創業100年を超える印刷会社。紙の価値を信じ、学校アルバムを進化
日本国内にもさほど多く存在しないといわれる学校アルバム制作を主力に置く印刷会社が新潟にあります。創業から100年以上の歴史を誇る株式会社博進堂は、創業間もない頃から学校アルバムの制作を手掛けてきました。写真印刷の技術に磨きをかけ、40年ほど前からはデザインによるストーリー性も追求して制作するようになりました。現在では年間約3千校の学校アルバムを制作し、全国から支持を集めています。どのようにして学校アルバム制作を行っているのか、そのものづくりに込める思いを専務取締役の清水 隆太郎さんに伺いました。
100年以上印刷し続けてきた

会社の創業はいつですか?
1921年です。12月1日が弊社の創立記念日で、もう100年以上が経過しました。創業当時は古町の芸妓さんを描いた絵はがきを作っていたと聞いています。絵はがきといっても実際には絵ではなく、写真を使っていたのが学校アルバムとつながり、アルバム制作事業を始めるきっかけとなりました。
現在の事業内容を教えてください。
売上の8割は学校アルバム制作です。クライアントは全国に及びます。残り2割は商業印刷や美術系の出版、彫刻や陶芸、絵画の図録などです。
学校アルバムは年間何校ぐらい手掛けるのですか?
毎年約3千校です。そのうち約2千校は卒業式前に納品となるので、ピークのタイミングには大量の写真データが一気に入稿され、それらを計画的に管理しながら制作していきます。年明けからの2カ月くらいは一心にアルバム制作に集中する時期になります。
教壇から印刷の世界へ。その経験が今、生きている
清水さんは現在、専務取締役でいらっしゃいますが、いつから博進堂にお勤めなのですか?
今から13年、14年ほど前に入社しました。学生の頃は中学校の教員を目指していて、1年半ほど教員をしていました。その後、退職し、数年後に叔父である現社長から「そろそろ博進堂に入らないか」と声を掛けていただきました。そのような経歴です。
業種の違うお仕事に戸惑いはありませんでしたか?
ありました。入社してすぐは営業に配属されたのですが、見積もりを作ったこともなければ、印刷の知識もまったくない状態で、戸惑うことばかりでした。しかし、ものづくりは楽しく、大変さよりも面白さの方が勝っていたという感じです。また、教員をしていた経験が学校アルバムを作る上で生きることがありました。教師目線でのアルバムづくりができるのは私の強みです。さらに、子どももいるので保護者目線でもあります。制作者、発注者、使用者の3つの視点で学校アルバムを見ることができる私だからこそ感じられる楽しさや、気づけることが多くあると思っています。
並べるだけではなく「物語」をアルバムに

学校アルバムはどのような流れで制作されていくのですか?
通常は、学校側と保護者側がその年の学校アルバムの方針を決め、アルバム業者の選考委員を作り、地元の写真館さまや写真スタジオさまに依頼をします。弊社は写真館さまなどからご依頼をいただき、行事の撮影データをもとにアルバムの制作を行っていくというのが流れです。
学校アルバム制作において御社が選ばれる理由はどこにあると思いますか?
品質にはお客さまから一定のご評価をいただいています。レイアウトやデザインに関しては、お客さまの好みや意図に合わせて編集・デザインできる体制を整えています。もちろん、創業当時から磨きをかけている写真印刷の品質に関しても自信があります。
編集・デザイン面に力を注ぐようになったのはいつからですか?
今から40年以上前のことですが、デザイナーの藤坂泰介先生に、デザインの基礎をご教示いただいたことに端を発します。それまでの学校アルバムは、写真台帳とでもいいますか、写真をフォーマット通りに並べていました。この時にデザインによってストーリー性をもたらす方法を教わりました。並べるだけでなく物語をつくり構成することで、20年後や30年後に見返しても色褪せないアルバムに仕上がります。
デジタル化が進む昨今、学校アルバムの良さはどういったところにあると思いますか?
紙でのアルバムにはデジタル再生機器の変化など、時代の流れは関係しません。保存性の高さや普遍的な魅力はいつまでも変わらないと考えています。
知ってほしいという思いが広がり、オープンファクトリーを開催

製造業が多く集積する新潟市東区の魅力を発信する「東区オープンファクトリー」に関わっていらっしゃると伺いましたが、経緯を聞かせてください。
「博進堂の魅力を、現場の楽しさをもっと多くの人に知ってもらいたい」という社員の発言があり、オープンファクトリーの実施を計画し始めました。2017年に単独で実施し、約300人の方々に来社いただきました。社員が本当に生き生きとした表情で、まるでお祭りを楽しむかのような姿が印象的でした。そこで産業の町としてPRしている東区さまのご協力のもと2023年から弊社社長の清水伸が実行委員長兼発起人として、年に1回「東区オープンファクトリー」と銘打って実施するようになりました。現在では約20社が参加していて、今年は10月24日の開催を予定しています。
イベントではどのような体験を提供されるのでしょうか?
弊社はデジタル印刷機で、スマホの画像をその場で印刷しオリジナルカレンダーを作る体験を提供します。また、職人が案内する工場見学で大型の印刷機、アルバム製本機をご覧いただき、自社ブランドのカレンダーや書籍、紙の販売も行います。
紙のアルバムを、これからも。小ロット印刷で企業価値を高める

どういったクリエイターと一緒にお仕事をしたいですか?
写真やデザインが好きな方です。それから、お互いさまの精神を持っている方ですね。学校アルバムの繁忙期には、100人を超えるアルバイトの方が働いてくださるので、お互いに気持ちよく手伝い合えるようなマインドの方がうちの社風には合っていると思います。
10年後、どういった会社になっていたいですか?
今と変わらず、学校アルバムを主力にしてお仕事をしていたいですね。私たちはこの仕事に誇りを持っています。紙のアルバムはいくら少子化が進んだとしてもなくならないと考えています。紙のアルバムにはデジタルにはない普遍的な魅力があります。これを作り続けたいという思いが強いです。
また、学校アルバムは小ロット印刷の最たる形ですので、その強みを生かして、アート関連の自費出版をはじめとした表現のお手伝いができる企業価値をより高めていけるようにもなりたいですね。
取材日:2026年7月17日 ライター:コジマ タケヒロ
株式会社博進堂
- 代表者名:清水 伸
- 設立年月:1950年12月
- 資本金:3,000万円
- 事業内容:アルバム事業・商業印刷事業・教育事業・出版事業
- 所在地:〒950-0807 新潟県新潟市東区木工新町378-2
- URL:https://www.hakushindo.jp/
- お問い合わせ先:025-274-7755






