アニメ2026.03.25

次代を担うアニメーターとグローバルな創作を。海外を見据えたこれからのアニメ制作とは

東京
FLAGSHIP LINE株式会社 代表取締役社長
Kazuhito Matsumura
松村 一人

「チェンソーマン」などで注目を集める藤本タツキの短編集プロジェクト「藤本タツキ 17-26」の一編「シカク」を手がけたアニメーションスタジオ、STUDIO GRAPH77。FLAGSHIP LINE株式会社が2024年に立ち上げ、エイベックス・ピクチャーズ株式会社の子会社という強みを生かしながら、グローバル市場を視野に入れたアニメ制作に挑んでいます。その制作体制、そして次代のクリエイター育成への思いについて、代表の松村 一人(まつむら かずひと)さんに伺いました。

一度は異なる道を選ぶものの、諦めきれず映像業界へ

まずは、松村さんのキャリアを教えてください。

新卒の時は就職活動がうまくいかず、一度は別の業界を選びましたが、どうしても諦めきれなくて映像制作や映画配給などを展開するエイベックス・ピクチャーズの門を叩きました。

数ある企業の中から、エイベックス・ピクチャーズを選んだ理由は何だったのでしょうか?

当時のエイベックス・ピクチャーズは『スキージャンプ・ペア』(2002-2003年)という架空の競技をモチーフにしたCGアニメを手掛けており、「これほどおもしろいことをする企業ならば、入社後も刺激的な日々を送れるだろう」と感じたことがきっかけでした。
入社して数年の間は営業やマーケティングの部署を転々とし、DVDソフト販売の効果測定などに従事しました。その後、私から上長に希望を上げたこともあり、アニメの製作に携わるようになりました。

その後、2018年にCG制作スタジオのグラフィニカとの共同出資による会社FLAGSHIP LINE株式会社が設立されたのですね。

FLAGSHIP LINEはあくまで企画会社であり、当時は制作ラインは有していませんでした。しかし、供給量が年々増えてきまして、業界全体での作品数が増えたことで制作スタジオの確保が次第に難しくなりました。
そうした潮流を受けて「制作ライン(スタジオ)を抱えた方がよいのではないか」という話が社内で出始めて、2024年10月にSTUDIO GRAPH77が設立されました。

企画から制作、宣伝、販売まで一気通貫の体制で臨む

STUDIO GRAPH77を立ち上げるにあたって、どのような苦労がありましたか?

私のように、現場(制作スタジオ)側ではないメーカーの者がアニメ制作スタジオを立ち上げるのはめずらしいことだと思います。スタジオとメーカーでは、必要な知識や業務内容が大きく異なるからです。

スタジオが手がけた初の作品は、大人気マンガ「チェンソーマン」の作者である藤本タツキさんの読み切り短編集をアニメ化する企画「藤本タツキ 17-26」の1作品である「シカク」となりました。

現メンバー全員が制作に関わりました。この作品をきっかけにこのスタジオを知ってくださった方が増えたと実感しており、STUDIO GRAPH77らしさを象徴する作品にできたととらえています。

©藤本タツキ/集英社・「藤本タツキ 17-26」製作委員会

STUDIO GRAPH77は動き始めたばかりのスタジオですが、強みはどのようなところにありますか?

製作と制作が共にグループ会社となっていますので、アニメ化したいと思った企画の権利元にアプローチしやすく、製作(出資・企画)から制作(アニメーション制作)まで一気通貫の体制が整っているのも強みとして挙げられます。また、資本面で安定もしておりますので、安心して制作に取り組めます。

現役アニメクリエイターを対象とした育成プログラムも展開中

FLAGSHIP LINEは、2026年1月に文化庁の補助金により日本芸術文化振興会に設置された文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター支援基金)を活用した事業としてアニメクリエイターの育成プログラム「PLUS CREATORS CAMP(プラス・クリエイターズ・キャンプ)」の設立を発表しましたね。意図を教えていただけますか?

次代のアニメーター、アニメクリエイターをいかに育てていくかというのは、今アニメ業界が一丸となって向き合わなければならない課題です。そして次代を担うには国内だけではなく、国際的に活躍できる人を育てなければいけないという思いのもと、取り組んでいます。

確かに、一般社団法人日本動画協会によると、日本のアニメ産業の売り上げは年々海外依存度が高くなっているようですね。

はい。「PLUS CREATORS CAMP」はすでにアニメクリエイターとして活動している方を対象に、海外におけるアニメーションの制作手法や考え方、業界を生き抜くための実践的な知識を学べるほか、海外のアニメスタジオ訪問なども実施予定です。
さらに、アニメ制作のフローに特化した英会話講座も行います。アニメのグローバルスタンダードがどのようなものであるかを知っていただき、新たな一歩を踏み出してもらえればと。

疑問や希望を明確に意思表示できる人を歓迎

STUDIO GRAPH77の今後の展望を教えてください。

まだ小さいスタジオですので、1本1本を丁寧に作っていける組織を目指します。また、「グローバルで大勢の人に受け入れてもらえる作品」を届けたいと考えております。

松村さんが考える「グローバルに受け入れられる作品」とはどのようなものですか?

あくまで一例ですが、どこの国や地域の方でも共通して楽しめるアクション要素が強い作品の方が受け入れられやすいとは思います。あとは誰もが感じたり、体験したことがあるような「共感性」が高い作品でしょうか。
また、今すぐにというわけではありませんが、いつかはオリジナルアニメも手がけられればと考えています。

一緒に働く従業員に求めることを教えてください。

自分のやりたいことや知りたいことなどを明確に意思表示してくれる人が望ましいですね。指導がしやすく、キャリアプランを用意することもできます。
そのためにも、私たちもみなさんが気兼ねなく意思表示できる環境作りに邁進(まいしん)していきます。

ありがとうございます。最後に、御社に興味を持った学生にアドバイスがあればお願いします。

どこのスタジオでも同じだと思いますが、ポートフォリオはさまざまなポーズを描いたクロッキーが含まれているといいです。
また、個人的には好きな作品のキャラクターを模写するよりは、その人が描いたオリジナルのキャラクターを見せてもらえるとうれしいです。オリジナルのキャラクターの方が、クセや特徴、強みがわかりやすいと思います。

取材日:2026年2月2日 ライター:蚩尤

FLAGSHIP LINE株式会社 / STUDIO GRAPH77

  • 代表者名:松村 一人
  • 設立年月:2018年7月
  • 資本金:1億円(資本準備金含む)
  • 事業内容:アニメコンテンツの企画・制作
  • 所在地:〒164-0012 東京都中野区本町2丁目46番1号サンブライトツイン 8F
  • URL:https://graph77.com/
  • お問い合わせ先:https://form.run/@graph77-contact

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