元ファッションデザイナーが届けるダンボール造形の祭典。青森で見つけた幸福度の高いものづくり
グラフィックデザインなどのクライアントワークに加え、ダンボール造形の祭典「ダンボリアン」を運営するなど、青森県でユニークな活動を展開する有限会社スキルズ。有名アパレルブランドのファッションデザイナー出身という稀有な経歴を持つ、代表の三上 貴久(みかみ たかひさ)さんに、これまでの軌跡や地域にかける思いなどを伺いました。
大手企業のファッションデザイナーから青森に帰郷。販売員からビジネスの基礎を学ぶ
ファッションデザイナー出身と伺いましたが、いつからその道を志したのでしょうか?
実家が婦人服を中心とした衣料品店を経営していたこともあり、青森の高校を出た後、東京のアパレル系専門学校に入学しました。でも実は、アートやグラフィックデザインの仕事がしたくて、ずっと美大を志望していたんです。しかし結果的に夢は叶わず、アパレル系専門学校に行くからには良い成績を収めて、しっかりとした会社に入ろうと思っていました。
専門学校に通っていた当時はバブル経済全盛期で大きなファッションのムーブメントが起きていたので、いろいろなコンテストに参加するなどチャレンジしました。
そして卒業後、大手アパレルメーカーにデザイナーとして就職し、さまざまな経験を積ませていただきました。
ねぶた運行団体「あおもり市民ねぶた実行委員会」に所属
なぜ、ファッションデザイナーを辞めて青森に帰ってきたのでしょうか?
25歳のときに青森の父から「事業が拡大し、手に負えなくなってきた。手伝ってほしい」という切実な連絡を受けました。当時、父の経営する株式会社メゾンが、北東北3県と北海道にも店舗を展開し、従業員も100人ほどの規模にまで拡大していたんです。東京でもっと挑戦したい気持ちはありましたが、後ろ髪を引かれる思いで青森に帰郷し、店舗の販売員を3年間経験しました。“ものをクリエイトすること”と、店舗での商売はまったくの別物だと思い知らされましたね。接客や店舗のレイアウトなど、手取り足取りで基礎から教えていただきました。
4年目以降は、どういった業務をされていましたか?
4年目から、店舗を離れて、青森と東京を行き来するようなスタイルとなりました。
その頃から会社はメインのアパレル小売事業を含めて、キャラクターライセンス事業、広告事業などの五つの事業を展開するようになっていきます。
アパレル業界に押し寄せる変化の波を察して、生まれたスキルズ
有限会社スキルズを設立するまでの経緯を教えてください。
2010年、ちょうど40歳になる頃に、父から継ぐ形で株式会社メゾンの代表取締役に就任しました。先ほども申し上げたとおり、メゾンではアパレル小売事業、キャラクターライセンス事業、広告事業などの五事業を展開していたのですが、そのうちの広告事業を切り分けて設立したのが、有限会社スキルズになります。
その背景として大きかったのが、ファストファッションの台頭や、ECサイトの普及などの事業環境の変化です。アパレル業界で培ってきた私の経験をフルに生かすことで広告事業に力を入れていこうと、有限会社スキルズを設立しました。

現在の人員構成と事業内容を教えてください。
現在、株式会社メゾンの代表を兼任しながら運営する、実質一人の会社です。いわゆる商業デザインと言われるような、ロゴや名刺、チラシ、ポスター、パンフレットなどのグラフィックデザインをはじめ、店舗の看板などのデザイン、プロモーション動画などのクリエイティブ領域全般を手がけています。
御社の強みを教えてください。
“売上をしっかりと上げられること”です。クライアントが特に推したい商品を効果的に売り出していくため、その商品の魅力や驚きをクライアントと一緒に探求していくというスタイルでプロモーションをつくっています。
業種は特に絞っているわけではありませんが、地域柄リンゴ農家さんからのご要望は多くいただいていますね。例えば、自社農園のブランドでジュースやゼリー、お菓子などをつくりたいといった場合は、パッケージのデザインだけではなく、商品の企画や生産ラインの構築といったところからお手伝いさせていただくこともあります。リンゴ農園の従業員かと思われるような、密なお付き合いをさせていただいているところもありますね。
パッケージデザイン:りんごジュース「ガチリン」(青森市 鹿内農園さま)
勝ち負けの二元論ではなく、共存共栄の精神で地域を盛り上げていく
「ダンボリアン」というイベントも運営されていると伺いました。
元々は2018年に青森県の「ポップカルチャーコンテンツ活用集客企画」として採用されたもので、自作のダンボール製コスプレ衣装で、みんなで踊って騒いで楽しむというイベントです。日本を代表する青森県の「ねぶた祭り」になぞらえた上で、日本が誇るサブカルチャーを発信する狙いがあり、コロナ禍の時期も含めて8年間にわたって継続開催できています。
毎年遠方から来て参加してくれるコスプレイヤーさんもいて、界隈でもかなり認知度が上がっていると感じています。私も4回目まではダンボール衣装をつくって一緒に楽しんでいたのですが、運営協力いただいている方々に「運営に集中してください」と頼まれたので、以降は黙って黒子に徹しています(笑)。

有限会社スキルズとして目指していることは何ですか?
会社の規模はあまり変えず、外部の企業さんや個人の方々と協力していくことで、より幅広い層の人たちを笑顔にしていきたいです。
これまで流行を追うスピード感や情報の感度が命といったアパレル業界で長く仕事してきましたが、クリエイティブ業界では一人勝ちの状態になることはほぼないと思っています。「ダンボリアン」にしてもそうなのですが、勝ち負けという二元論ではなく、共存共栄的なスタンスで取り組むことで、幸福度が高いものが生み出せると思うのです。

地域ではどのような役割を果たしていきたいと考えていますか?
青森を拠点にして、東北、日本、世界に広げていくといった果てしないビジョンは意識していません。商店街が活気づけば、おのずと人が流れて、地域経済が回っていくというロジックと一緒で、私たちのコミュニティが広がっていけば、人が集まり、新しい流れが生まれていくのではないかと考えています。そこで、自分の経験から得てきたものを地域の若い子たちに伝えていきたいです。
さらに私だけでなく、同年代や年上の方たちにも過去の経験・学びを伝えていただくなど、一緒になって何か面白いことを仕掛けていきたいと思っています。
取材日:2025年12月17日 ライター:髙橋徹
画像提供:有限会社スキルズ
有限会社スキルズ
- 代表者名:三上 貴久
- 設立年月:2010年5月
- 資本金:400万円
- 事業内容:商業デザイン、イベント企画
- 所在地:〒030-0862 青森県青森市古川1丁目20-11 メゾンビル3F
- URL:https://www.skills-design.net/
- お問い合わせ先:お問合せフォーム






