AI化とグローバルのはざまで:ショートドラマでみる「次の主戦場」
中華ドラマ「霍去病」がショートとしては異例の5億再生をたたき出した、と話題になりましたが、実際には誤報だったようです。また制作体制も「3人チーム」と伝わっていましたが、実際は20人以上の大所帯とのこと。それでも「ありそう」と感じさせてしまう背景に、今回は迫ってみたいと思います。
まずざっくりとその成り立ちについて、考察していきましょう。
◆ 仕組みの大元は小説サイト? 課金×時短でスカッとの構造
そもそも中国は映像に対して取締があり、作った後にお蔵入りするケースも少なくありません。漫画などでも題材によってアウトになってしまうこともあり、そんな中、個人で比較的リスクが低い状態で、作れるプラットフォームとして小説投稿サイトが台頭しました。
日本のいわば「なろう」を浮かべる方も多いと思いますが、中国の小説プラットフォームは割と初期から範囲が広く、一つのジャンルに限らずさまざまな作品を輩出しています。ポイントは、個人レベルで『課金』の仕組みを設けられること。
創作が盛んになるにつれて、逆に映像化・ドラマ化されるケースが増えていきます。日本では、なろうからアニメになるケースが多くありますが、中国はドラマが多く作られました。(もちろんアニメもあります)
中国のドラマは尺が長く、50話前後が主軸でしたが、近年ではなるべく短くせよということで35話以内が推奨されるようになっています。しかし人気コンテンツは長くシリーズ化したい制作側の事情もあり、「シーズン制」を活用するなど、状況は複雑化しています。
この、小説からのメディアミックスの上手くいく流れと並行して、2018~2020頃に、快手(Kuaishou)や抖音(Douyin / 中国版TikTok)などのショート動画プラットフォーム上で、一般ユーザーやインフルエンサーが投稿した「寸劇」という短い映像が流行りました。
ここの発想が合わさって、プロの手によって作られていくようになり、ショートドラマが出来たのではないかと考察することも可能だと思います。

◆ 日本上陸と、プラットフォームに押し寄せるショートの波
なお日本にも、この中華のショートドラマは、ショートドラマ用のプラットフォームアプリごと入ってくるようになりました。自動翻訳に頼ってるものが多くはありますが、ShortMaxなどです。
一方で、もともとドラマを扱っていたプラットフォームにも流れとしてショートドラマの制作が押し寄せてきます。縦型とは限りませんが、中国においてはもともとドラマはすでに巨大なユーザー数を抱えるメガプラットフォーム内での視聴が主流です。
その中にこれまでのドラマと同じくらいのクオリティで制作され、流れるようになりました。
また、ショートドラマ出身のクリエイターが、通常尺のドラマ(ロングドラマ)を手がけるケースも増えています。
最近話題になった『虚顔』もその一例で、ショートの名手として知られる曾慶傑監督の作品が大手配信プラットフォームや日本のNetflixでも配信され、注目を集めました。こうした”逆流現象”は今後さらに増えていくでしょう。
ちなみに日本では、編集しなおして、時間を放映用の45分~に合わせたものが配給されるケースも珍しくありません。(BS放送などでは尺が決まっていること、中華ドラマはウェブ環境ゆえ毎度同じ分数ではないことから再編が多いのです)
なお、ショートについては、抖音(Douyin)・快手(Kuaishou):この2大プラットフォームが市場の大部分を占めており、独自の短劇チャンネルやクリエイター支援制度を設けています。
他に老舗の動画プラットフォームである騰訊視頻(テンセントビデオ)・愛奇芸(iQIYI)も専門枠を作り、映画並みのクオリティの短劇を配信しています。
◆ AIによる映像編集の波と、これからの生存戦略
細かいことは省きますが、ショートの高クオリティ化と、ショートのロング尺Ver配信、また全くあたらしいショートベースでの制作に加えて、AIによる映像編集の波が今中国には押し寄せています。中国は、最初にお話ししたとおり、「検閲」により、制作が終わった後に流れることなく終わってしまう作品というのが実在するのですが、その一因が芸能人のスキャンダルです。問題を起こした俳優が撮影済み作品に出演している場合、AIで顔を別人に差し替えて配信するというケースまで登場しています。

また最近では、IQIYIが俳優の顔そっくりなAIの生成に乗り出し、いろいろな事務所ともめている状況もでているようです。もう少し詳しく調べてみたいところですが、ものすごい速度でお金と制作が動いている国には違いなく……今後の動向から嫌でも目が離せないといえるでしょう。
この縦型ショートの熱狂やAI活用の波は、世界の主要な配信プラットフォームも注視せざるを得ない潮流となっています。
日本の制作はどうしていくのか?ローカライズで外資プラットフォームを頼っている一面もここ数年増えていただけに、どうなるかは世界全体を見ざるを得ない部分もあります。
次の主戦場を探すためにも、今押さえておきたいのは、「ドラマ」コンテンツの戦略が今後2つの方向に収束していくのではないかということかなと。
ひとつは海外需要を見込んだ大きなバジェットの作品、もうひとつは徹底したローカライズを前提とした作品——この2軸での動きが加速していくだろうと予測がつきます。その変化の裏にある、アジアのAI映像ツールの具体的な進化や、制作側の生存戦略については長くなりそうなので、別の機会にNoteなどでしていこうと思います。







