救世主、なめこ

宮城
ライター
KIROKU vol.24
佐藤 綾香

 

もともとすきだったなめこ。お味噌汁に入っているとすごくうれしいし、大根おろしと食べるなめこもだいすき。だけど「なめこがすごい」と気づいたのは、実はここ2〜3ヶ月の話。

 

生きるために、というか、自分を大切にするためにおいしいものをつくって食べたい。

仕事から自宅に帰って疲れたときは料理をしない自分もいるけれど、心に余裕があるときは自分のために特別な一皿をつくりたいと、この目まぐるしい日々のなかで余計におもうようになった。

働くのはすきだけれど、なによりもまず、わたしは暮らしを大事にしたい。

「仕事あっての暮らし」じゃなくて、わたしは「暮らしあっての仕事」がすきなんだというのに、最近になってようやくわかったのだ。

それを気づかせてくれたのも、なめこだった。

 

2ヶ月前だろうか。

実家の母親においしいなめこをもらった。

そのなめこのパッケージに堂々と「天ぷらにするとおいしいよ」と書かれてあるのに驚いて、好奇心だけは人一倍あるわたしはすぐに実践することにした。

とはいっても、面倒くさがりな自分もいて、「今から天ぷら作るのは面倒だな」とすぐに軌道修正して、まずはなめこに片栗粉をまぶして揚げ焼きにすることにした。

それが、とんでもなくうまかった。

ちょちょいと塩を振って食べたのだが、外はカリカリ、中はトロトロ、だけどシャキシャキしていて、癖になる食感と味わいだった。お酒にぴったり。

なめこの新たな一面に感動したわたしは、それから周りの親しいひとたちと会うたびに「なめこを揚げてみてくれ!」とプレゼンするまでになった。

「発見しちゃった」という気持ちよさが、なんだか「ちゃんと自分のために生きている」というのを実感できて、心地よかったのかもしれない。

 

しかし、日々はどんどん早く流れていき、その日以降なめこを天ぷらにすることのないまま、師走を迎えてしまった。

そんなとき、わたしの前にまたなめこが現れた。

わたしは友人とただ「うまいもん食って癒されようぜ」というテーマで、ちょっといいお店で食と酒をたのしんだ。

そのときのお通しで出されたのは、百合根となめこの茶碗蒸し。

一口食べたら、生きる気力が湧いた。

ほんとうにおいしかったので、次は「茶碗蒸しになめこを合わせてみてくれ!」とプレゼンして回りそうである。

さらに「発見しちゃったセンサー」も働いて、わたしは上機嫌。

 

ここ最近は「疲れた、眠りたい、休みたい」が先行して暮らしを十分に楽しめていない自分がいた。

ところが、大事なタイミングでなめこが現れ、わたしの凝り固まった心身を刺激する。

大事なことに気づくきっかけをつくってくれたのは、なめこ。

2025年、わたしの救世主はなめこかもしれない。

 

プロフィール
ライター
佐藤 綾香
1992年生まれ、宮城県出身。ライター。夜型人間。いちばん好きな食べ物はピザです。

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