貪欲な若手映像クリエイターが「入社したい!」と思うような会社を目指して

岩手
株式会社オズ 代表
Toru Sudo
須藤 亨

「岩手県初のフルCGCM」の制作、「県内随一の充実度」を誇る映像機材の数々。県内でも指折りの映像プロダクションとして知られる株式会社オズは、CGが物珍しかった時代から事業を起こし、プロジェクションマッピングやモーションキャプチャーなど、常に先進的な映像技術にも取り組んでいるフロントランナーです。同社を設立した代表の須藤 亨(すどう とおる)さんに、同社の歩みや展望などについてお話を伺いました。

Mac好きが高じてデザイン業界へ。それがすべての始まり

会社設立までの来歴を教えてください。

私は幼い頃から絵を描くのが好きだったのですが、中学・高校と進むうちに、自分よりも絵が上手い人、絵の才能のある人を何人も目の当たりにしてきました。そこで悔し紛れでしたが、紙とペンではないツールに変えれば、自分はもっと良い絵が描けると思い、デザイン系の専門学校に進学しました。
しかしその頃はMacが一般化していない時期だったので、専門学校にも1台しかなく、十分に触れられる環境ではありませんでした。当時の私はとにかくMacを使ってみたかったので、専門学校を出たあと、デザイン会社のアルバイトとして働き始めました。そうしたら、2カ月後にそこのお客さまだったMacの販売店に誘われて。昼はMacのデモンストレーターをして、夜にそのデモ用の制作活動をするといった形で2年ほど働きました。

そのあと、映像と音楽を制作している2人と知り合って事務所を立ち上げたのですが、諸事情でユニットは解散に。当時事務で雇っていた方から、給料もなくなるしなんとかならないかと相談されて、1998年に新たな会社を立ち上げて雇うことになったというのが会社設立の経緯になります。

オズ設立から現在までの沿革を教えてください。

当時、CG制作を行うソフトウェア「Adobe After Effects」が世界的にすごい勢いで普及し始めていた時期で、私は日本での専門解説書が出る前から勉強を進めていたこともあって、その波にうまく乗ることができました。そのおかげで、会社設立当初はとにかくCGの仕事がほとんどでしたね。
そのあと、徐々に映像制作に関して、企画をはじめ音楽までトータルかつワンストップで制作できる環境を整えました。常に映像制作の最新技術を取り入れながら、また、YouTube広告などの時代に応じたものまで領域を広げながら、現在まで一貫して映像制作の事業を展開しています。

最新の映像技術が大好物。積極的チャレンジで常に「攻め」る

オズさまの社員数とその体制を教えてください。

現在、10人ほどのメンバー構成になります。ディレクターはチーム制を採っていまして、チームごとに案件に携わるイメージで、評価もチームの成果を反映しています。それ以外に、音声、編集、Web系のエンジニア、事務の専門スタッフがいます。メンバーの年齢も、20〜50代と満遍なく分布しています。ちなみに私もまだまだ現役で制作に携わっており、メンバーがやりたがらない案件を担当しています(笑)。
ただ、1人1人がスペシャリストになってきているので、どのくらいの塩梅でアウトソーシングするかが組織体制としての課題だと感じています。また、青森営業所は別として、基本的に営業は私1人が担っているので、そこも課題ですね。

青森営業所、R&D(研究開発)の位置づけを教えてください。

青森営業所は2006年に開設したのですが、文字通り青森地域においての営業拠点になっています。なぜ青森かというと、仙台の会社が青森に来るならば、東京とほぼ変わらない距離や時間がかかるので、数や効率から東京に行ってしまうんですね。なので、比較的に市場の競争が激しくないことと、私たちの技術的優位性を発揮しやすいというのが主な理由です。
R&Dについては、モーションキャプチャーやLIVE配信をやるための空間を確保するための場所という位置づけです。そのほか、新しい映像技術を研究し、試行するための拠点というポジショニングになっています。

オズさまの事業上の強み、特長を教えてください。

映像の最新技術は常に追って、積極的にチャレンジするのが当社の強みです。3DCGが一般的でなかった頃にフルCGのCMを制作したり、市場に広く知られる前の技術でコンテンツを制作したりしてきました。
プロジェクションマッピングも全国的な流行に先駆けて機材を導入しましたね。映像機材には積極的に投資しており、県内随一の充実度だと自負しています。
そして、もう一つが人材の強み。CMの絵コンテを書く企画段階から、撮影、編集、演出、楽曲制作にいたるまで携わって、映像コンテンツをトータルで制作できる体制があることは大きな強みとなっています。

AIをクリエイティブに活かすチャレンジで、この先も永く愛される会社へ

今後、注力したい分野や技術があればお聞かせください。

やはりAIですね。すさまじい速度で進化しており、1年前はまだまだ実戦では使えないと思っていましたが、1年の間に劇的に状況が変わりました。コンテ、映像、コピー、音楽など、各分野に生成AIが出ていますので、私がそれらを試してから、各分野にいくつかに絞って、メンバーに共有。そして、メンバーが実際に使ったものに関しては、この作品のこの部分でこのAIを使用したという報告を上げてもらうようにしています。今はまだ過渡期ではありますが、極端にいえば今後は「映像制作の現場ではAIを使える会社でなければ話にならない」といった風潮になる可能性もあるでしょう。そして、そこにいたるまでには、必ず著作権の問題や、商用利用の範囲などの法整備が進むと思いますので、そこもよく把握していく必要があると考えています。

若者クリエイターの成長を事業でサポート。「考えるクセをつけて」

今後どういった会社にしていきたいと考えていますか?

長くローカルで仕事をしてきて、制作会社で仕事を覚えた若いクリエイターが新たに会社を起こして独立するのですが、今度はその会社でまた若いクリエイターが独立して、その会社は名前も聞かなくなってしまうというような繰り返しを何度も目にしてきました。だからこそ、力をつけた若いクリエイターが、クリエイターとしての欲を満たせるような予算や規模のある仕事を任せられる会社にしたいと考えています。
その一方で、会社としてきちんと継続させていくことで、映像が好きで業界に入ってきたスタッフがきちんと食べていける、仕事として続けていける環境を提供し続けられる会社にしていかなければとは思っています。

映像業界を志す若いクリエイターにメッセージをお願いします。

講師をしたときなどに、「キレイな星空」を描いてくださいというと、空の色が黒だったり、紫だったり、星の形状や大きさなど、1人1人がまったく違った絵を描いてきます。そして、なぜ「キレイ」だと思ったのかを言えるようになってくださいと、よく話しています。
例えば、街で看板を見たときに、ぱっと目立った看板は、なぜ目立ったのか、なぜその色なのか、なぜその大きさ、文字なのか、その理由を考えるクセをつけてほしいと思います。それができないと、自分がなにかつくろうと思ったときに、理屈を立ててつくることができません。たとえ、業界で働いていなくとも、クリエイターを目指すなら、そういった考えるクセをつけておいてほしいですね。

取材日:2024年2月28日 ライター:高橋 徹

株式会社 オズ

  • 代表者名:須藤 亨
  • 設立年月:1998年7月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:映像の企画・制作(3DCG・2DCG・実写等)、音声制作、その他 映像・音声に係る業務、企画、デザイン
  • 所在地:〒020-0022 岩手県盛岡市大通三丁目1番6号 金澤ビル2階
  • URL:https://www.oz-magic.co.jp/

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP