『ロミオとジュリエット』はイメージ通り?海外の名作入門となる一冊
「月よりも不実なのはロミオである」
昔々、大学でイギリス文学史の講義を受けていた時のことだ。
中盤あたりのレポートで有名作品についての私見を書く機会があり、その冒頭にこう記した。
言わずもがな、題材は『ロミオとジュリエット』である。
今思えば若気の至りというか、よくそこまで断言したものだと思うが、当時は元々抱いていたイメージとあまりに違うので衝撃を受けたのだ。
ジュリエットはロミオの初恋の相手ではないし、ジュリエットはまだたったの13~14歳だし、2人が恋に落ちて死ぬまで1週間もかからないし。
一途な純愛物語ではなく、どちらかといえば家同士の対立により、一夜にして盛り上がった若者たちが命を落とした、という部分がメインなのではないか?と。
そしておそらく、順調に交際から結婚に至っていたらロミオとジュリエットは長続きしないに違いない、とも書いた気がする。
なぜかといえば、ロミオがべらぼうに惚れっぽい男だからである。
そもそも聡明な年上の女性、ロザラインに夢中だったにも拘らず、彼女に会おうと参加した晩餐会でジュリエットを見つけ、一目で乗り換える調子の良さ。
しかもロザラインはジュリエットの従姉だそうで、つまりは宿敵キャピュレット家の令嬢なわけだ。
外見が似ている可能性はもちろん、ロミオってもしかして逆境に燃えるタイプなだけじゃない……?と疑うのも無理はないと思う。
それを「不実な月には誓わないで」って。
あなたの目の前にいる男の移り気は月の満ち欠けよりうんと早かったですよ、と言いたい。
先日書店を彷徨っていたら、そんな私の『ロミオとジュリエット』への複雑な感情をまさに書いてくださっている!と感じる本に出逢った。
というか、たぶん読者や鑑賞者の大半は同じことを思うのだろう。
それが、翻訳家の鴻巣友季子先生による『ギンガムチェックと塩漬けライム』である。
『風と共に去りぬ』や『嵐が丘』をはじめ、数々の名作を翻訳してきた鴻巣先生ならではの視点で海外文学が紐解かれており、どれも非常に読みやすく面白かった。
(以下、「ふたりはなぜ死んだのか?『ロミオとジュリエット』ウィリアム・シェイクスピア」の項より引用)
ほれっぽいロミオはジュリエットに出会ったとたん、「空前絶後の美女」として熱愛していたロザラインを忘れ、こんな愛の言葉を口走ります。
「たいまつの明かりより眩い……暗やみで輝く宝石……まるで、黒いカラスの群れのなかの白いハト……わたしはこれまで恋などしたことがあったか? いいや、断じてない。わたしは今のいままで、まことの美を目にしたことがなかったのだ」
よく言うよ!という感じですね。(後略)
いや本当に。「よく言うよ!」と。
その言葉が目に入った瞬間、私は内心で同じ呟きをしながらレジへと踵を返した。
また、こちらの本では当時の歴史的な背景も含め、「大人たちが始めた戦いで犠牲になる子どもたち」とのテーマで物語を深掘りされているのが特徴だ。
いずれも簡単にあらすじが分かるようになっているため、未読の作品に興味をもつ契機にもなるかもしれない。
そして、なぜギンガムチェックと塩漬けライムなのか、表題の意味にも気付けるだろう。
「タイトルは知っているけれど、なかなか踏み込むきっかけがない」海外作品が存在する方にも、ぜひおすすめしたい一冊である。
【参考】『ギンガムチェックと塩漬けライム』 鴻巣友季子著(NHK出版)







