WEB・モバイル2026.01.14

「地域を衰退させていないか?」。バイト生活からスタートした男がメタバースで描く地方創生の夢

新潟
株式会社リプロネクスト 代表取締役
Kenji Fujita
藤田 献児

東京での勤務を経て、新潟で27歳の時に起業した藤田 献児(ふじた けんじ)さん。VR(仮想現実)事業をスタートするも軌道に乗るまでには時間を要し、アルバイトを続けながら一人で奮闘する日々が続きました。転機となったのは、ふとした時に受注した折り込みチラシ。ある問いをきっかけに全国からの案件を獲得できる会社へと成長していきました。株式会社リプロネクストが現在見据えているのは、メタバース空間によって首都圏と地方の距離感・時間軸をなくす新しい価値観の創造です。

名前に込められた思いを起業で体現。新潟で起業したワケ

会社設立までの経緯を教えてください。

私は新潟の出身で、地元の高校を卒業後、東京都内の大学に進学しました。卒業後は東京の企業で5年間勤務し、社会人としての経験を積みました。その後、新潟にUターンし、2017年に当社を設立しました。

ご自分で起業したいという思いは昔からあったのですか?

実は中学生の頃から起業したいという思いがありました。私の両親は非常に仕事熱心な人間でしたが、私が生まれた時期と重なり、母が心を病んでしまいました。働くことが困難になってしまったその姿を見て、子どもながらに「もしかしたら私が母の人生を奪ってしまったのではないか」という感覚を覚えたのです。しかし、両親が名付けてくれた私の名前には、“社会に貢献する人になってほしい”という思いが込められていると後に聞き、その気持ちが少し救われたのを覚えています。それがきっかけで、自ら起業し、社会に貢献できる人間になろうと考えるようになりました。

新潟で起業された理由を教えてください。

実は東京で起業することも検討しましたが、迷いがありました。さまざまなビジネスが次々と生まれる東京で起業した場合、もし失敗しても「サラッと見過ごされてしまう」ような気がしたのです。自分が挑戦したことすら気づかれない。それならば地元の新潟で起業した方がインパクトを出せるのではないか、と考えたのが新潟で起業した一つ目の理由です。
もう一つは、新潟をはじめとした地方の社会問題を解決したかったからです。新潟は人口減少が進んでおり、人口が減少すると経済自体が縮小してしまいます。これを解消するためには、地方で起業し、首都圏などとの距離感を縮めるビジネスが良いと考えたのです。

「三万日」に刻んだ覚悟!27歳のゼロからのスタート

起業されたのはおいくつの時だったのですか?

私が27歳の時です。このタイミングで起業したのは、“社会に貢献したい”と思ったからです。
人生は「三万日」と言われているそうです。年齢で言えば、81歳から82歳がおおよその寿命だとされており、私が会社を設立したのが一万一日目にあたる日でした。私自身、最初の約一万日は社会に十分貢献できていなかったという自覚がありました。そこで、次の一万日は社会に貢献する期間だと決意したのです。

当時はVRを主軸とした事業だったと伺いました。もともとそういった知識や技術をお持ちだったのですか?

前職で多少触れたことがある程度で、専門的な知識も技術もまったくありませんでした。起業後も勉強を重ねていましたが、自社での開発が難しかったため、外部委託などの対応をしていました。

それでもVRにフォーカスした理由は?

起業理由の二つ目として挙げた「距離感を縮めるビジネス」を考えた時、利用者の距離や時間を飛び越える必要があると考えたからです。実際にその場所を訪れることなく、自分のタイミングで知りたいことや見たいことにアクセスできるVRを活用することで、地方にいても首都圏と同等の情報を得られる。そう考えたからです。

「このチラシ、意味ある?」疑問からつかんだ転機

実際新潟で起業してやりづらさを感じた瞬間はありましたか?

やりづらさは感じませんでした。しかし、事業として確立するまでには時間を要しました。実際、私はホテルで週5日のアルバイトを1年間ほど続けていましたし、2年目までは会社のスタッフは私1人でした。

転機となった出来事を教えてください。

ある時、新聞の折り込みチラシの制作依頼を受けました。こう言ってはなんですが、その折り込みチラシは予算を消化するだけで、特に効果を求めているものではありませんでした。生活のために定期的にその仕事を受けていましたが、自分が本当に良いと思えるものを作れていないと感じ、ある時「これに何の意味があるのだろう?」「これで本当に地域が良くなるのか?」と、仕事の意味を問い直すようになりました。社会に貢献できていないし、新潟の経済を衰退させている。これではいけないと考え、全国で仕事を取ってこられる会社になろうと、考え方を切り替えました。

首都圏の企業とのつながりはお持ちだったのですか?

いえ、ありませんでした。そこで自社のホームページには特に力を入れました。Web集客をいかに増やすか、SEO(検索エンジン最適化)やSEM(検索エンジンマーケティング)を徹底的に行い、全国から仕事を受注できる環境を整えました。その結果、新潟県内の仕事が2割、全国からの仕事が8割という成果につながっています。

メタバース「Roomiq」とAI「NOIM」。未来を創る主力サービス

現在提供しているサービスの内容を教えてください。

提供しているサービスは主に三つです。一つ目は、2025年7月にNTTグループから譲渡していただいたメタバースプラットフォーム「Roomiq(ルーミック)」です。企業や個人などが仮想空間を活用してコミュニケーション、研修、イベントなどを実施できるもので、現在では26万空間という国内最大級の広大なプラットフォームを誇っています。私たちはクライアントからの依頼に合わせて、空間づくりをお手伝いしています。
二つ目は、AIによる対話型アバターを使って、企業や組織の情報伝達・相談業務を自動化する次世代型コミュニケーションAIエージェント「NOIM(ノイム)」です。
そして三つ目に、既存のVRやARの開発を行っています。

Roomiqについて、さらに詳しく教えてください。

Roomiqは、メタバース空間で自分の分身であるアバターを操作し、ほかのユーザーとコミュニケーションを取ったり、知りたい情報を取得したりできるサービスです。展示会や会社説明会など、時間や場所にとらわれずに参加でき、企業の魅力や雰囲気をオンラインでもつかみやすい点が大きな特徴です。
また、弊社のRoomiqは専用アプリなどを必要とせず、パソコンやスマートフォンのブラウザから手軽に参加できるのが特徴です。そのため、利用者の年齢層も非常に幅広く、小学生から70代の方まで、多くの方にご利用いただいております。

どういった企業からの案件が多いですか?

一般企業から全国の自治体まで、実に多岐にわたります。最近では、引きこもりの方を支援するためのイベントや相談会をRoomiq上で実施しました。

それぞれの空間を作るうえで心がけていることは?

それぞれの依頼目的に沿って空間を構築していくことです。例えば、先ほどの引きこもりの方対象の空間を制作する際には、安心感を最も重要視しました。居心地の良い空間を作るために観葉植物を設置するなど、些細なことにも配慮し、細部にいたるまで神経を張り巡らせます。空間の大小にもよるため一概には言えませんが、平均で2〜3カ月、長いものでは半年ほどの時間をかけて空間づくりを行います。

新潟発、世界へ!夢は「選択肢を無限に広げる」こと

現在御社には何人のスタッフがいるのですか?

現在、25人のスタッフが在籍しています(2025年12月現在)。そのうち17人がフルタイム勤務のスタッフです。エンジニアやデザイナーなどの制作関連部門、営業部門、そしてマーケティングや経理などのバックオフィス部門と、大きく三つの部門に分かれています。

地元・新潟に貢献したいという想いは創業時と比べて強くなりましたか?

強まりました。目下は、新潟本社を株式上場させることが新潟にとって最大の貢献になると考えており、その実現に向けて努力しています。そして、全国、さらには海外で勝負できるような会社が新潟にあることを、多くの方に知っていただくのが第一の目標です。

将来的には会社をどのように発展させていきたいと考えていますか?

人々の選択肢を無限に広げる、そうしたお手伝いをしたいと考えています。現在の新潟の高校生は、進学のためにオープンキャンパスに参加しようとしても、金銭的、距離的な問題から3校、4校が限度だと言われています。そのため、進学先は新潟県内や東京に限定されてしまうことが多いようです。しかし、メタバースを活用すれば、この選択肢を大きく広げることができます。住宅の購入や転職活動においても同様です。今後、さらに多様な場面で、人々が納得のいく決断をできるよう支援していきたいと考えています。

取材日:2025年11月7日 ライター:コジマ タケヒロ

株式会社リプロネクスト

  • 代表者名:藤田 献児
  • 設立年月:2017年2月
  • 事業内容:AIアバター事業/メタバース事業/XR事業
  • 所在地:〒950-2013 新潟県新潟市西区小針が丘2-54 2F
  • URL:https://lipronext.com/
  • お問い合わせ先:050-1724-4946

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