プロダクト2018.02.14

軟包装パッケージで、新しい風を。

名古屋
宮田デザインモード 代表 宮田 菜津美 氏
袋製品をはじめとした「軟包装」のパッケージデザインスキルを磨くことで、子育てと事業の両立を実現させている宮田デザインモード。2017年の設立にもかかわらず、すでに多くのクライアントを持つ事務所代表の宮田菜津美氏に、主婦であることが強みとなる軟包装デザインの魅力やデザイナーになったきっかけ、今後の展望などを語っていただきました。

音楽の道から、デザインの道へ。

デザイナーになる前は、音楽の道を志していたと伺いました。

中学校の吹奏楽部でクラリネットを始め、高校では3年連続で全国大会に行きました。その後は名古屋芸術大学の短期学部音楽科に進み、ベルギーへの音楽留学の話まで進んでいたのですが、そこでふと将来について考えてしまって……。

けっきょく音楽留学は見送られたのですか?

そうなんです。お世話になっている楽器店の方に相談してみたら「君はプロにはなれないよ」って。本当にプロをめざす人は、そんなところで悩んだりしないと言われ、その言葉をきっかけに、音楽を仕事にする覚悟について真剣に考え直し、留学を見送りました。音楽は“仕事"にするのではなく、「心から楽しめる大切なもの」としてとっておくことにしました。

それで、デザインの道へ舵をきられたのですね。

ただ、当時の私はMacをさわったことさえありませんでした。子どもの頃から絵を描くのが好きで手描きのイラスト集(ポートフォリオ)は持っていたのですが、商業デザインの知識は全くない状態。「デザイナーをやってみたい!」という一心だけで印刷会社の面接に臨んだところ、運良く採用されたんです。

なぜ、未経験・知識なしで採用されたのでしょうか?

面接時に提出したイラストのタッチを気に入っていただけたことが大きいかなと思います。「温かみがあっていいね!」と言っていただきました。また、知人から頼まれExcelで制作したチラシを持って行ったことで意欲を感じていただけたというのもあると思います。タイミングも良く、それまでイラストを担当されていた方が退社される時期だったため、面接してくださった社長に「まずはイラストを描きながらMacを覚えればいい」と言っていただいたんです。その印刷会社には5年ほど在籍しましたが、Macの電源を入れるところから、冊子のデザインを一人でフィニッシュできるようになるまで育てていただきました。お世話になった会社の皆さまには本当に感謝しています。

そこからパッケージデザイナーに転身されたきっかけを教えてください。

印刷会社からラミネート加工会社へ転職したのがきっかけです。結婚を予定していたこともあり長く通いやすい場所で、電子書籍やウェブなどデジタル化の影響を受けないデザイン関係の仕事という条件で探していたところ、食品が入る袋などの「軟包装パッケージデザイン」の仕事に出会ったんです。

「グラフィックデザイン」と「パッケージデザイン」ではかなり違うと思いますが?

私が印刷会社で手がけていたデザインは冊子が多かったため、文字量が多い誌面を正確に組むという側面が強かったように思います。職場もデザイナーさんが黙々と作業を行う感じでした。一方、パッケージデザインは一目でわかる“印象"を作る仕事です。ですからデザイナー同士でディスカッションする機会も多く、転職当初は「こんなにラフな感じで仕事をして大丈夫なんだろうか…」と心配になったこともありました(笑)。

宮田さんが手がけたパッケージデザイン

コンセプトは、視覚的な通訳。

仕事をする上で大事にしていることは何ですか?

仕事をするうえで最も大事にしているのが「視覚的な通訳」です。たとえば、言葉が通じないAさんとBさんの間に通訳が入った場合、それぞれが“伝えたい"と感じているものを表現するための『言葉選び』こそが、通訳の仕事の本質だと思います。パッケージデザインにおいても、生産者の「こんなにいいモノができた!」という想いをどうデザインに定着させ、消費者に伝えるかが大事だと考えています。

宮田デザインモードを設立されたきっかけは?

一番のきっかけは出産と育児になります。出産を機に1年ほどの産休を取得したのですが、その間に会社の経営方針が変わり、デザインよりも加工面の品質を重視するようになっていました。会社の方針にはもちろん納得できましたが、デザイナーとしての道は諦めたくないという思いから、独立することを選びました。会社の皆さまも思いを理解してくださったばかりか、むしろ独立の後押しをしていただき、今もお付き合いが続いています。

社名の由来についてもお聞かせいただけますか?

宮田デザインモードの「宮田」は、大切な家族のファミリーネーム。独立することで家族に迷惑をかけることがあるかもしれないけれど、それでも『家族が一番大事』という気持ちを表しています。「デザイン」は業態がすぐにわかるように付けました。そして「モード」というのは『流行』を意味しています。パッケージデザイナーは、市場の商品を常に見ていないといけません。自分へのハードルをあげる意味で、あえて「モード」という言葉を選びました。

御社の強みを教えてください。

一番の強みは、パッケージデザイン制作の前に必ず市場調査にいき、そのレポートをもとに制作していることです。商品は売り場やターゲット層によりデザインが全く異なる為、画面で見て美しいデザインではなく、現場でうれるデザインを常に考え提案しております。
また、「筆文字」「水墨画」をかくことが出来ることも強みです。

筆を使ったパッケージデザインはお客様からのニーズが高く、特に日本の食材をはじめとした和のテイストを表現するために欠かせない存在です。筆文字は、いい文字を書くことができればそれだけでデザインとして完成してしまうほどの影響力を持っているんです。

“主婦であること"がブランドになる仕事。

設立してまだ間もない今、今後の展望をお聞かせください。

会社としての今後のビジョンは大きく2つあります。1つが「軟包装デザインのスペシャリスト」として確かな技術を提供できる会社になること。もう1つが、子育てをしながらも社会の中で活躍できる事業の確立です。

「軟包装デザインのスペシャリスト」としてマーケティングを理解した『売れるデザイン』を生み出し、印刷・加工セオリーを理解した『製造しやすいデザイン』を心がけ、お客様が自社商品として誇りを持てる『美しいデザイン』に定着させる。この3つの技術を磨いていくことで、お客様・商社様・加工会社様のそれぞれのニーズに対応していきます。また、その活動によって「軟包装デザイン」という業界自体を盛り上げていける存在になることを目標としています。

子育てをしながらも社会の中で活躍できる事業の確立というのは?

これまで仕事をしてきて、パッケージデザインというものは自分の作ったものを街中で見かけることができ、人に紹介もしやすい、とてもやりがいのある仕事だと感じています。とりわけ軟包装の商品はスーパーやドラッグストアなどとても身近なところにあり、消費者のターゲットの多くが「主婦」になります。だから、パッケージデザインは“主婦であること"がブランドになる領域なんです。パッケージデザインを軸にした事業なら、出産・育児と仕事とのワークバランスがうまくとれるのではと考えています。

今後、事業を拡大されていくことはお考えですか?

私自身がこれからもデザイナーとしてプレイヤーでありつづけていきたいという気持ちが強いため、「会社を大きくしたい」という想いはあまりありません。しかし、志を同じくする方がいれば、ぜひ一緒に仕事をしていきたいと考えています。大人数になることでお客様にさまざまなタッチのデザインを提案することができるため、顧客満足にもつながります。また、子育てと仕事を両立することに悩んでいる女性に「こういう道があるよ」と案内してあげられるような、そんな会社になれたらいいですね。

取材日:2017年12月14日

宮田デザインモード

  • 代表者氏名:宮田 菜津美(みやた なつみ)
  • 設立:2017年4月
  • 事業内容:パッケージデザイン/グラフィックデザイン
  • 所在地:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3-15-33 栄ガスビル13階
  • 電話:052-855-3434
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