ゲーム2023.02.22

人を大切にすれば成果も上がる。「宇宙一」を目指す映像制作会社の挑戦

東京
株式会社Astro Production(アストロプロダクション)代表取締役社長
Satoru Ariga
有賀 智

ゲームソフトの映像やエフェクト、遊技機の映像などを制作する、東京の株式会社Astro Production(以下、アストロプロダクション)。「夢は大きく、宇宙一!」と破顔する代表取締役の有賀 智(ありが さとる)さんは、3社での経験を糧に起業しました。「宇宙中の人たちを楽しませるエンターテイメント企業」を目指し、創業2年目ながら順調に社員や事業の規模を拡大しています。「クリエイティブにおいて何より大切なのは人である」とする哲学や、今後の取り組みなどを伺いました。

理想を追い求めるには、自分がトップに立つ必要があった

映像制作業界を目指したきっかけと、これまでのキャリアを教えてください。

おはずかしい話ですが、大学卒業後はフリーター兼パチプロとして過ごしていました。24歳になる頃には「さすがにこのままではいられない」と一念発起しまして、きちんと就職するなら自分の好きな分野に行こうと思い遊技機の映像制作を手がける会社に就職しました。
2社で7年ほど映像の企画・制作進行として経験を積み、その後は人材エージェント会社でエージェントを務めつつ、ゲームのエフェクトを制作する専門部署の立ち上げを担いました。
しかし、私の理想とするチーム作り、組織作りを突き詰めるには自分がトップに立つのが一番であると感じるようになり、独立にいたりました。

有賀さんの考える理想とは、どのようなものだったのですか?

あらゆる業界に言えることだと思いますが、「仕事は、それに従事する人を大切にすればするほど成果が上がる」というものです。
また、先ほどもお話したように私は企画としてキャリアをスタートしていますので、自分自身の手で大きなエンターテイメント作品を手がけたいという夢もありました。

ゲームのエフェクト制作などにも携わってきていますが、ゲームもお好きだったのでしょうか。

はい。親からは「0歳の頃からファミコンのコントローラーを握っていたよ」と言われて育ちました(笑)。さすがに冗談かもしれませんけどね。

目標の少し手前なら簡単に到達できる。だからこそ目標は大きく

理想を胸に、起業という新たな船出をした感想はいかがでしたか?

お金がなければ、人もいない。最初は本当にないないづくしで、はたしてうまくいくだろうかと不安でした。起業時は役員4人、クリエイター1人という規模で、私たち役員はみんなそのクリエイターに食べさせてもらっているようなものでした。
その状態からは一刻も早く脱しなければなりませんので、積極的に人材と仕事の獲得を行いました。現在の社員は、役員と内定者を含め54人まで増えています。

アストロプロダクションという社名には、どのような思いが込められているのでしょう。

まず、宇宙関連の言葉を付けたいと思ったのが一つ。宇宙を想起させる言葉の中から「アストロ」を選んだのは、シンプルに語感を重視した結果です。それに続けるワードは、「ゲームス」などのようなものにするとゲーム制作に特化した会社であるように見えてしまいますので、より手広くやっていくことが伝わりやすよう、「プロダクション」としました。

宇宙がお好きなのですか?

これは私の経験則ですが、何らかの目標を設定しても、いつも達成できるとはかぎりません。しかし、その少し手前までならほぼ確実に達成してきました。つまり「世界一」を目標にしてもそうなれるとはかぎらないけれど、「宇宙一」という途方もない目標を掲げれば「世界一」さえ通過点にできるのではないか……と考えました。
弊社は「宇宙中の人たちを楽しませるエンターテイメント企業」であることを目指しています(笑)。

実践で学ぶ経営と制作のバランス。映像制作事業の拡大も念頭に

現在の事業内容を教えてください。

ゲーム映像の企画制作、ゲームのエフェクト制作が収益の柱です。それに加え、遊技機の映像制作も行っています。2022年から映像制作のベテランが入社してきてくれているので、今後はこちらの事業も伸ばしていきます。
今は、ゲーム関連を7とするなら遊技機の映像制作が3の割合ですが、おそらく今年のうちには両者の比率が同じくらいになると思います。また、映像制作も遊技機だけではなく、劇場用アニメやゲームのキャラクターによるライブ映像制作なども幅広く受託しています。

受託制作のかたわら、探偵たちを主役としたオリジナルコンテンツ「世界探偵局 THE GLOBE EYE SYSTEM」も手がけておられます。

かねてより、良好な関係を築けている株式会社アイツーが映像の企画・制作や声優キャスティングなどを業務としており、声優事務所とのつながりを持つ会社ですので、タッグを組んで少数精鋭体制で手がけました。
弊社初のオリジナルコンテンツで最初は右も左も分かりませんでしたが、予算とクオリティのバランスはどのように取ればよいかなど、実践を通して学べていることも多いです。また、映像制作はすべて弊社で手がけていますので、これまでのノウハウが生かせているとも思います。

また、2023年中を目途に自社でコンシューマーゲームを一本だそうと考えており、会社全体で取り組んでおります。今までにないホラーゲームというコンセプトで試行錯誤し制作を進めております。制作はとても楽しいのですが、どこに着地させていくのかを日々模索しているため、完成はまだ先になりそうです…。
2023年中にリリースできるよう一丸となって頑張って制作を続けていきます!

働きやすい環境作りを続けつつ、海外支社の設立も視野に

先ほど、現在の社員は54人とうかがいました。順調であるとお見受けしますが、ここまで経営してこられていかがですか?

おかげさまで、苦労らしい苦労は今のところ感じていません。これまでのキャリアで恵まれた縁で入社してくれたり、新たな人を連れてきてくれたりと、リファラル採用がうまく機能しています。このまま社員を増やし、2023年中には100人ほどの規模感にしたいと考えています。
現在はエフェクト制作チーム、モーション制作チーム、映像制作チーム、大阪支社チーム、管理チームの5チームで構成されています。急激に人を増やすとチームとしてのまとまりが弱くなったり、チーム間の横のつながりが弱くなったりしがちですので、そうなってしまわないよう、常に気を付けて各チームを見ています。

そのほかに取り組みや、将来のビジョンを教えてください。

弊社はまだまだ発展途上にありますので、社員がより働きやすくなる環境作りに腐心しています。具体的には、家賃補助、オフィスでの冷凍食品食べ放題などです。それと、会社が費用を負担する形で社員が無償でスポーツジムに通えるようにするのはどうだろうかと検討しています。
将来の展望としては、大阪支社に続く形としてできるだけ早い段階で海外支社も設立したいと考えており、ツテがあるカナダやマレーシアへの進出を検討しています。ゆくゆくは、海外のクリエイターだからこそ生まれるクリエイティブも発信していきたいですね。

「談笑が多く、にぎやかな職場」。社内コミュニケーションを重視

今一緒に働くクリエイターや、これから御社を希望する人たちにはどのようなことを望みますか?

仕事を楽しくやることと、夢や目標を持ってそこに向かっていけることです。そういう職場を好ましいと思ってくださる方はマッチすると思います。ただ、1人で黙々と作業に集中したいという方は弊社には向かないかもしれません。談笑が多く、にぎやかな職場ですので。

そのにぎやかな雰囲気は、意図的に演出されているのでしょうか。

私自身が談笑しながら仕事をするのが好きなので、自然とそうなりました。弊社は社員同士のコミュニケーションを大事にしていますので、基本的にはテレワークではなく出社してもらうスタイルを取っています。

モチベーションこそが優れたクリエイティブを生む

有賀さんの、人やコミュニケーションを特に重視するスタンスはどのように醸成されたのでしょうか?

明確な出来事があったわけではありませんが、社会に出て働く中で「世の中のすべてのことは人の手で動いている、生まれている」ことを強く実感したからです。
それならば、コミュニケーションを欠かさないようにして、働きやすい環境も整えてモチベーションを高く持ち続けられる人だけがいる職場を実現できれば、すごいクリエイティブが生まれるのではないかと思いついたのがきっかけですね。

ご自身の経験が、今の原動力になっているのですね。

先ほどお話した家賃補助の取り組みなども、私自身の経験から生まれた発想です。若い頃は勤める会社のすぐ近くに居を構えていたのですが、当時の自分には家賃が高すぎて生活がカツカツでした。
その時期に実感しましたが、金銭的に余裕がないと、やりたくてやっている仕事でも全然楽しく感じられないんです。モチベーションがないと、当然よいクリエイティブは生まれません。
会社は社員の人生を半分受け持つ責任があると思っています。私は今後も常に社員の立場に立って考え、会社として彼らにすべきことを実行し続けられるトップでありたいと思っています。

最後に、クリエイターを目指している人にアドバイスをお願いします。

明確な目標を持って、やりたいことを突き詰めてください。一般的には「好きなものを仕事にすると辛いだけ」という風潮もありますが、私は正反対のスタンスです。好きなものだからこそがんばれるし、探求心が沸く。そして好きなものだからこそ、細部にまでこだわりを込められるのだと思っています。
しかし、自分1人で作れるクリエイティブの規模には限界があります。どのような仕事であれ、大勢の人に届くモノを生み出すには人との関わりが大切になりますので、周囲の人と協調・尊重しあうことができればよりよいモノ作りにつながると思います。

取材日:2023年1月12日 ライター:蚩尤

株式会社Astro Production(アストロプロダクション)

  • 代表者名:有賀 智
  • 設立年月:2020年4月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:映像制作、受託開発、ゲームソフトの企画・開発
  • 所在地:
    【東京本社】〒110-0015 東京都台東区東上野3-37-6 三翠ビル4F
    【大阪支社】〒534-0072 大阪府大阪市北区豊崎5-7-15 多田ビル204
  • URL:https://astropro.co.jp/
  • お問い合わせ先:上記HPの「CONTACT」へ

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