感覚的に、手軽に扱える 3D動画編集ソフトを

東京
株式会社Loilo 取締役COO 杉山竜太郎氏

HD動画を素早く編集する「スーパーロイロスコープ」、Windows 7マルチタッチ対応で画面をタッチしながら動画編集できる「ロイロタッチ」が大人気商品となっている株式会社Loilo(ロイロ)です。代表取締役の杉山浩二さん、取締役COOの杉山竜太郎さんが兄弟で立ち上げた次世代ソフトウェア開発会社。 2人ともにゲーム開発会社の開発最前線でバリバリ働いていた開発者で、その時代に培った技術を投入し、プレイ感覚で映像編集できる、これまでにないアプリケーションを生み出しました。今回は、お兄さんであり取締役COOである杉山竜太郎さんが取材に対応してくださいました。

動画編集のプロではない人たちに 気軽に楽しく動画を扱ってもらおうとの狙いは 当初から揺らいでいません。

「スーパーロイロスコープ」や「ロイロタッチ」が、高い評価を獲得し、売り上げも順調なようです。特にホームムービーの編集が簡単にできると、主婦層からの支持が多いようです。

「ロイロスコープ」は、「動画編集をあきらめたデザイナーたち」を念頭に商品化し、市場にリリースしたものです。そういう意味では主婦からの評価は、嬉しい誤算と言えるかも知れません。ですが、動画編集のプロではない人たちに、気軽に楽しく動画を扱ってもらおうとの狙いは当初から揺らいでいません。

この事業の成功は、世の中の動きにマッチしたという側面もあると思います。

ユーチューブや携帯電話のビデオ機能に代表されるように、ここ数年、動画撮影のツールが飛躍的に身近になったのは大きいですね。僕の記憶では2006年ごろはまだ、「動画の編集? そんなの必要ないよ」という反応の方が圧倒的に多かったですから。

ソフトの人気の秘密は、どんなところにあると思いますか?

基本性能はもちろんですが、私たちの開発方針である「細かな使い勝手」ではないでしょうか。たとえばユーチューブにアップする映像には「10分制限」がありますが、そういった規定を自動的に満たせるような仕組みが、かなり高い評価を得ています。

事業成功の手応えは?

売り上げは、徐々に上がっているという実感があります。今後は、主婦などにとってそれほど簡単ではないインストールの問題を解決して、さらに売り上げを伸ばしていければと考えています。

開発スタッフは、どんな体制ですか。

非常勤を入れれば、常時15人ほどの開発者が稼働しています。

VJの仲間たちが、僕たちのソフトを使って 文字通り遊び感覚で動画編集をこなすのを見て、 これはビジネスになるのではと思いました。

このようなユニークなソフトを開発することになったきっかけは?

私も弟(浩二さん)も学生時代にVJをしていました。そんな中で、VJがステージ演出用に使う映像ソフト――VJソフトと呼ばれるものですが――を、使いやすくできないかと考え、ゲーム開発技術などを投入して試作を始めたのがことの始まりです。 大学卒業後は兄弟ともにゲーム開発の世界に進み、VJソフト開発もつづけていたのですが、次第にVJの活動からアートパフォーマンスとしてのコラボレーションが面白くなっていった。書道家の武田双雲さんと出会い、彼のLIVE書道を映画にするパフォーマンスと連動し、パフォーマンスそのものを映像作品に残す活動も始まりました。その活動を通して、ソフトの開発がかなり進みました。

VJのパフォーマンスのためのソフトと、ゲームテクノロジーの融合で誕生したソフトなのですね。

私と弟のVJソフトはVJの世界でも徐々に名を知られるようになり、私たちの活動をサポートしてくれるVJも増えてきました。私たちがスタッフと考え頼りにしているVJたちが、VJソフトのやりくりだけで1本の映像作品をつくりあげる様子も目に入るようになり、大きな刺激を受けたものです。編集機器やアプリケーションの知識がないという理由があるにせよ、リアルタイムな映像演出のためにあるソフトで、映像編集をしてしまうラジカルさは、衝撃的なものでした(笑)。できあがるものも、面白かった。 そこで、VJソフトを編集・制作ツールにできないかと発想が発展していったのです。

パフォーマンスソフトが編集ソフトになるという着想が、決め手だった。

見渡せば、世の中にはまだ、イメージで遊ぶ感覚で動画編集できるソフトがない。パワーポイントもイラストレーターも使えないVJの仲間たちが、僕たちのソフトを使って文字通り遊び感覚で動画編集をこなすのを見て、これはビジネスになるのではと思いました。

動画編集の世界に、かなり新しい価値観を提示したように思います。

もちろん、こちら側には、さまざまな高度なスキルや映像制作手法をもったプロがいて、プロの編集をする世界があってもいい。でも、子どもを撮った映像や結婚式、旅行の思い出の映像を、楽しみながら編集したい、編集したものを友だちにあげたいというニーズは確実にありますし、そういう方々に向けて、サクッと想いを形にできる映像編集ソフトがあってもいいはずです。

3Dが今後のテーマと思っています。 3D映像制作の世界にも、感覚的に手軽に扱えるソフトはありませんから。

遊びが発展してソフトが生まれ、必然的に起業することになっていったのですね。

会社設立は、降って湧いたような展開でした。武田双雲さんとのコラボレーションのアトリエとして、このオフィス(慶應藤沢イノベーションビレッジ)を確保できたのが大きなきっかけになりました。加えて情報処理推進機構のIPA未踏ソフトウェア事業に採択され、僕と弟がそれぞれ助成金を得たために、会社を辞めてこの事業に本腰を入れることになったのです。

将来展望として、さらなる技術テーマなどを探っていることと思います。

3Dが今後のテーマと思っています。ロイロスコープはもともとゲームテクノロジーを基盤にしていて、3Dソフトですので、3Dカメラとの相性はとてもいいのです。3D映像制作の世界にも、感覚的に手軽に扱えるソフトはありませんから、今後は3Dならではの良さを引き出せる3D動画編集ソフトを開発したいと考えています。

取材日:2010年6月

株式会社Loilo(ロイロ)

  • 取締役COO:杉山浩二
  • 事業内容:次世代ソフトウェア開発事業
  • 設立:2007年4月3日
  • 資本金:5,999万円(資本準備金含む)
  • 所在地:〒252-0816 神奈川県藤沢市遠藤4489番105
  • TEL& FAX:050-7572-8089
  • URL:http://loilo.tv/
  • 問い合わせメール:上記HP「問い合わせ」ボタンより
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