「こうすべき」を取っ払い「ゼロイチ」を作る学生起業家。インフルエンサーたちとSNS発信を支援

福井
株式会社meme 代表取締役
Yasutaka Miyoshi
三吉 康貴

SNSのコンサルティング、運用代行などを行う福井の株式会社meme(ミーム)。代表取締役・三吉 康貴(みよし やすたか)さんは現役大学生です。さまざまなバックグラウンドを持つ人と関わってきた経験から立場や年齢は関係なく、「どんな価値提供ができるのか」を念頭に活動しています。高校時代に行ったクラウドファンディングを皮切りに「ゼロからイチを作る楽しさ」を追求し続ける三吉さんに、現在の事業や今後の取り組みについてお話を伺いました。

インターネットを使い、アクションを起こした先に見えてきたもの

高校生の頃からクラウドファンディングやYouTubeでの発信など、ネットを使ってアクションを起こしていたそうですが、きっかけはあったのでしょうか。

高校生のときにクラウドファンディングをしようと思った理由は、校則でアルバイトもできず、おこづかいしか手元になかったからです。資金を集めるにはほかに手段がなく、当時は「クラウドファンディングって何?」という状態でした。そのときは、NPOを通じて環境問題に関心がある人の知り合いを作って、クラウドファンディングのサイトを経由してお金を集めるという形を取りました。この体験が「ゼロからイチを作る面白さ」を知ったきっかけです。
高校生ながら親に頼らずに資金調達をすることに着目できたのは、インターナショナルスクールに通っていたからだと思います。いろいろな文化を持つ人が多い環境で、「こうあるべき、こうすべき」という固定観念がなく、選択肢が複数ある中で合理的な方法を自分で選択した結果でした。

インターネットを通じ、アクションを起こしてみてどんな手ごたえを感じましたか。

クラウドファンディングをきっかけに、フォロワーを集めて有名になるのは普通の人が考えるほど難しくないのかもしれないという手ごたえがありました。その後、SNS情報のまとめメディアを作って売却に成功するという経験をしたことで、インターネットを通じて行動すると同じ考えの人と出会えたり、年齢にとらわれることなく資金を集めたりできることに確信を持ちました。これは、今まで学生という立場や年齢で制限されていたハードルを取っ払えると、大きな可能性を感じました。

音楽系のYouTubeチャンネルを開設したのもその時期ですね。

アーティストになりたいという友人に出会ったのですが、学生だったこともあり、親からは学業優先を諭されたり、自分からオーディションを積極的に受けに行くにも資金面で難しかったりするのが現状でした。そこでYouTubeを利用して、拡散された方が自分の世界観を確実に伝えやすいと考え、実践するためにYouTubeチャンネルを開設しました。
YouTubeを見ながら研究を重ねていくと、テレビとYouTubeのメディアの違いもわかってきました。テレビはチャンネルを変えると、最初に動いた映像が目に飛び込んでくるので、手を止めて視聴が始まります。しかし、YouTubeの動画を見るには再生ボタンを押すというもうワンアクションを自分で起こさなくては、動画が再生されないのです。
視聴者がYouTubeで動画を再生させるかどうかの判断は、どんなに動画の中身が素晴らしい内容であっても、サムネイルとタイトルが魅力的でないといけないので、どうしたらいいかを研究しましたね。
調べを進めていくと、弾き語りのサムネイルは自撮りでギターと弾いている手を入れた画角が多いという傾向にありました。動画も顔を出さずに歌い続けているので、サムネイルを見ただけでは、プロが歌っているのか、素人が歌っているのかすぐにわかりませんでした。誰が歌ったかをしっかり魅せることで他の弾き語りチャンネルと差別化できるポイントがあると感じ、さらに画角を研究しました。
研究の結果、自撮りをして発信していくよりは、第三者である私から友人の曲を発信して、視聴ユーザーを誘う形にしました。
おかげでチャンネル登録者数が19万人となり、友人はミュージシャンとしてデビューを果たしました。
ただ、YouTubeやTikTokの演者を経験してみて自分はインフルエンサーとして出演し続けるも、裏方でゼロからイチをつくるビジネスを手掛ける方が面白いと感じたので、現在は裏方の業務に注力しています。

以前から起業したいと考えていたのですか。

実はあまり起業したいという野望は持っていませんでした。税金対策のため、企業と仕事をする上で対会社にした方がスムーズといった理由で会社の設立を決める方もいるように、私も総合的に考えて会社にした方が合理的だと判断して、会社にしました。また、個人より会社にした方が与えられたニーズに応えることができ、自分の力をより発揮できるステージにいけると考えました。

実績を重ねて企業とのタイアップも増えた先の起業

三吉さんは東京出身と伺いましたが、福井県で会社を立ち上げたのはどうしてですか。

福井県内の大学へ進学し、そのまま福井県で創業した理由としては、注目されやすいというメリットがありました。
東京に比べて地方メディアは、学生で起業したという話題は取り上げてもらいやすいのです。また、地方の行政は起業サポートが手厚く、会社の設立時に、いろいろ相談に乗っていただきました。起業してからも、地方ではSNSの運用やコンサルティングをする会社は新しく、興味を持っていただけたので、実績は作りやすかったです。
そうして実績を積み上げたおかげで、東京に進出する際、会社の印象もプラスになりました。現在は、福井と東京の2拠点で活動をしています。

現在の事業について教えてください。

企業に提供しているサービスは、会社のSNSプロモーションの代行です。その企業にヒアリングを行い、希望に合ったメンバーを集めてチームを作って対応しています。
また、マイクロインフルエンサーをビジネスターゲットとして、マネタイズのサポートを行っています。マイクロインフルエンサーとは、SNSで特定のジャンルに特化して発信をするインフルエンサーです。1万〜10万人のフォロワー数を持っていますが、知名度がそこまで高くないので、仕事やアルバイトと両立して、SNSの発信をしている人が多いです。仕事を掛け持ちすることなく、インフルエンサーとして独り立ちできるようにサポートを行っています。

大手SNS運用代行事業をする会社との資本提携でさらに合理化を目指す

企業からインフルエンサーさんと仕事をしたいという依頼もありますか。

目的に応じたSNSの運用に柔軟に対応しているので、時にはインフルエンサーをキャスティングする業務を請け負うこともあります。例えば、企業さんが仕事を依頼したいインフルエンサーのフォロワーが多くても、成果が出ないときがあるのですが、不動産会社が家を売りたいのに子ども向けのチャンネルを運営しているインフルエンサーに仕事を依頼しても、決裁権がない子どもにどんなに発信しても、家を買いたいと思う人には届きません。また、物販系の企業には、コアなファンが多いインフルエンサーを提案した方が、この人が出したグッズなら、応援したいという気持ちが強く、複数購入する可能性も秘めているので、効果的にSNSを活用できるインフルエンサーをご提案させていただくこともあります。
また個人的に、裏方業務をサポートしてくれるクリエイターとも繋がっているため、この人とこの人とを結び付けてチームを作って一緒に仕事ができたら面白いな、と巻き込むこともあります。
こうした事業を展開できるのは、自分もインフルエンサーとして活動する中で、ほかのインフルエンサーやクリエイターと信頼関係を築けていたからだと思います。

2022年12月には、SNSマーケティング事業などを展開する東京の株式会社ラバブルマーケティンググループとの資本業務提携をされています。

業務提携をしたラバブルマーケティンググループは日本で数少ないSNS運用代行事業で、上場した企業です。弊社とターゲット層が重なっており、私たちが得意とするTikTok支援やショート動画を活用したいと希望する案件を紹介してもらっています。memeを設立したときは1人で交渉していた案件も、提携したおかげで効率を上げ、別の仕事に注力できるようになりました。また将来的には両社で新しいサービスの開発も検討しています。

それぞれの関係を大切にしながらも合理的にものごとを考えて提案を

御社の強みについて教えてください。

自分自身がYouTubeやTikTokでインフルエンサーとしてフォロワーを増やしたという実績があり、さらに企業とも取引があるという会社は珍しいと思います。自身の経験を持って、弊社はショート動画という15秒から数分の動画コンテンツの分野を得意としているので、PRとして使用したい、お客様の声を集めたい、などの目的に応じて今まで蓄積してきたデータを元に当てはめていきます。
現役のインフルエンサーが多く関わっているからこそ、SNSのトレンドの変化を敏感にキャッチし、データ分析の先にある、本当の価値提供までの提案ができるので、先方にも満足してもらえていると感じています。
満足のいく提案ができる背景には、株式会社ラバブルマーケティンググループとの資本提携が大きいです。SNSマーケティング事業を主要な事業の柱としている大手で私たちの業務と重なるところがあります。
ラバブルマーケティンググループと提携することで、ショート動画の分野を強化したいという企業や案件を紹介してもらい、私たちは今あるインフルエンサー同士の関係を生かして、納得させる提案ができるかに力を注ぎ、営業活動に費やす時間を最小限に押さえました。業務の合理化で、上手く仕組みにできたからこそ、好きな仲間と好きなことを、好きなだけやるという環境を作り出せています。
加えて、私自身、先入観を持っていないことも強みだと思います。業務委託契約を結ぶ人たちと比べても一番年下という立場にいますが、スーツでなくてはいけないといった固定概念や背景にとらわれることなく、その人自身の言葉に耳を傾けていけるような人でありたいです。

御社が求めるクリエイター像を教えてください。

私の中では二つあります。一つは論理的思考ができ、泥臭く頑張れることです。どこの分野でも仕事で成果を出せると思うので欲しい人材の要素です。
二つ目は、クリエイター気質のある、卓越した分野を持っている人です。最初は誰でも無名だと思いますが、その状況でも自分は才能がないと腐らずに、ひたすら発信を続けられるくらいの情熱を持って取り組んでいること。成果が形になるタイミングは人によって異なります。半年後になるのか、3年後になるのかはわかりません。すぐに成果が出ずに諦める人も多い中、諦めるという選択肢がなく、本当に自分の好きを追求し続けられるという点を評価しています。

AIを脅威と恐れず、枠組にとらわれない新しい形を取り入れる柔軟性

今後どのような会社にしたいとお考えですか?

既存の枠にとらわれないで、合理的に価値を提供できる会社であり続けたいです。現在の事業を継続させることはもちろんですが、さらにAIを使った事業に注目し、これまで培ったSNSマーケティングの経験、インフルエンサーとの人脈を生かしていきたいです。
いい商品があるのに、PRに予算が取れないと悩む地方の企業に、AIを活用したSNSのプロモーション事業を提案できないか思案しているところです。今まで人がやっていたことをAIに任せることで、時間の効率化が見込めます。また人件費を抑えることで、希望する予算内での提案ができると期待しています。
まだAI自体が進化の過程にいるので、どこまでAIを活用し、どこから人がコントロールしてプロジェクトを進めていくかなどテストをして実践に落とし込み、軌道に乗せていきたいです。

最後に、これから一緒に働くクリエイターに求めることをお願いします。

これからクリエイター業界にもAIが台頭してくるのは確実です。数学的に物事を考えることも大事ですが、この人にしか表現できないと感じられるオリジナルがないといけないと感じます。現在、注目を浴びている対話型AI(人工知能)「ChatGPT」を脅威と捉えるのではなく、どうやって活用していくかを柔軟に考えていけることはポイントになってきます。
どんなにAIが進化しても、人の感情を動かすことができるのは人にしかできないことです。クリエイティブの領域でゼロからイチの企画を考えることで、自分のオリジナルを磨きやすく、わくわくする醍醐味もあります。唯一無二の存在を目指して進んでいけば、クリエイターとして残ることができると思います。

取材日:2023年5月15日ライター:高井 寧香

株式会社meme

  • 代表者名:三吉 康貴
  • 設立年月:2022年8月15日
  • 資本金:1,099万円
  • 事業内容:SNSアカウント運用代行、SNSコンサルティング、動画制作
  • 所在地:〒910-0006 福井県福井市中央1丁目8番地21号 伊井ビル5号館2階
  • URL:https://meme-sns.com/
  • 電話番号:08030420343
  • お問い合わせ先:fukui.meme.official@gmail.com

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