“書いてみないか”から始まった、元ロボット研究者のアニメ人生。異色キャリアで拓く起業への道

東京
株式会社サラマンダー 代表取締役
Taiki Sakurai
櫻井 大樹

東京大学大学院でロボットの研究を行っていた学生が、アニメをプロデュース――。そんな異色の経歴を持つ櫻井 大樹(さくらい たいき)さんが起業した東京の株式会社サラマンダーでは、アニメや漫画の企画・開発を行っています。Netflixなどでも働かれていた櫻井さんが会社を設立するまでの経緯や、今後のビジョンについてお話を伺いました。

ロボット工学の研究者が、SFアニメの世界へ

アニメ業界に入られた経緯を教えてください。

東大大学院でロボットやAIの研究をしていたときに、縁があって、アニメーション制作会社・株式会社プロダクション・アイジー(以下、Production I.G)の意見交換会に参加しました。企画や作品のアイデアをいろいろ出しているうちに、監督から「脚本を書いてみないか?」と誘われたのです。

脚本はどれぐらい書いていたのですか?苦労した点があれば教えてください。

「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」の最初のシリーズのときは、シリーズ26話中8本、第2シリーズも続投しました。脚本家としてのキャリアは、その後、10年ぐらい続きました。
「攻殻機動隊SAC」の後はNHKの「おじゃる丸」の脚本にも参加させてもらったのですが、すごく苦労しました。監督から「あなたが書く脚本は固い。子どもがみて面白いものじゃないといけない」と指摘され、徐々に指摘された理由を理解していきました。10期目から参加させていただいていたのですが、なかなか最初は通用せず、13期目で急にOKになる本数が増えたのです。“石の上にも三年”という言葉は本当だな、気付かないうちに成長しているんだと感じました。

7億を背負い、未経験ながらプロデューサーに

その後、どういった経緯でアニメのプロデューサーになったのですか?

Production I.Gで脚本家としてアニメ映画『ジョバンニの島』の脚本を担当していたのですが、監督とプロデューサーが諸事情で降りてしまったため、「自分がプロデューサーになって作るのはどうか」と社長に提案したことがきっかけです。
今思えばすごいことですよね。プロデューサーの経験がないのに、いきなり予算を預けてもらって、信頼して任せてもらえたのですから。

Production I.Gを退社、そしてNetflixへ。起業後も制作に邁進

多くの作品に脚本で関わり、映画『ジョバンニの島』ではプロデューサーとしても成功されましたが、その後どうなりましたか?

プロデューサーとして数作品に関わりましたが、できることは一通りやり終えたという感覚があったので、その後、Production I.Gを辞めました。しかしその数日後には、Netflixの現CEO・グレッグ・ピーターズさんから電話があって誘われたのです。
いざ入社してみると、当時のNetflixは急成長の最中で「もっと企画がいる」「すぐに作り始めろ」「じゃあ明日から」「明日じゃない今すぐにだ」と、とにかく動きが速かったことを覚えています。稟議や決済などもなく、すべてが即決でした。
打ち合わせで進捗を問われた際に「脚本家を集めているところです」と答えたら、「先週、企画にGOが出たのだから、その日に書き始めなければならないんだよ」と言われて、寝る間を惜しんで必死に企画を進めました。その頃は企画が同時に100本ぐらい進んでいて、自分が直接担当している分でも35本ぐらいありました。

そのような状態がどれぐらいの期間続いたのですか?

結局、Netflixには6年間ぐらいいました。Netflixは外資ということもありますが、戦略の転換がすごく速いのです。だんだん会社として成長するのに伴って、何もかも作るというのは止めて、作品を買うことに比重が変わっていきました。特にオリジナル作品の製作にかける比重は減っていたので、独立を決意し、2023年に起業しました。

あらためて事業内容や、現在の会社での制作事例を教えてください。

アニメの企画・開発、漫画の企画・脚本、SNSコンテンツ制作を行なっています。
ありがたいことに起業後2年間はNetflixが独立を支援してくれて、複数の作品を世に出すことができました。最新作は、Netflixシリーズのアニメ「プリズム輪舞曲」を企画・プロデュースしました。現在は、自社制作、企画協力、プロデュース作品などを含めると10本ぐらいの企画が動いている状態です。

また、弊社のYouTubeチャンネルでは「MY JOB IS ANIME」と銘打ち、日本のアニメ業界で活躍する海外クリエイターを紹介しています。

事業はどのような体制で進めているのでしょうか?

スタッフは少人数体制で5人で動いています。その5人が臨機応変に出来ることをやっているので、全員攻撃、全員守備みたいな感じでしょうか。僕を含めて全員がクリエイターです。

クリエイターには「作品を自分ごとにしてほしい」

今後どのような会社にしたいとお考えですか?将来のビジョンなどを教えてください。

事業展開としては、とにかくさまざまな媒体を駆使して作品を作り続けていきたいなと思っています。現在、アニメに限らず、舞台、漫画などの媒体でチャレンジをしていますが、さらに幅広い媒体で作品を発表していきたいです。
また、僕の夢を叶えるための会社にはしたくないです。社員のみんなが会社をうまく利用して、自分のやりたいことをやれるような環境にしていきたいです。

一緒に働くクリエイターに対して、会社としてどのようなことを求めますか?

自発的に動いてほしいですね。実際、今はみんな、指示をしなくても自分でどんどん進めてくれています。
また僕はクリエイターにも制作にも「作品を自分ごとにしてほしい」「自分の作品だと思ってほしい」と願っています。その分、やる仕事の範囲が多かったり、責任が重かったりしますが、その分、僕は報酬面でしっかり保証したいと思っていて、多分、ほかのアニメ会社よりは給料の水準が高いと思います。そういった作品作りを楽しいと感じてもらえる人と一緒に働きたいですね。

取材日:2026年3月6日 ライター:徳永 卓司

株式会社サラマンダー

  • 代表者名:櫻井 大樹
  • 設立年月:2023年6月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:アニメ企画開発、漫画の企画・脚本、SNSコンテンツ制作
  • 所在地:東京
  • URL:https://slmndr.jp/
  • お問い合わせ先:

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