WEB・モバイル2026.09.09

課題を見る「視点」で価値を形に。元ウェディングプランナーが遠回りで見つけたクリエイターの道

愛知
株式会社SITEN
Hiroyuki Shimodare
下垂 宏行

愛知県豊田市を拠点に、ブランディングとデザインを軸とした総合クリエイティブ事業を展開する株式会社SITEN。代表の下垂 宏行(しもだれ ひろゆき)さんは、ウェディングプランナー、デザイン会社、広告代理店での勤務を経て独立し、企画から制作までをワンストップで担うスタイルで信頼を集めています。下垂さんの子ども時代から現在、そして未来への展望まで、ざっくばらんにお話を伺いました。

やりたいことが見つからず、流されるようにウェディング業界へ

子ども時代や学生時代は、どのような将来像を持っていましたか?

本当にやりたいことが見つからなかったんです。高校から大学までエスカレーター式の学校で、大学はスポーツや住環境、心理学などを幅広く学べる学部を選んだのですが、勉強もあまり得意ではなく、何をしたいかわからない状態でした。
そんなとき、アルバイト先でお世話になっていた方が「ウェディング業界が面白いよ」と教えてくれたことがきっかけで興味をもち、人生の節目に寄り添える仕事に魅力を感じました。ウェディング業界に絞って就職活動を行い、東海エリアの大手ウェディング会社に入ることができました。

ウェディングプランナーとして何年働かれましたか?

約3年です。結婚式全体をプロデュースして、式の当日も新郎新婦をサポートするポジションを担っていました。職場の皆さんにも可愛がられ、本当に楽しく、やりがいもありました。
ただ、当時から業界の衰退が見えていました。少子化で結婚式の件数が減り、式を挙げる・挙げないの二極化が進む状況に危機感を抱き、別の道に進もうと決意。デザインや芸術に興味があったことから、デザイン業界への転身を決め、デザインが学べる専門学校に1年通いました。その頃から、将来的な独立も頭の隅にありました。

専門学校卒業後、下積みアルバイトでスキル習得

デザイン業界へ転身されたきっかけと、その後の道のりを教えてください。

入学前に想像していたグラフィックデザインとは少し印象が違いましたが、それでもツールの扱い方やデザインの基礎は身につきました。
卒業後は、デザイン会社のアルバイトを3社掛け持ちしながら1年半続けました。新卒でもなく、実務経験もない状態では正社員の募集がなかったためです。アルバイトを通じて現場の感覚とスキルを学び、家に帰ってもひたすら制作する下積み期間でしたが、この時期に制作現場のリアルをしっかりつかむことができました。
その後、名古屋を代表するデザイン会社に入社し、大手広告代理店の案件を多く扱うトップクラスの環境で3年間働き、グラフィックとWebの両方を経験しました。

代理店経験を経て、再び制作への思いが芽生える

その後のキャリアステップも教えていただけますか?

デザイン会社を退社後、採用系の大手広告代理店に勤務しました。制作業務ではなく、ディレクション・プレゼン・企画提案・プロジェクトマネジメントが中心で、そこで「価値創造の根幹」を学んだんです。営業としての数字のプレッシャーもありましたが、非常に良い経験になりました。その後、小規模なデザイン会社で4年ほど働き、2023年8月にSITENを立ち上げました。

独立のきっかけは何だったのでしょうか?

デザイン業界は独立しやすい環境でもあり、さまざまな会社で経験を積む中で、「自分のやり方で価値を提供したい」「お客さまに深くコミットしたい」という思いが募りました。制作会社と代理店の両方を経験した後、これ以上、この環境で成長するイメージがもてなくなり、「独立するしかない」と思ったんです。
個人事業主か法人かで迷いましたが、周囲の助言もあり、株式会社を選択。手続きの煩雑さを避けられるだけでなく、信頼性向上や自分の「分身」として守ってくれる点に魅力を感じました。

クリエイティブを通じて場を提供し、ご縁を広げていく

社名「SITEN」の由来と、現在の事業内容を教えてください。

「視点(してん)」の造語です。お客さまの課題を見る「視点」、支える「支点」、ビジネスを始める「始点」、志高く取り組む「志点」。四つの意味を込めました。また「SITE(場)」と「EN(円・縁)」を掛け、クリエイティブを通じて場を提供し、ご縁を広げていく意味ももっています。
事業は、ブランディング・デザインを軸とした総合クリエイティブの提供です。ブランドデザイン、グラフィック、Web、UI/UX、システム開発、映像制作など幅広く対応し、上流の情報設計・課題抽出・企画提案からコンセプト設計、構築までワンストップで担います。自分ではできない領域は、信頼できるパートナーと連携しており、現在は豊田市を拠点に、東海・関東・九州など全国のお客さまとのお付き合いがあります。

設立から3年間の道のりはいかがでしたか?

前職とのつながりもあり、ありがたいことに順調にスタートしました。しかし、2期目に売上の伸び悩みやお客さまとのトラブルが重なり、精神的にかなり追い込まれましたね。家族の生活を守るために自身のメンタルケアや生活習慣を見直し、乗り越えることができました。

強みは「ワンストップ」と「ブレの少なさ」。ヒアリングを何より大切に

御社の強みは何でしょうか?

企画から制作まで一貫して担える点です。プロジェクトが細分化されやすい中、コンセプトからデザインまでを私が担うため、認識のズレが少なくスピードも出せます。現在は、クライアントからの直接依頼と広告代理店経由の案件がほぼ半々で、安定した形で仕事をいただいています。代理店さんから継続的に案件をいただけることにも感謝しています。
社名にも込めた「視点」の通り、良いデザインは課題を正しく見つめることから始まると考えています。お客さまとのやり取りでは、「答えはお客さまの中にある」と考え、徹底的にヒアリングを重ねます。本質的な価値や思い、届けたいことを丁寧にくみ取り、それを形にするのがデザインだと信じています。

今後の展望やビジョンを聞かせてください。

デザインの価値を経営の中心に据える「デザイン経営」を推進したいと思っています。日本ではまだ過小評価されがちですが、海外のように成長資源として大いに活用されるべきです。小さな会社ながら、気づきを与え、業界や社会を良くする一助になれればうれしいですね。
企業ミッションやビジョンについても現在、見直しています。お客さまと一緒にクリエイティブを生み出し、体験できるような「場」をつくることが夢です。将来的にはクライアントの良きパートナーとして長く建設的な関係を築きたいですね。

次世代クリエイターへのメッセージ

今後の組織づくりについて教えてください。どのようなクリエイターと一緒に働きたいですか?

現在は仕事を1人で回していますが、お断りせざるを得ない案件も増えてきました。ディレクターやデザイナーを増やしたいと考えています。動画やシステム開発の外部パートナーと案件ごとに組む現在の形を維持しつつ、自社のチーム強化を図ります。
一緒に働く人に求めるのは「誠実さ」「自分ごと化できるか」「熱量」の3点です。スキルは後からつきますが、この姿勢がないとお客さまに迷惑がかかってしまうので、仕事に対する価値観が合う方だとうれしいです。

若手クリエイターへアドバイスをお願いします。

僕は美大出身でもなく、自分で見て学ぶ独学タイプでした。そんな僕でも、会社をつくるところまでたどりつきました。若手のクリエイターの皆さんは焦らなくても大丈夫。一つのことに向き合い続ければ、何かしら形になります。
デザイン業界は挫折して辞めてしまう人も多い業界ですが、もったいないと感じています。これからの時代に必要なデザインの価値を一緒に上げていく仲間が増えたらうれしいです。「継続すること」それが何より大事です!

取材日:2026年7月9日

株式会社SITEN

  • 代表者名:下垂 宏行
  • 設立年月:2023年8月
  • 資本金:200万円
  • 事業内容:デザイン経営支援、ブランディング、ブランドデザイン、CI/VI開発、グラフィックデザイン、Webサイト制作、UI/UXデザイン、映像制作等
  • 所在地:〒470-0343 愛知県豊田市浄水町3丁目11番地27 Y‘s GARDEN210
  • URL:https://siten.co.jp
  • お問い合わせ先:https://siten.co.jp/#contact

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