神保町のミニシアター、シネマリス
神保町というと、古くは岩波の映画館もありました。今も神保町シアターもあり……そして多くの古書店が並ぶ「書と劇場の街」です。そんな街に昨年、新しいミニシアターがオープンしました。
大きな配信の波のなかで、あえて“場所”としての映画館が生まれたこと。その意味を、少し考えてみたくなります。
シネマリスという映画館です。
一度行ってレポートしようと思っていたのですが、ようやく来訪が叶いましたので、今回はそのシネマリスのお話。
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シネマリスとは……
公式サイトはこちら https://cinemalice.theater/
問題は、兎に角分かりづらい場所にあること!
特に看板が出ておらず、苦戦しました。この点はどうにかなるといいなぁと思います。
見たのはケン・ローチの作品『石炭の値打ち』。https://www.sumomo-inc.com/priceofcoal
こちらについてはさっくりと、取り上げておきます。
ケン・ローチ監督というと、私の印象は『わたしは、ダニエル・ブレイク』なのですが、
『石炭の値打ち(The Price of Coal)』は、二部構成の社会派ドラマ。
BBCのドラマ枠「プレイ・フォー・トゥデイ」のために制作したテレビ映画で、雰囲気が大分違いました。
朴訥とした、イギリスの風景。炭鉱が消えていく過渡期の社会背景を元にドキュメンタリーさながらに作られる作品は、物凄い事件が起きるわけではなく(もちろん事件はあるのですが)ある家族を主軸に据えて、淡々と進んでいきます。
静かな視線=監督の視点は、私達としては何とも言えないノスタルジーを感じさせます。
そして、上映後は、怒りを感じるという感想でもりあがりました。
こうした作品を、今あらためてスクリーンで共有できること自体が、この場所の価値なのだと思います。
さて、このような、古いけれどいい映画が上映される機会はめったになく……そういう意味で得難い機会であり、シネマリスのチョイスにも感謝しました。
すこしばかり話は逸れますが、炭鉱に関わる映画というのは色々。有名どころ『ブラス!』(1996)や『リトル・ダンサー』(2000)『パレードへようこそ』(2014)などは私も見てきましたが、同じ炭鉱を背景にしても、温度がまったく違います。
こういう差異を、同じスクリーンで再確認できるのがミニシアターの面白さでもあるのかもしれません。
今回は、一番ずっしりとした感触を覚えました。
昔、岩波シアターで観たドキュメンタリーのような、そんな重厚感。
古書を扱う土地にもぴったりのチョイスなのかもしれません。
もちろん、エンターテインメントとして上質な作品も、ラインナップにはしっかり入っています。
『アバウト・タイム』や『ヤンヤン 夏の想い出』など、いつ観ても楽しめる旧作陣。振れ幅のある編成も頼もしいところです。
そして、加えて、今後のラインナップとして『オーロラの涙』などの上質なドラマも掛かる予定……期待できそうです。
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さて、映画館自体の環境ですが、降りていく階段のらせん、入ったときのカウンターの質感……過ごしやすい環境でよかったです。ちょっとだけ椅子は柔らかめなので、そこは好みが分かれるかもしれません。
また、パンフレット以外の物販ですが、飲み物は最初珈琲だけだったそうですが、今は色々増えてきていました。フードは今現在クッキーだけ!なのが勿体ないところではありますが、味はとてもよくおやつには最適。
近場に良い感じのお店が大量にあるのも神保町の良いところではありますが、駆け込みで食べられるサンドイッチ辺りはほしいなぁと思います。お腹の空いた状態で訪れる際はご注意下さい。
さて、私共は前後に時間があったので、ふらふらと久々の神保町ツアーもしました。

お気に入りの喫茶店がいくつも。
街の流れとこのノスタルジックな映画館がどう噛み合うかなとみていくとわりと営業マンや学生も多いようなので、もうちょっと宣伝を強化してもいいようにおもいました。
今回のような骨太ドキュメンタリーはもちろん、エンタメ方向でもいいチョイスありそうなので(ちょっと前には、噂になった台湾映画『鯨が消えた入り江』などもやっていた!)呼び込みできるように、ちょっとだけポスターを大きめに貼ったり、入口をアピールしていいような気にはなります。
せめて、看板は!!看板は置いて欲しい!!(しつこい)ところ。
ふらっと入れる位置にあるので、個人的には再訪確定です。
ところで、シネマリスで面白いなとおもったのが、サブスクの試みです。
公式サイトにも書かれていますが、
「シアター2」にて原則として各作品1日2回ずつ上映される、準新作・旧作が見放題になるシステム。
プログラムは、2週間ごと2作品をラインナップ、年間およそ50作品……
詳細をピックアップすると
・年間約50本の映画が見放題!(全作品ご覧になれば1作品あたり500円以下)
・好きな作品は何度でも見られる!
・座席予約もできる!会員は一日早く予約可能
・対象作品以外の作品も「会員割引価格」で見られる!
というわけです。
単にお得、というよりも、継続的に場を維持するための仕組みとして、覚悟のある価格設定だと感じました。
ぜひ参加したいところ。
都内は最近、池袋のシネマリーブルなども閉館してしまい、がっかりしていましたが、ミニシアターに期待を込めて、今回は実際のレポートをしてみました。
ただ、映画館来訪後、近場で昔からやっているバルに入り、マスターと話したのですが、映画館の存在自体まだ知られておらず……少し寂しく感じました。
街の商売は、街の人たちにとけこんでこそなので、早く広まるといいなぁ……と。
好事家は来る。でも、日常の人に届くかどうか?
美味しいお店も、メディアに取り上げられた瞬間に動く色々な人よりも、普段使いできる人が好いてこそです。
サブスクも込みで、遠くから応援する人数と「気軽な使い方をする隣人」……どういうバランスで、育っていくのか、私は時折の客という距離感ではありますが、定点観測がてら上映館を減らさないためにもなるべく通いたいです。
小さな喫茶店や、オシャレな映画館は、「行きたい」という気持ち、「あってほしい」という気持ちがあっても、なかなか厳しい昨今の東京事情……。
祈るような気持ちで応援と共にレポートしてみました。
場所があることで、コンテンツはかけられる……コンテンツをのせる土台があることで、作り手や演じ手は生きながらえています。
ミニシアターが残ることは、作品が残ることと同義だと考えて、もう少し街へ目を向けたい。オンラインだからこそ、足を運ぶ。その往復を続けていきたいと思います。








