WEB・モバイル2026.03.11

ドラマ『silent』聴覚障害者視点の感想

東京
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日本文化×デザインあれこれ
いのうえ

2022年に放送されたドラマsilent。川口春奈さん目黒蓮さん主演で話題を呼びました。

私は当時リアルタイムで見れていなかったのですが、Tverで再放送されるようになったので見始めました。
本記事では難聴者視点での感想をお届けしたいと思います。

ドラマ『silent』主な登場人物

  • 青羽 紬(川口春奈)・・・本作の主人公。音楽が好きで渋谷のタワーレコードでアルバイトをしている。
  • 佐倉 想(目黒 蓮(Snow Man))・・・紬の高校時代の恋人。高校卒業後、「若年発症型両側性感音難聴」を患い聴力のほとんどを失う。
  • 戸川湊斗(鈴鹿央士)・・・紬と想の高校の同級生。高校卒業後、同窓会で紬と再会し交際を始める。
  • 春尾正輝(風間俊介)・・・手話講師。聴者。居酒屋で湊斗と出会い、後に紬に手話を教える。

【introduction】本気で愛した人と、音のない世界で“出会い直す”、 切なくも温かいラブストーリー

主人公の青羽紬(あおば・つむぎ/川口春奈)は8年前に、一生をかけて愛したいと思えた恋人との別れを経験し、新たな人生を歩もうと前を向いて生きている一人の女性。
そんな紬と大切な人との出会いは高校2年の秋、たまたま朝礼で耳にしたある男子生徒の声に惹(ひ)かれたことがきっかけでした。壇上で作文を読む、佐倉想(さくら・そう/目黒蓮)に心を奪われた紬は、次第に彼が気になる存在になっていることに気づきます。3年生で同じクラスとなり、共通の友人を通してだんだんと距離が縮まっていった二人は付き合うことに。
音楽好きというお互いの趣味で通じ合い、仲を深めていった二人でしたが、卒業後のある日、これからも一緒にいたいと思う紬に対し、想は突然、理由も言わずに別れを告げて姿を消してしまいます。

それから8年という月日が流れ、新たな人生を歩み始めていた紬でしたが、ある日、偶然、雑踏の中に想の姿を見かけたことをきっかけに、再び彼の存在を意識するようになっていきます。もう一度、想に会ってちゃんと話をしたいと彼の姿を探し始めた紬でしたが、実は彼が徐々に耳が聞こえにくくなる“若年発症型両側性感音難聴”を患い、聴力をほとんど失っていたという思いがけない現実を知ることになって…。(silent公式HPより引用)

聴覚障害者を取り巻く環境が繊細に描かれている

この作品を見始めて最初に沸いた感想が「ああ、わかる」でした。

例えば、春尾と湊斗が居酒屋で出会うシーン。

春尾「よかったらこれ(手話教室のチラシを渡す)」
湊斗「(受け取りつつも)できれば覚えたくないです。普通に(想と)会話したいです」

このシーンを見て大学時代のことが思い出されました。
私が初めて補聴器を使ったのは、大学1年生の頃でした。補聴器を買ったことを当時付き合っていた人に話すと、「できれば使って欲しくない」と言われました。
母親には「補聴器に頼ることで余計に耳が悪くなるんじゃないの?」とも言われました。

当事者はもちろんですが、周りも受け入れるのに時間が要るんです。

また、湊斗のフットサル仲間が想のことを「障害のある奴」と言っていてリアルさを感じました。全員が寄り添ってくれるわけじゃないし、理解してくれるとも限らないのが現実。

周りに言えない想の心情

想は弱音を吐いたり、周囲に頼ることができないタイプです。自分の内に抱え込んで、耳のことを言えないままに高校時代の同級生たちと縁を切りました。
元々の想の性格もありますが、聴覚障害は目に見えない障害なので、理解を得るのが難しく苦労する側面があります。

私も多感な時期は耳が悪い=カッコ悪いと感じて言えませんでした。
高校卒業時に発症して急速に聴力を失った想は気持ちの整理もできないまま、心を閉ざしてしまったのかもしれません。
就職の面でも苦労して、孤立する事も描かれています。

演出面でも細部までこだわっているのでは

2022年当時も話題になりましたが、目黒蓮さんの演技力が繊細で胸を打ちます。1話の横断歩道を渡るシーン。
耳の聞こえない想は、キョロキョロしながら渡るんです。聞こえる紬は想の方だけを見て渡ります。
本当に一瞬のシーンなんですが、聴者と難聴者の対比が見事に表現されていると感じました。

想が聞こえない事を知らされた上でも尚、癖で声で話しかけてしまう紬、紬の声がけに気付けない想の様子も聴覚障害者の日常です。

紬は元々、電話が好きで、想の声を聞くのが好き。口話に頼る傾向があります。
経験上わかるのですが、口話好きの人って聞こえないと伝えているのに尚も話しかけてくださるんですよね。話しかけてくれてありがたいけど、困惑も入り混じった心境になります。

また、紬が待つカフェに想が来店したとき、1回目はどこに紬がいるのか分からずキョロキョロします。
癖で紬は「佐倉くん!」と声を掛ける。気づかない想。
2回目の待ち合わせの時は、想はキョロキョロしないんです。
前回座っていた場所をまず、確認します。やはり紬はそこにいたので、迷わず見つける事ができました。
こういう細かい演出も見ていて違和感がなく、聴覚障害者の行動特性を良く捉えていると思いました。

聴覚障害といっても様々

難聴とは難しい障害で、人によって程度は様々です。
想は高校卒業時に発症して、26歳時点でほとんど聞こえない状態となりました。

全員がこのペースで進行するわけではなく、途中でストップする人もいれば、じわじわと悪化する人もいます。

また、恩師の「最近どう?」のLINEに「静かです」と返信しています。
私の場合は、むしろうるさいです。耳鳴りが酷くてわんわん鳴り響いています。

手話について

想の耳の事を知って、紬は春尾の手話教室に通います。
私も手話を始めたばかりなので、紬の手話を見て「私もそれ習ったばかり!」と共感しました。つい先日の手話教室では「連絡」を習いました。

silent公式のSNSを見ると、目黒さん川口さんが連絡の手話をしている写真が投稿されていました。
「連絡???はて??」と思ったら、「永遠に・ずっと」という意味で使われていたみたいです。手の形は連絡も永遠も同じで、動かし方が違うみたいです。だから写真で見ると違いが分からなかったんです。1つ勉強になりました。

最後に

障害や難病を扱う作品は必ずといってよいほど物議を醸します。
賛否両論あって当然だと思いますし、色々な考えがあって良いと思います。
私はsilentは素晴らしい作品だと思いましたし、目黒蓮さんが演じてくださって有難いと感じました。

プロフィール
WEBクリエイター
いのうえ
WEBクリエイター(デザイン/コーディング/ディレクション) 官公庁系サイトディレクション、デザインの他、企業系大規模サイトリニューアル、ECサイト運営などに携わる。fellowsでのセミナー講師経験もあり。 ここでは個人的に情報収集・発信している日本文化とデザイン、映画レビューについて紹介します。

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