小学生のころに抱いていたゲーム作りの夢を40歳で実現。ゲームは「世界を広げる道具」

福岡
合同会社あそびるど 代表社員
Kouji Murakami
村上 浩治

35歳で設計事務所を開き、40歳でゲーム制作に挑んだ合同会社あそびるどの代表、村上 浩治(むらかみ こうじ)さん。独学で作った作品が海外でヒットし、地方からでも世界に届くクリエイションの可能性を示しました。現在は福岡を拠点に、ゲームを活用した社会課題の解決や、熊本県天草市と連携したクリエイターの拠点作りにも取り組んでいます。「ゲームの可能性をもっと広く開きたい」。その背景にある挑戦の軌跡と未来を伺います。

建築からゲームへ。胸にしまった小学生の夢が40歳で蘇る、自分の「キンピカ」

あそびるどを設立する前のキャリアについて教えてください。

大学時代にプロダクトデザインを学び、工業デザイン関係への就職を希望していましたが、就職氷河期で願いは叶わず、道路や橋、公園資材などの公共物を製作する会社に入社しました。
その後、建築士の資格を取得し、住宅メーカーに入りました。退職後35歳で設計事務所を設立し、仕事自体は順調でした。

そこから、ゲーム制作に挑戦したきっかけを教えてください。

40歳を目前にして「このまま建築だけで人生を終えていいのか」と考えるようになりました。漫画「宇宙兄弟」に出てくる「あなたのキンピカは何か」という言葉に触れたとき、胸の奥にしまっていた思いが一気に表に出てきました。本当にやりたかったのは、ゲームを作ることだと気づいたのです。

胸の奥にしまっていた思いとは?

小学校低学年のころにファミコンが発売されました。ゲームをしながら、「自分だったらこんなゲームを作りたい」という想像をしていました。でも大学に入るころには、「ゲーム開発なんて夢の話だ」と自然に思い込んでしまって、職業の選択肢からは外してしまっていました。

別業界出身だからこそ、ゲームの常識にとらわれない発想

その後、どのような経緯で建築業界からゲーム業界へと移ったのでしょうか?

最初の3年ほどは設計事務所をしながら、趣味でゲーム開発を始めました。4作目が思いのほかヒットし、特に中国を中心に50万ダウンロードを記録するなどスマッシュヒット。その後もさまざまなジャンルに挑戦し、合計で100万ダウンロードに達しました。
すると徐々に設計事務所での売上よりも収益があがるようになりました。そしてゲームに本腰を入れる決意をし、2020年に合同会社あそびるどを設立しました。

会社立ち上げ時に大変だったことはありますか?

もちろんあります。私は一般的なゲーム開発会社の方々と違って、スクールに行ったこともなければプログラミングもできません。すべて独学なんです。
企画して構想を練ることはできますが、プログラミングは外注するしかありません。そのため、自分の構想をプログラマーに正確に伝えるということにとても苦労しました。

なるほど。逆に独学だからこその強みはありましたか?

ゲームの常識にとらわれないということはあります。頭の中の構想が実現できるかどうかをゲームの常識で測れないので、ゲーム業界の人にとっては突拍子もない発想が生まれるのではないかと思っています。

自由に作るインディーゲーム。ゲーミフィケーションにも注目

村上さんが制作されているインディーゲームとは、何ですか?

シンプルにいうと、大きな会社が作ったビッグタイトルではないゲームです。個人で作ったり、数人のサークルで作ったり、自分が作りたいように自由に作るゲームのことをいいます。最近話題の映画、『8番出口』の原作はインディーゲームです。世界的に有名な「マインクラフト」ももともとは1人の方が作り始めたものです。1本のゲームが世界的にヒットして、何十億になることもあります。

代表作を教えてください。

一番売れたのはやはりダークブラッドですね。これはスマホでRPGを遊ぶために最適化したゲームです。日本はもちろん海外の人にも楽しんでもらいたいという思いもあり、グローバルでも通用する世界観を作れたと自負しています。本当の代表作は、これから発表します(笑)。実はまだまだ発表しきれていない構想が頭の中にたくさんあります。

最近作られた中でヒットしたゲームはどのようなものがありますか?

昨年の1月に地元福岡の「ゴリパラ見聞録」というテレビ番組のゲーム版を作らせてもらいました。App storeとGoogle Playの有料パズル部門で1位を獲得しました。
このようなゲームを本来の目的としないサービスにゲーム要素を応用することを「ゲーミフィケーション」といいます。ゲームを通じて、番組のファンを増やしたり、知識を伝えたりするようなさまざまな使い方ができると、最近注目されています。

ゲームを「学びと体験の装置」として捉える視点

村上さんにとって、ゲームの本質的な価値とは何でしょうか?

娯楽であることはもちろんですが、体験を通じて理解を深められる点に大きな価値があると考えています。
例えば、外国人が日本のルールや文化を学ぶ場面、認知症の特徴を疑似体験する場面など、文字や説明だけでは伝わりにくいことも、ゲームなら楽しみながら自分ごととして受け止めやすくなります。

社会課題とゲームはどのようにつながると考えていますか?

戦争の悲惨さや社会問題も、ゲームであれば「その場にいる感覚」で学ぶことができます。知識として知るだけでなく、感情をともなって理解できる点が強みです。ゲームは学びの入口になりうる存在だと感じています。

ゲームが学びだなんて一昔前の時代だと考えられませんね。

かつてはゲーム=遊びとされていて、私も「またゲームばっかりして!」とさんざん言われてきましたが、最近は親世代の意識も変わりゲーム系のイベントに出ると子どもよりも親の方が熱心なこともあります。
ゲーム制作ができるプラットフォーム「ロブロックス」は世界中の子どもたちが夢中になっている、遊びながらゲーム作りが学べる現代的なサービスです。

地方から広がるインディーゲームと地域創生の未来

福岡インディーゲーム協会を立ち上げた理由を教えてください。

独立当初、ゲーム業界に知り合いがほとんどおらず、孤独を感じていました。そこで「集まれる場所を作ろう」と考え、2022年に福岡インディーゲーム協会を立ち上げました。

協会と天草市でゲームに関する取り組みをされていると伺いました。

少人数で自由に作るインディーゲームは、地方との相性が良いと感じています。天草は空き家が増えている一方、自然や景観に大きな魅力があります。空き家をリノベーションし、ゲームクリエイターが住みながら制作できる環境を整えることで、新しい人の流れを生み出したいと考えています。建築とゲーム、両方の経験を生かせる挑戦でもあります。

その他、福岡インディーゲーム協会の具体的な取り組みを教えてください。

福岡インディーゲーム協会ではゲーム展示イベントや勉強会・交流会など、さまざまなイベントを行っています。直近では2026年6月13日、14日に天神のソラリアステージゼファで「九州ゲームアイランド」というイベントを開催予定です。

今後、ゲームを通じて実現したい未来像を教えてください。

ゲームは東京や大阪だけで作るものではありません。ネット環境があれば、地方からでも世界に発信できます。地域の物語や文化をゲームにし、日本の魅力を伝えていきたいです。ゲームは誰でも挑戦できる表現手段ですので、多くの人に「世界を広げる道具」として使ってほしいと思います。

取材日:2025年12月3日 ライター:田口 有香
画像提供:合同会社あそびるど

合同会社あそびるど

  • 代表者名:村上 浩治
  • 設立年月:2020年7月
  • 資本金:50万円
  • 事業内容:デジタル、アナログゲーム制作、メタバース制作・運営、焚き火場およびキャンプ場開発
  • 所在地:〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前1丁目23番2号 ParkFront 博多駅前1丁目5F-B
  • URL:https://www.asobuild.net/
  • お問い合わせ先:

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