互いに“WIN WIN”でありたい。地域や社会に貢献できる存在へ
広島大学を中心とした学園都市、東広島市に拠点を置き、地域社会と若者をつなぐプラットフォームの開発や、地域ニーズの発掘などを得意のデジタルで発信・広報している合同会社アルステクト。広島大学在学中、共に代表を務める小泉さんと二人で会社を立ち上げた共同代表の中野瑛登さんに、地域や地域の人々、若者への思いや、この先に見据えていることについて、お話を伺いました。
コロナ禍ゆえに起きたある出来事が起業への第一歩に
合同会社立ち上げまでの道のりを教えてください。
学生時代、大学の後輩だった共同代表の小泉さんとは、「いつか一緒に何かできたらいいね」といったぼんやりとした話はしていましたが、真剣に何かを目指そう、といった感じはありませんでした。ですが、そんな矢先、コロナの脅威によって世の中は一変してしまいました。そして、私たちの起業にとって思いもよらないきっかけとなるある出来事が起きたのです。
一気にコロナ禍となった世の中でマスク不足が騒がれる中、東広島市のマスクを生産している工場が、認知不足や流通経路の確保が上手くできていないなどの理由で悩んでおられることを偶然知ることになりました。急遽、私たちでSNSなどを利用してそれらの問題を解決する策を考えました。その結果、マスクがスムーズに流通するようになり、最終的には行政の教育機関から、10万枚のマスクを市役所へ届けて欲しい、という依頼もいただくことになったのです。
車を所有していた大学の友人に声をかけ、みんなで手分けして大量のマスクを納品しました。こうして大量のマスクをお届けできたことも一助となったようで、東広島市の学校運営は比較的早い段階で再開できたらしい、ということを後から聞きました。日頃お世話になっている地域の皆さんのお役に立てたということで、とてもホッとしたのと同時に充実感を持てたことを覚えております。地域の生産活動の一部に自分たちが関わることで、生産者と利用者をつなぐことができ、自分たちも含めそれぞれに利便性や利益がもたらされる好循環を起こす力になれることを実感しました。この経験は、私たちにとって一つの大きな自信となったのです。
合同会社アルステクトを設立したきっかけを教えてください。
コロナ禍にもう一つ、会社を設立する後押しとなった出来事がありました。ステイホームが叫ばれ、感染対策、非接触などの世の中で、特に困窮した飲食業界の問題に関することでした。マスク工場の一件もあってつながった市役所の産業振興課の方から、飲食店の救済策的なご相談をいただき、東広島テイクアウトマップアプリを作らせていただきました。東広島市内の飲食店のテイクアウトメニューと注文先を紹介する程度のシンプルなアプリでしたが、当時はまだSNSを十分に使いこなせている飲食店さんも少ない頃でしたし、8万回近いアクセス数をいただいたこともあり、それなりにお役に立てたのかな、という実感を持てた出来事でした。
この件は、新聞やテレビなどからも取材をいただき、自分たちが作ったホームページやアプリなどが、皆さんのニーズや困りごとなどと上手くつながればお役に立てる場面もあるのかな、といった確信というか、自信を持てた瞬間でもありました。こういった一連の経験によって、地域の皆さんのためになるようなことが必ずしもボランティアではなく、利益を求めつつの形でも成り立つことができる、お互いにWin-Winの関係になりえる、という確信に結びつき、合同会社を立ち上げることへとつながりました。
いずれは起業したいという思いはお持ちでしたか?
起業したいという思いが“ある”か“ない”か、ということで言うと、あったとは思います。実は、起業した時は大学院への進学を決めていた時でもあり、当時は大学院での勉強と合同会社での仕事、二足のわらじを履いている状態でした。さらに言うと、共同代表である小泉さんは現在、一般企業へ就職していて副業として活動を続けていますし、私自身も合同会社アルステクト以外の会社へも所属していて、それぞれの活動を続けております。そういった意味では、ガチガチに起業して膨大な利益を追い求める、とかではなく、柔軟に世の中の需要に合わせて自分たちのスキルを生かしながらその対価をいただく、といった形での起業が私たちらしいスタイルなのではないかと思っています。
『アルステクト』という社名の由来について教えてください。
私たちは広島大学工学部出身で理系ということもあり、ラテン語を使ったネーミングになっています。「アルス」は、ラテン語で「アート=芸術」。「テクト」は単語としては存在しない言葉なのですが、語尾に着くなどして「何かを組み立てる」みたいな意味合いを持つ言葉となります。つまり、この二つの言葉をつなげると、「いろいろな人の才能やアート的なセンスを上手く組み立てることによって大きな力になる」といったイメージで名付けました。一人ひとり、それぞれ異なる能力を上手に組み合わせれば、想像を超える力にもなるはずではないか、という希望のような思いを込めたのです。
何故、東広島市で会社を立ち上げられたのでしょうか。
大学在学中に立ち上げた、ということはもちろんですが、地域に対する思いというのはやはりあります。実は、私たち二人とも広島県出身者ではないのです。小泉さんは兵庫県の出身ですし、私は北海道出身です。大学入学と同時に東広島市に住み始めたのですが、それ以来、まちの皆さんの私たち学生に対する寛容さのようなものを強く感じております。
広島大学が移転して30年ほどは経っていると思うのですが、東広島市というまちは学生への寛容さはもちろん、興味関心も持ってくれていて、学生を中心としたまちづくりがされているし、地域のお祭りにもボランティアといった形で学生が参加するなどもあり、いろいろな意味で学生の存在価値を認めてくれているまちなのかな、と感じています。そういった地域の中で芽生えた会社として、これからは私たちも学生エンジニアやクリエイターたちが地域で何かしらの仕事ができるように支援したり、文化普及の潮流を生み出せたりするようになれば良いな、という思いで活動しています。
県外出身者だからこそわかる地域の魅力、産業の特徴を掘り起こし、発信する

現在の事業、また貴社の強みについて教えてください。
弊社の基本となる事業としては、映像制作による法人向け会社紹介や事業紹介、新卒向け広報物の制作など。また、ブライダル撮影、家族写真、学校写真といった撮影業務。さらにはイベント配信、ホームページ制作などがあります。
直近では、東広島市とWork Design Labが連携した地域課題解決プロジェクト「トルク事業」という、東広島を中心に活動している地域企業の伴走型支援プログラムに一企業として参画しています。そこに採択された事業者として、「若手人材スキルと地域社会の接点づくりで若者の定住を促進する~若手社会人・大学生の雇用促進プラットフォーム構築」をテーマに、若者の地域定着と雇用促進事業を展開しています。具体的には東広島市をはじめとする各市町、地域社会と若者をつなぐプラットフォームの開発や、地域ニーズの掘り起こし、ビジネス目線での協力促進、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応推進などに取り組んでいます。
強みとしては、私も小泉さんも東広島市、もっと言えば広島県外出身者である、ということでしょうか。地元出身ではない私たちだからこそ、地域の皆さんにとって当たり前すぎて気付かれていない、そのまちや地元の産業の特徴や魅力に焦点を当て、掘り起こし、SNSなどのツールを使って発信し、地元の方や学生たちにアピールすることができるのです。
今まで手掛けた中で、特に印象に残っている案件について教えてください。
広島駅の再開発事業として今年、大きな注目を集めた商業施設「ミナモア」内に開業する店舗・運営のお手伝いをさせていただく、というプロジェクト立ち上げのご相談をいただき、作業を進める中で、3月の開業へ向けて必死で準備したことです。開業日が迫る中、時間に追われながら何とかオープン初日に間に合わせることができたことは、大変な思いもしましたが、そこに関わる皆と共に協力したことでしか味わえない達成感を得られる仕事でした。そして、今もコミュニティマネージャーとして広報活動やイベント運営などに携わっておりますが、人との関わりを深めながら自身の人間力も磨いております。
変化の大きい世の中で、柔軟に適応しながらお互いにとっての最良を生み出す

将来へ向けてのビジョンなど教えてください。
日本、そして世界においても変化の激しい時代だと感じています。そういった時代には、いろいろな形に適応しながら新しい価値を生み出す、といった姿勢が必要なのではないかと感じています。このような時代において、私たちには明確なゴールがあるわけではありませんが、自分たちだけが良くなる、利益追従型ではなく、地域や地域の皆さんと共に良い方向へ進む、といった共創社会をけん引することができれば良いのではないかと思っています。
これから一緒に働くかもしれないクリエイターを目指す方たちへ、メッセージをお願いします。
先ほども申し上げたように、今の世の中は複雑になっていて、課題解決に最短距離で到達することが全てではないと思うのです。どこかの誰かの困りごとを知った時、その言葉のままでいいのか、もっと言葉の奥にある本質的なものを見極める必要があるのか、といった捉え方で試行錯誤しながら課題解決に取り組む、時にはまわり道であるかもしれなくても諦めず前進する。自分が信じることに向かってチャレンジ、前進し続けることが大切なのではないかと思います。学生さんや若い方には、ぜひ、何かご自身が思うことへ向けて、まわり道や時には転んだりしながらでもいいので、柔軟に挑戦し、前進していただきたいと思っております。
取材日:2025年11月20日 ライター:村上 雅水
合同会社アルステクト
- 代表者名:小泉 鴻一
- 共同代表名:中野 瑛登
- 設立年月:2020年11月
- 資本金:10万円
- 事業内容:映像制作、写真撮影、HP制作、ライブ配信、動画編集など
- 所在地:〒739-0267 広島県東広島市志和町別府573-4
- URL:https://ars-tect.co.jp
- お問い合わせ先:






