「あの会社があったから良かった」と言われたい。「社会を前進させる」学生起業家の思い
「心を動かすモノやコトを生み出し、社会を前進させる」をミッションに、新潟県長岡市でWebサイト制作やアプリ開発を行うのが株式会社カナタです。代表である金澤 智(かなざわ さとる)さんは高等専門学校在学中に会社を設立し、現在も大学生という肩書を持っています。事業やそこにかける思いについてお聞きしました。
学業のかたわら事業構想と実務を経験。仲間たちと起業へ
これまでのキャリアを教えてください。
私は地元が長岡市で、公立の小中学校に通った後に長岡工業高等専門学校(以下、「高専」)に入学しました。在学4年目に休学を経て中退し、この4月からは慶應義塾大学環境情報学部に通っています。
幼少期から家にあったパソコンで遊んでいて面白さを感じ、進路を考えた際にもテクノロジーの分野を学べる学校に行きたいと考えていました。ちょうど地元に高専がありましたのでそこに入学を決め、友人の誘いでアントレプレナークラブというビジネスプランコンテストに参加する部活動に入りました。当時は起業というものにまったく興味はありませんでしたが、コンテストに参加するうちに面白そうだと感じるようになりました。
そこからいろいろな講座を受講したり、起業プログラムに参加したりするようになりました。新潟県内の企業が提供する、アイデアの事業化を後押しする「新潟版未踏的人材育成事業ETSUZAN(以下、「ETSUZAN」)」という大規模なアクセラレーションプログラムにも参加させていただきました。
高専時代にはほかにも、株式会社スタイルアーツという会社でインターンをさせていただく機会がありました。この会社では、書店の開業事業というちょっと変わった経験を経て、学業をしながらもアクセラレーションプログラムで事業構想をインターンで実務を経験してきました。
立ち上げはどういった経緯だったのでしょうか?
高専の2年次に、長岡市が主催する「リーンローンチパッド」というプログラムに参加しました。シリコンバレーで生まれた約3カ月の事業開発講座です。ここで長岡造形大学の学生であり、現在弊社のデザイン部門を統括している安宅と出会いました。安宅とはETSUZANでも同じチームで参加しました。
一緒に起業するということは意識していませんでしたが、彼女が立ち上げたデザインの個人事務所をWebの面で手伝っているうちに「本格的にビジネスとしてやってみたい」という思いが芽生え、2024年9月にアントレプレナークラブの仲間や長岡造形大学の学生たちと株式会社カナタを立ち上げました。長岡市で立ち上げたのは、起業の知識をえる機会、仲間を見つける機会を与えてくれた場所だったので、自然な流れでした。
デザインやITエンジニアリングを背景に、イシューからの事業開発
現在の事業を教えてください。
一つ目はソリューション事業です。新潟県内外の中小企業や学校をお客さまとして、コーポレートサイトやイベントのランディングページの制作、システム開発等をさせていただいています。またデジタル領域だけでなく、ロゴや名刺、チラシの制作といったアナログ領域の業務も行っています。
橋梁点検に関するアプリとはどのようなものですか?
「橋梁点検時の事故対応アプリ」は 建設業界で10年以上のキャリアを積んだメンバーの体験が基となっています。
橋梁点検には高所作業や車線規制下での作業があり、落下等の事後が発生しやすい環境です。事故発生時には、まず負傷者の応急処置をして救急へ通報しますが、そのほかにも警察や発注者、自社内、その他関係機関への連絡も行わなければなりません。また、いつ、誰が、どういった対応をしたかをまとめた事故報告書を出さなければなりませんが、現場担当者の記憶頼りになってしまい正確性の乏しいものになってしまいがちです。
点検作業は場合によりますが、4人程度で行うことが度々あり、その場合、1人が落下してしまった際には、これらの対応を残りの3人で行うこととなります。事故経験がある人は少なく、精神的に余裕がない中ですべての対応を適切に行うことは困難を極めます。われわれのアプリでは緊急通報や関係者向けのチャット、Todo管理ツールのような機能が搭載されており、事故発生時のやりとりも記録されるようになっています。これにより、関係機関への迅速な連絡が可能となり、年齢や経験を問わず、誰でも適切な初動対応が可能になります。
このアプリは、点検業務の受注者であり安全管理を行う建設コンサルタント企業を対象としており、安全管理はもちろん、こういった新技術を導入することで入札において評価があがるというメリットもあります。今後は、開発を進めるとともに金融機関やベンチャーキャピタルからの資金調達を予定しております。
御社の強みはどこですか?
確度の高いデザイン、学生向けの採用広報に関する知見があること、ノーコードツールやAIというテクノロジーを得意とすることの三つです。
デザインについては、目的のために戦略を持った広報物を制作できることが特徴です。経験と実績のあるデザイナーがいることを前提に、弊社では戦略から表層まで一貫した制作を行えるフレームワークを活用しています。例えば、どういう色にするのか、どこに何を配置するのかといったことを戦略立てて論理的にデザインを行っています。こうすることで、見た目だけを整えるのではなく、しっかりと目的に対して確度が高い広報物を作ることができます。
学生向けの採用広報に関する知見については、独自のデータベースを持っています。長岡市内には長岡造形大学や長岡技術科学大学、高専がありますので、それぞれの学生にどういった採用広報に魅力を感じるのか数多くのヒアリングを行っています。志望する業界や職種も含めた情報をデータベースに反映していますので、企業の採用に関する広報物の制作に活用することが可能です。
ノーコードツールはWebサイトに導入しています。Webサイトが納品されても、従業員の方が更新の仕方が分からずに結局、納品元にお願いしてお金がかかってしまうことがあります。しかし、弊社が制作したWebサイトは納品時にノーコードツールの使い方も合わせてお伝えするため、簡単な内容の変更であれば社内で更新作業を行っていただけます。
また、弊社はWebサイト制作用ノーコードツール、Studio(電通やサイバーエージェント・グッドパッチ等も利用)を活用してクライアントワークを行う制作会社をバックアップするStudio Expertsに加盟(審査あり)しています。
AIに関する知見については、私が前職でAIアプリの開発を行っていたことに加え、現在も高専に在学しながらAIの研究を行っているメンバーが2人おり、かなりの自信を持っています。これを活用したシステム開発を行うことができる体制が整っています。
求む!デザイナー・エンジニア経験者

組織の体制や採用について教えてください。
社員は私を含めて9人です。今後は、エンジニアとデザイナーを合わせて数名採用しようと考えています。これまではメンバーのつながりから採用を行っていましたが、今後は採用媒体で募集することも検討しています。
どんな方と一緒に仕事をしたいですか?
私たちのミッションに共感し、ともに成長していってくれる、そんな方と一緒に働きたいですね。中途、新卒を問わず、幅広く募集しております。
たとえ狭い領域でも、社会課題を解決して「求められる企業」に

お仕事をするうえで大切にしていることなどがありましたら教えてください。
弊社は「心を動かすモノやコトを生み出し、社会を前進させる。」というミッションを掲げています。
高専時代に国際的な団体でも活動をしていましたが、その活動で見えたのは世界中の貧困問題です。また、長岡市のビジネスプランコンテストで見えたのは長岡市の人手不足の問題です。世の中にはどうにかしなければならないことがたくさんあります。今一緒にいる会社の仲間たちは、デザインやITエンジニアリングというスキルで「ものづくり」や「ことづくり」ができます。われわれの力で、少しでも社会課題を解決できるようなことをしていきたいという想いが、このミッションの根幹にはあります。
世界をすべて良くするということはできませんが、狭い領域でも10年後か20年後かに「あの会社があったから良くなったよね」と言われるような会社を作りたいと思って仕事をしています。
取材日:2025年4月21日 ライター:川村忠寛
会社名:株式会社カナタ
- 代表者名:金澤 智
- 設立年月:2024年9月
- 事業内容:ウェブサイト制作、各種広報物制作、アプリ開発
- 所在地:新潟県長岡市大手通2丁目2-6 ながおか市民センターB1F
- URL:https://www.kanata-inc.jp/
- お問い合わせ先:090-3868-9715