経営課題からブランドを育てる。ブランドとマーケティングを分断しない「商藝舎」
Webサイトをつくる。広告を出す。SNSを運用する。そうした施策を個別に切り分けるのではなく、経営課題からブランドとマーケティング全体を考える。
株式会社商藝舎が目指しているのは、そのような事業パートナーとしての立ち位置です。
案件の約8割をクライアントから直接受注し、ブランド設計からWeb制作、SNS・LINE運用、EC、広告・マーケティングまで、戦略から実行を一貫して支援。
札幌と十勝を中心に、北海道のローカル企業のブランドづくりに携わってきました。
代表取締役社長の吉本拡さんに、商藝舎の事業思想、クライアントとの向き合い方、組織づくり、そしてこれからについて伺いました。
経営課題から入り、戦略から実行まで一貫して支援
起業に至った経緯を教えてください。
もともと、自分で事業をやりたいという思いがあり、慶應義塾大学環境情報学部で起業やインターネット、会計、組織論などを学びました。
そして、22歳のときに大学の友人や後輩と札幌へ移り、事業を立ち上げました。
ほとんど資金がない状態からのスタートだったため、最初に始めたのがWeb制作です。
営業も、デザインも、コーディングも自分たちでやる。そうやって目の前のお客さまの課題に応えながら、一つずつできることを増やしてきました。
その延長線上に、現在の商藝舎があります。

「商藝舎」という社名には、どのような意味が込められているのでしょうか。
商いの「商」、藝術の「藝」、そして研究や学びの場を意味する「舎」を組み合わせています。 私たちが目指しているのは、自分たちの表現を追求するだけのクリエイティブ会社ではありません。
クライアントの経営者と直接向き合い、その事業がどうすれば成長するのかを一緒に考える。そのために必要であれば、クリエイティブにもマーケティングにも踏み込んでいく必要があります。
商藝舎という名前には、ビジネスの成果につながる方法をクライアントと一緒に考え、実践し続ける「研究の場」でありたいという思いを込めています。
現在の事業内容と、商藝舎ならではの強みを教えてください。
Web制作から始まった会社ですが、現在はブランディングやマーケティングまで支援領域を広げています。
WebサイトやECサイトの制作だけでなく、LINE公式アカウント、YouTube、SNS、インフルエンサーマーケティングなど、クライアントの課題に合わせて必要な施策を選択しています。
ただ、「できるサービスが多いこと」そのものを強みにしたいわけではありません。大切にしているのは、何が本当の課題なのかを考え、必要な施策を、必要な順番で実行することです。
案件の約8割は、クライアントから直接ご相談いただく一次受けです。
経営者や事業責任者と直接話すことができるからこそ、「Webサイトをつくってほしい」という依頼の背景にある経営課題まで理解できます。
制作だけ、広告だけ、SNSだけと分断せず、戦略から実行まで一貫して支援できることが、商藝舎の特徴だと考えています。
ブランドとマーケティングを分断しない、一気通貫の支援
その考え方を象徴するプロジェクトはありますか。
十勝で構想されていたチーズブランド「age(エイジ)」の立ち上げです。
ブランドコンセプトの設計からネーミング、ロゴ、パッケージデザイン、撮影、プレスリリースまで、まずブランドの立ち上げに必要な部分を一緒につくりました。
そこからさらに、YouTubeやLINEの運用、ECサイトの構築・運営など、立ち上げ後のマーケティングにも継続して関わっています。
ブランドをつくって納品して終わるのではなく、そのブランドが実際に市場へ届き、売上につながるところまで関わっているプロジェクトです。
ブランド認知を広げるうえで、どのようなことを意識したのでしょうか。
私たちは、立ち上げ直後から大きく認知を広げることが、必ずしも正解だとは考えていませんでした。
どれだけ多くの人に知ってもらっても、商品を見た人が「欲しい」と思い、実際に購入できる状態ができていなければ、せっかくの認知を十分に成果へつなげることができないからです。
そこで最初に、コンセプトを明確にし、LPや会員カードなどを整えました。
YouTubeやLINEも継続して運用し、商品の背景やブランドの考え方が伝わる状態をつくっていきました。
つまり、認知を取る前に、認知した人が購入につながるための受け皿を整える、という考え方です。
その状態をつくった上で、料理研究家のリュウジさんとのコラボレーションを通じてご紹介いただき、結果として前年の300倍以上の売上につながりました。
一つの施策だけが成功したというより、それ以前に積み重ねてきたブランドづくりやマーケティングがあったからこそ、大きな認知を成果につなげることができたと考えています。 ブランディング、Web、SNS、CRM、認知施策を別々に考えず、全体を一つの設計として考える。これは商藝舎が大切にしている支援の考え方の一つです。
レベニューシェアという契約形態も特徴的ですね。
はい。通常の初期費用や月額費用による契約だけでなく、プロジェクトによっては売上に応じて報酬をいただくレベニューシェア型の契約も取り入れています。
目的は、クライアントの事業成長と私たちの成果をできるだけ同じ方向に合わせることです。
成果が出ればクライアントの事業も成長し、私たちの報酬も増える。反対に、成果が出なければ私たちの報酬も増えません。
当然、すべての案件に適した契約ではありません。ただ、制作物を納品することそのものではなく、その先にある事業成果まで一緒に考えるという、私たちの姿勢を表す一つの方法だと思っています。
クライアントの業種や地域に特徴はありますか。
特定の業種に限定しているわけではありません。
共通しているのは、これからブランドやマーケティングに投資し、事業を成長させていきたいというフェーズの企業が比較的多いことです。
地域としては札幌や十勝が中心ですが、ご紹介などをきっかけに、他地域の企業とも仕事をしています。
地域企業と長く伴走する中で、大切にしていることはありますか。
会社によって予算も違えば、経営者が事業を続けてきた背景も違います。
だからこそ、流行しているマーケティング手法をそのまま当てはめるのではなく、その企業の状況に合わせて実行できる形に変えていく必要があります。
経営者が何を大切にしているのか。今、何がボトルネックになっているのか。何から始めるべきなのか。
そこまで理解した上で提案することを大切にしています。地域企業の経営課題にどこまで本気で向き合えるか。そこに、この仕事の難しさと面白さの両方があると思っています。

専門性を軸に職種を越え、挑戦する回数を増やす組織
チームで仕事を進める上では、どのようなことを大切にしていますか。
商藝舎は決して大きな組織ではありません。
デザイナー、エンジニア、営業、ディレクターなど、雇用形態にかかわらず、さまざまな専門性を持った人がプロジェクトに関わっています。その中で、職種を完全に分断しないことも意識しています。
例えば、デザイナーがディレクションまで経験したり、営業やライターがプロジェクト全体を考える立場を担ったりすることがあります。もちろん、それぞれの専門性は大切です。
その上で隣接する領域も経験することで、「自分の仕事の前後で何が起きているのか」 「この仕事が事業全体のどこにつながっているのか」を理解できる人材になってほしいと考えています。
プロジェクトごとに異なる役割を経験し、お互いの立場を理解することも、商藝舎のチームづくりでは大切にしています。
メンバーの成長については、どのように考えていますか。
大切にしている考え方の一つが、「打席に立つ数」です。
挑戦する回数、試す回数、意思決定する回数が多いほど、人は成長できると考えています。 考えることはもちろん大切ですが、考えすぎて動けなくなってしまうより、まず一度やってみる。
そこで失敗したとしても、その経験を次に生かせばいい。素直に学ぶ姿勢と、周囲への感謝を持ちながら、できるだけ多くの挑戦を経験してほしいと思っています。
商藝舎では、一つの職種の枠にだけにとどまるのではなく、経営者やクライアントと直接向き合いながら、事業全体を見る経験を積める環境をつくっていきたいと考えています。

北海道発のブランドを育て、世界へ
これから、どのような会社にしていきたいですか。
大手広告代理店や大手制作会社だから依頼するのではなく、「商藝舎だから仕事を依頼したい」「商藝舎だから一緒に働きたい」と思っていただける会社にしたいです。
そのためには、会社そのものが持つ「場」としての価値を高めていかなければならないと考えています。商藝舎と仕事をすることで事業が成長する。商藝舎で働くことで、自分自身も成長し、面白いブランドや事業に関わり、新しい挑戦ができる。そうした経験が集まる会社にしていきたいです。
北海道には、魅力的なコンセプトや商品を持つローカルブランドがたくさんあります。そうした企業の価値を磨き、デジタルやマーケティングの力を使って地域の外へ届けていく。
さらに、その先に、世界へ広がっていくブランドを生み出していくことも、私たちがつくりたい価値の一つです。
自社事業にも取り組まれているそうですね。
はい。クライアントワークだけではなく、自分たち自身で事業をつくることにも挑戦しています。
現在進めているのが、感謝・目標・行動を書き留める3年日記「Three Note」の商品開発です。
自分たち自身で商品をつくり、ブランドを立ち上げ、マーケティングを実践する。クライアントに提案するだけではなく、自分たちも事業をつくる側に立つことで得られる学びを、クライアントワークにも還元していきたいと考えています。
最後に、地方でクリエイターとして働くことに関心がある方へメッセージをお願いします。
私たちは、作品をつくることそのものを目的にしている会社ではありません。
デザインも、Webも、マーケティングも、最終的にはクライアントの事業に成果をもたらすためにあるものだと考えています。だからこそ、クリエイティブだけではなく、経営者の考えや事業そのものにも興味を持ってほしい。
一つの専門性を持ちながら、その領域を越えて挑戦し、地方のブランドの価値を磨き、より多くの人へ届けていく。
そんな仕事に面白さを感じてくれる方と、一緒に働きたいと思っています。
取材日:2026年8月31日 ライター:小山 佐知子
株式会社商藝舎
- 代表者名:吉本 拡
- 設立年月:2017年8月
- 資本金:1,200万円
- 事業内容:Webサイト制作、Web動画、Webマーケティング、SNSマーケティング、アナリティクス、市場調査、広告広報戦略、コンセプトワーク、CI/VI設計、グラフィックデザイン、パッケージデザインなど
- 所在地:〒062-0012 北海道札幌市豊平区美園12条7丁目1-18 KANTINE MISONO
- URL:https://www.shogeisha.com/
- お問い合わせ先:0155-66-5757






