大人だって、遊びたい

宮城
ライター
KIROKU vol.21
佐藤 綾香

 

いま、わたしは全身筋肉痛である。

新居に引っ越した話とか、苦手なはずのサプライズがうれしかった話とか、ほんとうは柔軟剤を使わずに洗濯をしたほうがいいと聞いた話とか、ほかにもっと書くべき内容はあったのだけれど、全身筋肉痛のつらさがそれらを凌駕した。

 

歩くのもつらいし痛いし、立ち上がるのでさえけっこう気合い(そして勇気も)が要る。

同時に、日常生活でこんなに筋肉を使っていたのか、と実感する。

何かものをとるときは二の腕が痛いし、座っているときは背筋と腹筋が痛いし、車に乗りこむときはお尻から足全体の筋肉が痛む。

顔をゆがめながら「いててててて」と心の中で叫ぶ一方で、筋トレをサボってきた自分を情けなくおもう。

 

なぜわたしが全身筋肉痛になっているのかというと、仲間たちとの旅のなかでだだっ広い公園を見つけ、さらに子どもたち専用につくられたであろうアスレチックに夢中になってしまったからだ。

 

最初は、みんなでアイスコーヒーを飲みながら公園で休む予定だった。

しかし、幸いにしてその日は平日で、子どもたちの姿がない公園で遊具が寂しそうにしていたのを見たわたしたちは、自然とそちらのほうへ向かって力一杯走っていた。

 

「大人だって、遊びたいんだーーー!」と叫びながら。

 

 

いつもだったら、子どもたちを優先して遊んでもらうアスレチック。

「子どもらがいないぞー!」

「きょうは譲らねぇぞー!」

決して子どもが嫌いなわけではないのだが、普段「いい大人」になりきっている我々のスイッチがオフになると途端に性格が悪くなる。

 

あの頃と違うのは、遊具がすべて小さく感じることだろうか。

それ以外はあまり変わらない。

育ってきた場所も、環境も、まったく違う大人たちが集まって遊んでいるのに、やることはあの頃と全く変わらない。

滑り台があればみんな順番に並んで、滑り終わったら「もう一回!」と言ってすぐまた並びにいったり、遊具を使って陣取りゲームも始まったり、攻略が難しそうな遊具があればみんなで挑戦者を応援したりする。

 

 

その結果が、全身筋肉痛なのだ。

ちゃんと筋トレをせねば、とおもうのだが、なんでもストイックにがんばろうとしてしまうからか、どうしても続かない。

ジムに行こうとおもったけれど、自分のめんどくさがりで内気な性格からして通わなくなることが目に見えている。

 

大人も、子どもみたいに自由に遊具を使える公園や広場はないだろうか。

そんなところがあれば、わたしのような怠惰な人間もたのしくトレーニングできる気がする。

いや、でもたまに使うからいいのであって、いつも使えるとなると通わなくなるかもしれない。

きっと、普段わがままを言えない大人がたまに子どもの遊具で解放される、っていう縛りが必要なんだろうな。

 

逃げ道をいろいろ考えてきたけれど、自宅で筋トレをするというミッションは避けられなさそうだ。

子どもたちのせいにするな、アスレチックに逃げるな、気持ちを強く持て。

でも筋トレとかいろいろ置いておいて、たまにはアスレチックでたくさん遊びたい。

それが本音。

 

 

プロフィール
ライター
佐藤 綾香
1992年生まれ、宮城県出身。ライター。夜型人間。いちばん好きな食べ物はピザです。

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