堂本光一が「SHOCK」本編・スピンオフ同時上演へ、舞台人の神髄を見た!

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

 堂本光一はいつも人を驚かせる。もちろん嬉しいほうにだ。2020年のコロナ禍で堂本光一が歴史を積み重ねてきたミュージカル「Endless SHOCK」の一部公演を中止した後、コロナの渦中でもできることを模索して生み出した本編の後日談的なスピンオフ版「Endless SHOCK ―Eternal―」を大阪で上演した時も驚かされたが、目まぐるしく変わる感染状況の中で、2021年と2022年の東京でスピンオフの上演、2022年の博多で本編上演を経て、なんと今年2023年の東京・帝劇公演では、本編とスピンオフを同時上演すること発表したのだ。

ミュージカル「Endless SHOCK」とスピンオフ版「Endless SHOCK ―Eternal―」は、今年4~5月に東京・丸の内の帝国劇場で上演される。(画像は「Endless SHOCK」とは関係ありません。物語に示唆される鎮魂のイメージです)
まだ公演形態などは固まっていないが、1日1公演の日は本編を、昼夜2公演の日は昼に本編を、夜にスピンオフを上演するとみられている。

「Endless SHOCK」はニューヨークの小さな劇場を拠点に自分たちのショーを極めようと奮闘する、日本人中心のカンパニーのメンバーの物語。
スピンオフは、本編で描かれた物語から数年後のそれぞれの登場人物が、どうしているか、どんな思いでいるか、そして本編で描かれたその時にどんな思いでいたのかを振り返っていく物語。永遠の旅に出てしまった主人公のコウイチ(堂本光一)はそれを見つめながら、新たに思いも吐露するという構成になっている。
過去の出来事の部分の描写はダイジェスト版に省略されたとこるもあるため時間も抑えられるし、派手な殺陣は一定程度抑えられる。コロナ禍で求められた感染防止のための条件をクリアする苦肉の策だったが、キャストや関係者は稽古を見て「なるほど」と膝を打った。本編で心理面の謎になっていた部分がスピンオフで解き明かさかれいた。さらに言えば、本編でも悲劇から再生へと向かう道筋は示唆されていたが、それがスピンオフではより明確になり、悲劇を悲劇のまま終わらせていない。2つの作品は互いを補完しあいながら、実に見事な連環を創り出していたのだ。

堂本光一の新たな創作は、緊急避難的なものではなく、極めてクリエイティブなものだった。
今年はそれを同じ公演の中で上演する。合体させて連続的に上演するわけではないが、2つは舞台のセットが違うため、例えば昼と夜でセットを入れ替えることになる。そんなスタッフの大変さに加え、キャストたちが覚えるせりふや芝居やしぐさなどの量は2倍近くになる。
堂本光一はそれぞれのキャラクターの本当の思いを知ることで、芝居も深まってくると演技面での変化も期待する。
稽古の量は想像できないほど増えることは間違いないが、堂本光一は今年1月に東京都内で開かけた製作発表記者会見でこんな素敵なことを言った。

「みんなでたくさん苦労して、その一つ一つの積み重ねがステージ上での輝きになる。その輝きをお客様に届けたい」

楽なほうは決して選ばない。堂本光一にエンターテイナー、そして舞台人の神髄を見た気がした。

プロフィール
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阪 清和
共同通信社で記者として従事した30年のうち約18年は文化部でエンタメ各分野を幅広く担当。円満退社後の2014年にエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体・新聞・テレビ・ラジオなどで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アート・旅・広報戦略に関する批評・インタビュー・ニュース・コラム・解説などを執筆中です。雑誌・新聞などの出版物でのコメンタリーやミュージカルなどエンタメ全般に関するテレビなどでのコメント出演、パンフ編集、大手メディアの番組データベース構築、メディア向けリリース執筆、イベント司会、作品審査・優秀作品選出も手掛け、一般企業のプレスリリース執筆や顧客インタビュー、広報アドバイスや文章コンサルティングも。音声YouTubeは準備中。活動拠点は渋谷・道玄坂。Facebookページはフォロワー1万人。noteでは「先週最も多く読まれた記事」に16回選出。ほぼ毎日数回更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/)。noteの専用ページ「阪 清和 note」は(https://note.com/sevenhearts)

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