スペース2026.01.21

木工から3Dまでディスプレイ制作は社内完結。多様な素材×技術で挑む、想像を超える空間づくり

札幌
株式会社NDL 代表取締役
Akira Takahashi
髙橋 哲

商業施設や公共施設、イベント等でのディスプレイ・サインに関わる制作施工を手がけている札幌の株式会社NDL。柔軟な対応でクライアントからの信頼も厚く、着実に受注数を増やしています。新たな機械の導入やスタッフ採用などにより、会社の規模も拡大している同社の代表取締役・髙橋 哲(たかはし あきら)さんに、現在の仕事内容や仕事への取り組み方、今後の展開などについてお話を伺いました。

長年の経験を生かし、自分の力を試すために独立

独立する以前のキャリアについて教えてください。

大学卒業後は大学院に進学し、人形アニメーションの表現方法としての可能性について哲学や芸術論等を絡めて研究をしていました。就職に結びつけようと考えていたわけではなく、単純に興味があって取り組んでいました。ものづくりが好きだったので、何か生かせる仕事をしようと考え、27歳で就職したのが前の会社です。そこでは百貨店や商業施設の装飾、立体の造形などを手がけていて、ディスプレイやサインについて学びました。仕事は楽しかったですし、現場での経験は非常に勉強になり、結果的に15年勤めました。

独立したきっかけは何ですか?

もともと人数が少なく、忙しい中で次第に、業務が私ひとりに集中するようになりました。さらにコロナ禍で会社の方向性が消極的になってきたことも理由にありますね。このあたりで自分の力を試したいと思ったのが、独立のきっかけです。

コロナ禍において不安はありませんでしたか?

そうですね。独立したのは2021年で、ちょうどコロナ禍でした。世間ではイベントや催事が軒並み自粛となったので、イベント関連の仕事はほぼありませんでしたが、内装やディスプレイ関連の仕事は大きな影響を受けていなかったような気がします。私自身は特定の分野に絞らず、幅広い仕事に対応し1人で始めたこともあり柔軟に動くことができていましたので、変化の多い状況でも仕事を続けることができました。

制作は社内で完結、施工撤去まで。経験と感覚、技術を生かして結果を出す

現在の事業内容について教えてください。

仕事の内容は前職から変わらず、商業施設や百貨店の季節装飾の制作、店舗やビル、公共施設のディスプレイ・サイン・内装など幅広く行っています。
木工や看板・サイン、アクリル加工、金物などの制作物全般にも取り組んでいますので、皆さんも街中のどこかで目にしたことがあるかもしれません。ほかにも模型や雪像などの立体造形の3D図面の作成から、制作加工に至るまで手がけており、毎年さっぽろ雪まつりでは直接ではありませんが、企業からの依頼で雪像制作のデザインや造形なども行っています。

具体的な制作の流れを教えてください。

プランナーから上がってきたデザインをもとに、平面や立体に仕上げていきます。案件にもよりますが、建築図面のように精密な設計図はなく、外寸だけのラフなものが送られてくることも少なくありません。必要な場合は、AdobeのIllustratorで原寸図を作成するところから始めます。細部まで再現するために、海外のサイトやYouTubeで情報収集することもあります。そのうえで材料や工程を検討し、作業を開始します。

会社の強みについて教えてください。

弊社の一番の強みは、制作に必要な工程をほとんど社内で完結できることです。多くの会社は木工や印刷などをそれぞれの専門業者に外注するケースが多いですが、デザイン、3Dデータ作成、印刷、木工、造形など、ほぼすべてを社内で行うことができます。受注時にラフな図面しかなくても、経験と感覚、技術を生かして形にできる点も評価していただけているようです。木工と異素材の造形を組み合わせたり、平面の印刷物と立体物を融合させたりなど技術の幅が広いので、組み合わせ次第でアイデアを形にできます。これこそ経験が生きる瞬間かなと思っています。

仕事で大切にしていることは何ですか?

基本は「誰かのためになること、誰かを喜ばせること」です。もちろん自分たちのアイデアも提案しますが、自分の主張よりもクライアントのイメージや要望を優先します。それによって、自分たちの中になかったアイデアに触れることもできて、面白さや広がりが生まれます。その結果、不特定多数の人の一瞬でもいいので、記憶に残ってくれたらうれしいです。
また、「まずはどんな依頼もすぐには断らず、カタチにすることを前提に考え続ける」という姿勢も大切にしています。たとえ資料が大まかにしかなくても、そこからクライアントのイメージや期待を超えるものを提供することを目指して取り組みます。

人材の採用には「やってみたい」という挑戦の気持ちを重視

独立当初は一人でのスタートだったそうですね。

最初は一人でしたが、前職での人脈でお仕事をいただきましたので、営業はほとんどしていません。会社の規模は現在よりも小さく、限られた範囲でしか仕事を受けられませんでしたが、現在の事務所を借りて作業環境が広がったことで、必要な機械を導入することができました。それにともない、大きな造作物も手がけられるようになり、受けられる仕事の幅も広がりました。おかげさまで少しずつ案件も増え、3年前に社員を3人採用し、今年は新たに6人採用しました。ほとんどの社員が未経験ですが、現在は9人体制できちんと稼働しています。

未経験者を採用するのはリスクがありませんか?

未経験とはいえ採用の際には、絵が描けたり、音楽が得意だったりと、何かしら一芸に秀でていたり得意なスキルを持つ人の「やってみたい」という気持ちを重視して採用しています。技術や経験は入社後に身につければよくて、むしろ挑戦する姿勢のほうが大事だと考えます。
もちろん最初は大変です。仕事を教える時間も必要ですし、当然失敗も多いです。でも、未経験だからこそ柔軟な発想ができたり、不要な固定観念に縛られないのも強みになります。今は特に若いスタッフが多いので、自由度が高い環境で挑戦させることが、結果として会社全体の成長につながると考えます。気が付けば入社3年目の社員たちも育ち、今では後輩の育成を担当するなど、自然と教育体制も整ってきました。

職場環境について教えてください。

若いスタッフが多いです。前職では徹夜が多かったり、給与面でも厳しい環境だったりしたので、自分が人を雇うようになったからにはその点は改善しようと考えていました。今でも忙しい時期はありますが、社員にはなるべくつらい思いをさせないよう、楽しく働いてもらいたいと思っています。

3Dモデリングとプリンターで新たな市場を開拓したい

新たな取り組みがあれば教えてください。

弊社はもともと手作業による模型・造形は得意としてきました。それに加え3Dデータ作成の分野を強化したことから単色の3Dプリンターと新たにフルカラーの3Dプリンターを導入したことで、表現の幅、時間とコストへの判断材料と考え方が広がりました。フルカラーのものに関しては、20cm角程度のカラーの立体物を高精細に出力でき、従来の平面表現だけでなく立体的な表現や高品質な装飾物の制作が可能になりました。もちろん、今までの手作業での技術はありますので、それらを組み合わせることによって、大きさも表現も多岐にわたって対応可能です。現在、売上への影響はまだ小さいものの、この先クライアントへの提案力は強化されると考えています。
市場としては、イベント用のフィギュア等制作用途は広がっていますが、北海道だけで見ると自分たちの関わっているディスプレイ・サイン業界において十分に開拓されていないようにみえるので、将来的には仕事の幅を広げる重要な設備として位置付けています。現在は十分に活用できていませんが、発注があればすぐに形にできる段階までにはきています。

今後の展望をお聞かせください。

いずれは総合的な制作会社として、代理店などを介さずに自分たちから直接クライアントに提案したり、意見を汲み取れる体制を作りたいです。制作だけでなくプロデュースまでできる人材を育てていきたいとも考えています。ただ、十分に準備が整っていない状態で営業はできませんので、私たちの仕事を多くの方に知っていただくためにも、今は個々のスキルを高めるなど地盤を固めている段階です。

最後に、クリエイターを目指す人へメッセージをお願いします。

何事も、まずやってみることが大事だと思います。経験や知識は後からついてきますので、まずは挑戦する気持ちを持つという姿勢が、クリエイティブな世界で自分の可能性を広げてくれると思います。そして、作りたいものを形にする楽しさを忘れないでほしいです。
また、一つの技術に特化するのもいいですが、それをほかの領域にも応用できる力をつけた方がよいと思っています。私たちは単に指示通りに作るだけでなく、プロとしての提案や改善案を出せることが求められています。
例えば絵を描く場合でも、その先の仕上がりを想像しながら手がけることが必要です。急には無理でも実際に現場を経験していくなかで、デザインの意図や相手の意図も汲み取れるようになりますので、さまざまな現場を経験して視野を広げてほしいです。
あとは、周りの信頼を大事にすることです。人とのつながりが仕事の幅を広げてくれますので、何事も感謝の気持ちを持って取り組んでいただきたいです。

取材日:2025年11月17日 ライター:八幡 智子

株式会社NDL

  • 代表者名:髙橋 哲
  • 設立年月:2022年8月
  • 資本金:200万円
  • 事業内容:商業施設・百貨店・ホテルの季節装飾、店舗・ビル・公共施設の内装などの制作施工、ディスプレイ・サイン、各種デザイン
  • 所在地:〒007-0852 北海道札幌市東区栄町678
  • お問い合わせ先:

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