グラフィック2010.06.10

物事の「本質」を捉え 人々の心に届くような価値や サービスを企画提案したい

東京
株式会社コトヴィア 代表取締役/コンサルタント 荻原実紀氏
 
株式会社コトヴィア(以下、コトヴィア)は、2010年4月、株式会社中西元男事務所PAOSから荻原実紀さんを含めた3名の社員が独立し、創業しました。PAOSは「アジアCIの父」とも称される中西元男氏を中心に、企業経営とデザインの融合を理論化し、日本型CI(Corporate Identity)の先駆的存在として、これまで40年余100社以上のCIを手がけられてきた、大きな功績ある会社です。 PAOSより独立した3人を中心とするコトヴィアは、「新しい時代に求められる心ある価値のデザイン」をテーマに、新たな歩みを始めています。企業や組織のビジョンや経営課題を、感性訴求力を生かしてデザイン戦略を軸に解決し、新時代を創る「感性デザインコンサルティングファーム」として、これまでになかったクリエイティブを展開してくれそうです。

物事の「本質」をしっかりと捉え、 人々の心に届くような価値やサービスを 企画提案させていただきたいと考えています。

まず、独立、創業のきっかけについてお聞かせください。

私は2003年にPAOSに入社しました。地方や中小企業をサポートできる経営知識を身につけようと経営学大学院に進学した当時、客員教授であった中西元男氏の講義で、PAOS独自の考え方や手法に衝撃を受け、「経営に変革を与えるデザインの影響力」に感銘を受けたのです。大学院時代の中西氏との出会いがPAOS入社につながったのですが、入社当初から、いつかは中西氏の理念を受け継ぎ自立しなくてはならない時期がくると意識をしていました。 田中裕子(現チーフデザイナー)が2004年入社、リチャーズ智恵子(現チーフコーディネーター兼デザイナー)が2007年入社ですが、私たちは、中西氏の側で実務を経験しながらPAOS社員として指導される一方、自主自立するために育て鍛えられたようにも感じています。 今春から桑沢デザイン研究所で「企業経営を“戦略経営デザイン思考する”人材育成プログラム《STRAMD》」が開講しました。中西氏を中心に《STRAMD》が本格化する中で、PAOSでの経験を活かしながら、新しい時代にふさわしい価値やサービスを提供する事業が私たちにできるのではないだろうかと思い始め、コトヴィアの創業に至りました。 。

「感性デザインコンサルティングファーム」とは?

“Emotional Design Power for People”―これはコトヴィアの理念で、行動目標でもあります。コトヴィアは、人々の生活や暮らしを豊かにし、心にうるおいを与えるエモーショナルバリュー(感動価値)の創造を通して、次代を担う人々や企業、社会づくりをサポートしたいと願い創業しました。企業経営やイメージマーケティングの視点からデザイン戦略を軸にコンサルティングを行いますが、その前提として、物事の「本質」をしっかりと捉え、人々の心に届くような価値やサービスを企画提案させていただきたいと考えています。

これまでにない価値の創造に、取り組むわけですね。

コトヴィアの社員は、20代~30代前半です。そんな私たちは、バブル崩壊の後の「失われた20年」の中で育ちました。感受性豊かな子供のころにバブルが崩壊し、その後、情報通信分野が飛躍的に進歩する中で工業化社会の終焉とともに、人も企業も国も、何か「本質」や「行き先」、「心」や「思い」を見失ってしまっているのではないかと肌で感じ取ってきました。一方で、現代のデジタル世代とアナログ世代の間に生まれた「半デジタル」世代とも言え、日本が経済大国となった20世紀を創り上げてきた諸先輩方から、これからの21世紀を生きていく人達へ向けて、両世代の橋渡しをする使命が私たちにはあると思うのです。 現代はもう、「ものをつくれば、売れる」時代ではありません。消費者は、ものを持つことだけに喜びを見いだせなくなっています。また節約志向で安いものを求める一方で、自らにとって何らかの喜びや満足を求めて、自己投資活動や消費行動も変わってきているようにも思えます。現在、成長過程にあるアジアやBRICSなどとは異なり、成熟した日本のような国では、大量生産大量消費、マスマーケティングという構造では市場は動かなくなっており、物事の本質や意義をわかりやすく伝えたり、生活や暮らしを豊かに楽しくさせる魅力のあるものとして感じさせたり、何か取り組みに対し共感や賛同を得たり、あるいは社会的な課題を解決できたり――つまり、感性(心)が重視される時代になりつつあると思うのです。モノを単に創ったり、表層のデザイン表現をするだけではなく、その根底にある物事の本質を今一度洗い出したり、再発見をすることが一番重要であると考えています。受け手の気持ちに立った発想、自分達の等身大の目線や感覚を大切にして、PAOSで学んだことの上に生かしていけば、価値創造の上でさまざまな貢献ができるのではと考えています。

コトヴィアには「日本を元気にしたい!」という想いが強くあります。

確かに、時代も社会も混沌としています。そんな中で、どんな特徴を出していくおつもりですか?

成熟社会となった日本では、ものは満ちあふれ、何に豊かさを求めるか、どこに幸せを感じるかという価値軸が大きく変わろうとしています。社会起業家の出現は、混沌とした社会テーマ(例えば高齢社会や環境・エネルギー問題など)を解決していこうとする、そんな時代背景がゆえと思います。そんな価値観の転換期に、社会課題に関する提案、新たな生活文化の創造にまで踏み込んだ提案をしていくことが、コトヴィアとしての存在意義を明確にすることにつながると考えています。また、コトヴィアには「日本を元気にしたい!」という想いが強くあります。たくさんの可能性の秘めた日本の中小企業や地方に、少しでも貢献できるようなプロジェクトにも携わりたいと思っています。

得意分野は?

私たちは、PAOS時代にCI・ブランド&デザイン戦略、企業の理念開発などの数多くの経験を積んできました。この辺りが得意分野ではありますが、デザインを通してクライアントの企業活動、社会活動、文化活動の魅力を世界に発信したり、潜在的価値を引き出したり・・・。また、経営者の世代交代や企業変革期のご相談をいただいた場合には、十分なヒアリングをした後に、デザイン戦略を軸とした中・長期的な経営コンサルティングをさせていただきます。 魅力的な活動、意義ある活動をしているにもかかわらず、それがうまく発信できていない企業はたくさんあります。素晴らしい技術を持っているのに、そのよさを伝え切れていない、それにふさわしいイメージが定着していない企業も多い。企業や地方などの活動・事業・サービスの本来の魅力を引き出し、魅力を魅力として発信するお手伝いをし、時には新たな事業構想・価値創造にもお客様とともに取り組みたいと考えています。

となるとコンサルティングのテーマは多岐にわたります。コトヴィアとして得意でないテーマに遭遇することもあるのでは?

私たちは、PAOS在籍中から自分たちだけで仕事を完結させることにはこだわらず、プロジェクトに応じて外部のネットワークや専門家の参加を得ていました。そういうスタイルは、コトヴィアでもまったく同じです。ですから、テーマに関して得手不得手はないと考えています。 ただ、私自身PAOS時代に中国関連ビジネスの担当をしておりましたので、中国進出企業向けの漢字商標開発や、中国人向けの情報発信やブランド戦略等は得意とするところでしょうか。PAOSの中国・韓国・台湾をはじめとするアジアネットワークも強力なパートナーです。 どのような得意分野を持つ方やプロフェッショナルとネットワークするかによって、できることも柔軟に変わっていき、発展していくはずです。コトヴィアではプロジェクトに応じて、最適なチームで仕事を進めます。 スタートはコンサルティングファームですが、「世の中にこういうものがあったらいいな!」と思えば、必要に応じて自らビジネスやサービスを起こしたり、もしかすると商品開発に取り組むことになるかもしれない。そんな予感を持っていますし、そういったことにも積極的に挑戦していきたいと思っています。

ITが普及し始める頃にぽつぽつとベンチャー企業が出現したように、 時代転換が始まる兆候にあると私たちは感じとっています。

サブ・プライム問題以降世界的な不況がつづく中での創業は、いろいろな意味で大変と思うのですが。

不況はサブ・プライム問題以前からあったと思いますので、今が特別な停滞期とは考えていません。社会の課題解決をテーマにした企業や起業家などが、少しずつ出現し始めている今は、ITが普及し始める頃にぽつぽつとベンチャー企業が出現したように、時代転換が始まる兆候にあると私たちは感じとっています。 そういう意味で、時代が大きく変わろうとしているとの認識はとても強く、次代を担う人達の独立・創業や事業変革には、今はかっこうのタイミングではとさえ思うのです。模索すべきことが、たくさん明確になっている。変革をしなくてはならないところも、たくさんある。一方で、たとえば「豊かに生きるとは何か」「企業が何のために存在するのか」「喜びあふれた社会とは」といった本質論は変わらずにある。「模索する」、「本質を見抜く」そして「華を咲かせる」。その繰り返しで、コトヴィアの未来を切り開けると考えます。

時代の転換点という認識は、かなり強くお持ちのようですね。

そうですね。事実、さまざまな企業や組織において、いわゆる「代替わり」を迎え、次代の経営を模索されている経営者が数多くいらっしゃいます。現に世代交代をテーマにご相談いただくお客様も多くいらっしゃいます。「何とかして変わりたい」「現状を変えていきたい」「これからを創っていきたい」と熱い思いを持つ人や企業を応援したい・・・。私たちは「Emotional Design Power」で、そういった方々の良き相談相手やパートナーになれたらと願っています。

≪関連リンク≫ ■PAOSグループ代表 中西元男さんインタビュー (クリエイターズステーション:クリエイティブ好奇心) https://www.creators-station.jp/topic/040.html ■株式会社中西元男事務所 PAOS http://www.paos.net/ ■桑沢デザイン研究所 スーパー戦略デザイン経営専攻《STRAMD》 http://www.kds.ac.jp/stramd/index.html#cont4

取材日:2010年6月

株式会社コトヴィア

  • 代表取締役/コンサルタント:荻原実紀
  • 事業内容:
    • 企業経営やイメージマーケティング視点からの感性デザインコンサルティング
    • 感性型マーケティングプランの作成、企画設計、実施補佐
    • コンセプトメイキングおよびビジュアライズ
    • 日本型CI(Corporate Identity)戦略、ブランド戦略、VI(Visual Identity)戦略等の構築
    • 理念開発、理念浸透プログラムの企画立案
    • 社名・ブランド名の開発、コーポレートロゴ・ブランドシンボルのデザイン開発
    • ブランドイメージ調査、ロゴ診断、コミュニケーションアイテム分析評価
    • 中国・アジア関連事業(ブランド戦略・中国進出企業の漢字商標開発・情報発信施策・サイン計画等)
    • マーケティングプランニング、象徴事業・サービス・商品アイデアの提案と具現化施策、Webデザイン戦略・情報発信施策、諸デザイン開発など
  • 設立:2009年12月10日
  • 創業:2010年4月1日
  • 資本金:8,000,000円
  • 所在地:〒150-0036 東京都渋谷区南平台7-9 DEN FLAT南平台401
  • TEL:03-6416-9195
  • FAX:03-3464-9774
  • URL:http://www.cotovia.net/
  • 問い合わせメール:info@cotovia.asia
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