「劇場の灯」を共にともし続けるために、閉館後も廃棄せず備品や記念品を販売
劇場は、戯曲や芝居を鑑賞する場所であるとともに、推しや憧れのスターを直接肉眼で見られる場所でもある。そして同時に、劇場そのものの魅力に包まれに行く場所でもある。演劇ファンがその建物や設備、意匠などに抱く思い入れや郷愁感はとても強いものがある。好きな俳優が活躍した雄姿や汗や涙までがその隅々に染みついているような気がする場所なのである。自分たちがその劇場の隆盛を支えてきたという自負を抱く人もいるだろう。今年初め、新しい建物への建て替えのために閉館された東京・丸の内の2代目帝国劇場の座席や座席表ボード、喫茶室のテーブルなどが販売されることになったというニュースはファンたちを歓喜させた。中には、座長用楽屋とされる部屋で使われていたソファなどファン垂涎もののアイテムもあり、廃棄物を減らす環境に配慮したSDGs的な観点からも注目されている。(写真は、販売される帝国劇場の客席=写真提供・東宝演劇部)
このプロジェクトは「帝国劇場クロージング企画」の一環で。新たなステージへと継承する「帝劇 Legacy Collection」。帝劇のマテリアルを「ご家庭で使用できるアイテムへとリメイク」する第1弾(2026年春ごろ発売予定)、第2弾の「席番プレート記念商品」に続き、第3弾企画として2025年8月中旬に発表されたのが「帝劇プレミアム備品販売」だ。
これまで「思い出の品をそばに飾っておく」といった意味合いが強かった記念品販売だが、「歴史ある帝劇の灯をお客様の手元で灯し続けていただきたい」という想いが込められた劇場とファンのコラボレーションでもある点が新しい時代にマッチしていると言えるだろう。劇場文化保持の新たな展開としての側面もあることから、収益金の一部は、演劇文化の更なる発展を願い、「日本舞台芸術ネットワーク」に寄付されるという。
抽選販売商品への申し込み、購入には、「帝劇 Legacy Collection」のメルマガおよび東宝モールへの登録が必要となる。
販売期間は、抽選販売申し込み受付分が8月28日~10月8日午後11時59分、一般販売分は第1期が9月14日、第2期が9月21日、第3期が9月28日のそれぞれ17時から販売がスタート。期ごとに異なる商品ラインナップで先着順に販売される。
とにかく販売されるマテリアルのラインナップが驚きの充実ぶり。
特にすごい抽選販売分では、3人掛けから1人掛けまで取り揃えた客席や、座長楽屋(5-1楽屋)に置かれていたソファ、「本日初日」(本日千穐楽や満員御礼もあり)と書かれたボード、上演時間の案内看板、私も数々のスターへのインタビュー取材で使わせてもらったことのある貴賓室のチェアなどが並ぶ。
一般販売分では、2階にあった喫茶室のチェアやテーブルやロビーに置かれていた大理石のテーブルや白いソファなど(第1期分)、ご案内板、座席案内プレートなど(第2期分)、案内看板、入口ドアの取っ手、座席扉上数字プレート、ステージのかさ上げや踏み台として用いられる舞台アイテムの「箱馬(はこま)」、客席用ブランケット・座布団など(第3期分)など実に多彩で細かい。
すべての料金を表示することはできないが、一例を挙げると、例えば1人掛けの客席は20万円、座長楽屋のソファは36万円だ。 比較的安い商品もあり、楽屋の暖簾(特定の俳優のものではありません)が3万5千円、非常口プレート(B)が2万2千円、箱馬が1万6500円(すべて税込)。
商品の一覧はこちら(https://teigeki.tohostage.com/closing/legacy_vol3/)
★「帝劇 Legacy Collection」のメルマガ登録ページ https://ssl.toho-marketing.com/stage/teigeki_legacy_mail/
2023年に閉館した初代国立劇場が今年2025年に楽屋時計や提灯のほか、定式幕で作ったテディベアなどのアイデア商品を販売したほか、これまでもクローズや建て替えのために休館した劇場では、ステージの床板で作ったコースターやキーホルダーを販売するなど、趣向を凝らした記念プロジェクトを行ってきた。
今の時代は、舞台写真やパンフレット、チラシ、チケットだけでなく、アクリルスタンド(アクスタ)など舞台の思い出を残す方法はたくさんあるが、劇場に集うキャスト、スタッフ、観客のすべての思いが凝縮したかたちで閉じ込められた今回のようなプロジェクトにあなたも購入というかたちで参加してみるのもいいかもしれない。







