グラフィック2018.08.22

印刷、Webの両面から、人と人とをつなぐメディア制作を展開

兵庫
合同会社 ビネクティア 代表 稲積 慶子 氏
同じ10年でも、どう過ごしたかによってその時間の重みは大きく変わってきます。20代で自分の進むべき道を定め、30代でスキルを培い、40代で起業を果たした合同会社ビネクティアの稲積慶子(いなずみけいこ)代表。仕事をする上で常に根底にあるのは「前向きな努力」。「前向きな努力」により培われたスキルと仕事への真摯な姿勢で、会社員時代は担当者として、独立した今では会社として、クライアントから厚い信頼を得ています。
大学や病院、弁護士事務所など専門性の高い分野から一般企業など多岐にわたり、Webをはじめとするメディア制作を手掛けるビネクティアが信条にしているのは「クライアントのビジネスパートナーになる」こと。今年7月で起業から8年目を迎えた今も、IT等の新技術や変化し続ける世間のニーズに対応するため、常に知識やスキルの習得に余念がありません。
更なる高みを目指し、進化し続ける同社について、また仕事に対する思いや今後の展望、働く女性としてそのキャリア形成などについて、稲積代表にお話をうかがいました。

自分のスキルを上げるのは自分

これまでのキャリアについて教えてください。

事務職をしていた頃に、長く働き続けられるよう何か技術を身につけたいと考えていたんです。たまたま広告物等を内製化していた関係で、チラシや営業ツールの作成にも携わっていました。結構評判が良く、やりがいを感じて「この仕事を専門的にやりたい!」と思ったんです。それからPhotoshopやIllustrator、HTML言語のスクールに通い始めました。その後、30代で退職した後、約10年間は、会社のIT事業部や大手資格スクールの広告部、印刷会社で実績を積みました。20代で進路を決め、30代でスキルを身につけ、40代になって会社を設立した感じです。

具体的にはどのような業務を担当されていたのですか?

大手資格スクールの広告部では、DTP関連でチラシやDMなど広告物の作成を、Web関連でディレクション業務を担当していました。もっと様々な業種の制作物に携わり、それによって実際にお客様から対価をいただきたいと思うようになり、印刷会社に転職しました。最初のうちは制作のみでしたが、企画やディレクションも兼務するようになり、しばらくすると漁業組合の冊子制作で毎月1漁港を取材して紹介するというコーナーの担当になりました。取材もライティングも初めてで、漁法など専門用語が多いうえ、訛りと早口で聞き取りにくく、不安とプレッシャーで押しつぶされそうでした。

どのようにして乗り越えたのですか?

とにかく必死に調べて対応しました。半年くらいで漁師さんと対等に話ができるくらい漁法に詳しくなりました(笑)。ライティングに関しては、とにかく、実践で鍛えられた感じです。他の業務でも、社内で教えてもらえるところがなければ、自分でその都度、スクール等で勉強をするといったことの積み重ねです。とにかく、クライアントが満足するものを出せないのであれば自分でスキルを上げるしかない。そういう想いでずっと取り組んできました。

常に前進されていますね。起業も前々から考えられていたのですか?

いえ、全く考えていなかったんです。Web関連の仕事もしたかったので、いずれ環境を変えないといけないとは思っていたのですが、起業という方向性は全く頭になかったですね。でも、当時一緒に働いていた同僚数人も、同じようなことを感じていたこともあり、それなら…と、自分たちの会社を立ち上げる方向に話が進んでいきました。それで、このビネクティアという会社はチームで仕事をするための場所といった感じで、株式会社にせず合同会社にしたのも、出資者や株主が別にいるわけでもなく、業務で貢献している社員が会社の意思決定を行えるからなんです。

事業内容は「お客様の要望」に応えること

社名の由来は何ですか?

「Visual(視覚)」+「Connect(つながる)」+「IA(表現技術)」による造語です。中でも大切にしているのはConnectです。私たちの作る制作物でクライアントの魅力をはじめ、色んな情報を広く発信し、見た人に何かを感じ取ってもらうといった、人と人とをつなげたいという想いが込められています。色々と展開をしていきたいので、あえて業種を特定しない社名にしたかったこともあります。

様々な業種の制作物がありますが、営業活動はどのようにされているのですか?

いわゆる営業活動はほとんどしていませんが、新規のクライアントは順調に増えています。その経路は3つあって、1つは当社のホームページからのお問い合わせによるものです。どの方も詳しくご覧になって、当社の強みや特徴をしっかり理解した上で期待を持って問い合わせをくださる方が多く、そのほとんどが受注につながります。2つめは、クライアントからの紹介によるものです。仕事ぶりを気に入っていただき、紹介による仕事の数が増えています。またクライアントの担当者が独立してクライアントになってくれるケースもあります。3つめは、制作会社同士の横のつながりです。制作会社でもそれぞれ得意なこと、不得意なことがあって、デザインはできるけれどもプログラムは苦手、印刷物はできるけれどもデザインや企画はできないなど、お互いを補うために、声を掛け合うことがあります。

制作会社同士のつながりはどのように?

以前、イベント会場等で名刺交換した経緯から「協力してもらえませんか」とお声がけいただいたのがきっかけで、一緒にプレゼンをしてお仕事につながったり、システムや動画制作の会社から、デザインの依頼をいただいたり、印刷物やライティングの依頼があったりします。先日もある制作会社から、リソース不足で、学校法人のWeb制作の仕事を手伝ってほしいというご依頼をいただきました。

専門知識が求められる分野に、どのように対応されているのですか?

特に工夫はしていません。ひたすら勉強です。デザイン自体は、そんなに時間はかからないのですが、材料を探すには知識がないとできないんです。相当の時間を費やして資料や本を読み込み、Webサイトで探します。分からない事があればまた調べて理解するといった事を繰り返し、専門分野でもある程度業務内容を理解できるところまで、まずは知識を詰め込みます。

その積極的な姿勢でクライアントからの信頼も得ていらっしゃるのですね。

ある弁護士事務所の方からは、「内容をキチンと把握していないと、こういった表現やまとめ方はできないね」と言っていただきました。初めの工程を怠っていると、クライアントからの要望や抽象的な訂正があっても的確に対応できず、後々余計に時間がかかってしまうんです。だから、最初の工程にしっかり時間をかけ、その分、スピーディ―に仕上げることで、時間的な帳尻合わせをしています。

成果が出ないと意味がない

仕事に真摯に取り組まれている中、モットーにされていることは何でしょうか。

クライアントの対等なビジネスパートナーになるということです。この業界は、どうしても発注者と業者といった上下関係になりがちです。言われたことだけを遂行し、ただ単に格好良いデザインを提供して利益ばかりに目がいくといった仕事では、自分のモチベーションも、クライアンとの関係も続かないと思うんですね。一緒に仕事をさせていただくからには、プロとしてクライアントの想いをキチンと表現し発信したいのです。それによりクライアントの業績も伸びて、私たちも更なる高みを目指していける、win-winの関係になりたいんです。先日も新規のクライアントの展示会ツール等を作成したのですが、新技術を提供する企業で、勉強して必死に取り組みました。その甲斐あって展示会の評判が良く、クライアントからはとても感謝されたんですね。「一緒に仕事をして良かった」といったクライアントからの言葉が一番嬉しいです。

今後の展望について教えてください。

事業内容の枠決めをせず、世間が求めていることと自分たちが返せることとのマッチングを見極めて展開していきたいと思っています。今の事業内容にはなくてもクライアントから要望があれば事業内容を増やしていきますし、逆に要望がなければ削っていきます。また、世間の流れが新しいことに向かっているのであれば、すぐにチャレンジするといった、小回りの利く会社にしていきたいです。

そういった柔軟性はクライアントにとって心強いですよね。

「うちの事業内容はこうだから、これしかできません」ではなく、お客様が求めている事にどれだけ対応できるのかがとても大切だと思っています。これまでもクライアントの要望に応え続け、7年、8年積み上げてきたものが、現在の事業内容になっています。クライアントによっては、「グループウェアを導入したいが何がいいか?」「広報物についてどうすればいいか?」といった相談から「社内会議用の資料のデザイン」など、相談窓口的な役割を担うこともあります。新しい技術が次から次に出てくるので、常に勉強が必要な仕事だと、日々感じています。

まさにビジネスパートナーですね。一緒に働く仲間として、どのような人材を求められていますか?

当社で何がしたいのかをしっかりと持てる人です。自分がどういう仕事をしたいのか、どこまでの知識やスキルを身につけたいのかなど。目標を持って仕事に取り組んでもらいたいと思っています。単に働いて給料をもらうのとは、仕事をする楽しさが違ってくると思います。「社内の誰よりもスキルを身につけたい」、「いずれはビネクティアの代表になりたい」でもいいんです。自分で目標を明確にすると今の自分に足りないものが見えてきます。もちろんサポートはしますので、そこまでのビジョンを持って努力できる人がいいですね。

取材日:2018年6月27日 ライター:川原珠美

合同会社 ビネクティア

  • 代表者名:稲積 慶子(いなづみ けいこ)
  • 設立年月:2011年7月
  • 資本金:200万円
  • 事業内容:広報メディア(Webサイト、グラフィックデザイン、マーケティング、および/Webサイトの企画、制作、運営/印刷メディア(パンフレット、リーフレット、情報誌、チラシなど)の企画、制作、運用/取材、撮影、ライティングなどのコンテンツ作成業務
  • 所在地:兵庫県神戸市中央区北長狭通4丁目8-3 新大和ビル301号
  • TEL/FAX:078-599-6432
  • URL:https://vinectia.jp/
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