に閉業した。多色刷りを安価に提供し、同人誌作家から高い支持を集めてきた存在だった。
閉業時には、印刷用に保管していた特殊紙を無料で配布するなど、最後まで作家思いの姿勢を貫いた。そのスズトウシャドウ印刷への感謝を込めて、17人のアーティストが紙を使った作品展を企画した。

中心となったのは、学生時代から同社に印刷を依頼していたイラストレーターのつなさんだ。本展では、原画や立体的な額絵を展示している。

企画の発端は、能登半島地震で一時休業を余儀なくされたスズトウシャドウ印刷を応援するために、つながりのあった作家に声をかけて制作したポストカードだったという。漫画家だけでなく、加賀友禅、木彫刻、沈金、九谷焼など工芸作家も参加し、売上をスズトウシャドウ印刷の再建と能登半島地震の復興支援に充てた。

結果的に閉業となったものの、「技術力の高さや存在を記憶に残したい」という想いから、ポストカード制作メンバーを含む作家たちが協力し、今回の展示が実現した。
木彫刻作家の齊藤美知代さんは、レターセットや珠洲をイメージした青海波などの小紋柄を彫った木製クリップ付きのメモ帳を制作。スズトウシャドウ印刷から譲り受けた紙に、ミシンで直接糸を縫い付けて仕上げた。

写真家の村上正幸さんは、珠洲の見附島や小泊・長手崎灯台を撮影し、同社の用紙にプリント。紙印刷ならではレトロな風合いと柔らかな発色がすてきだ。

加賀友禅作家の久恒俊治さんは、スズトウシャドウ印刷の紙を帯に見立て、手描き友禅で模様を付けた。

九谷焼作家の高辻あいさんの「猫あそびパーティー in 珠洲」では10匹+チラリ1匹の猫たちの様子が、温かみを感じる紙に描かれている。

こちらは「紙文房あらき」の店主で、オリオリ折り紙マンこと荒木崇さんが制作した「スズトウペンギン」。スズトウシャドウ印刷の紙に色を印刷して折り紙にし、光沢紙は氷に見立てた。

紙を使った作品と一口にいっても、作家さんが違えば当然だが表現はまったく異なる。そして、その根底には、消えゆく大切な存在への深い愛がある。
つなさんは「最近では紙媒体自体が失われつつあるが、用紙に向かって作家が書いた原画のパワーや臨場感は紙ならでは。手描きで表現したものや、イメージ通りの色を忠実に表現してくれたのがスズトウシャドウ印刷さんの魅力だった」と話す。
人も会社も物も、永続するものはきっとない。だが、大切なものへの「想い」やそこから生まれる「つながり」は続いていく。
そんなことを静かに感じさせてくれる「ありがとう!スズトウシャドウ展」だった。
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ありがとう!スズトウシャドウ展
開催期間:2026年5月19日(火)~5月24日(日)/10時~17時
会場:明治安田ヴィレッジ金沢1階
5月23日14時〜
スズトウシャドウ印刷 平野真由美さん&作家 紅玉いづきさんによるトークショー(参加無料)
5月24日10時〜
オリガミマンさんによる折り紙ワークショップ(参加費500円※収益は能登への寄付に使用)
参加作家:
友禅作家 久恒俊治
沈金師 芝山佳範
画家 倉林雅幸
木彫刻 齊藤美知代
ゆる休暇中 アマヤギドー
イラストレーター・グラフィックデザイナー つな
九谷焼 高辻あい
挽物木地師 生地史子
写真工作家 村上正幸
造形作家 村尾かずこ
画家 安念千尋
ほほえみ灯し人 山那香讚
芸術家 高久柊馬
オリガミマン 荒木崇
木工作家 浅見風
大学院生 一北航平
何でも写真家 村上弘幸
主催/ありがとう! スズトウシャドウ印刷展実行委員会







