海外資本だからこそ業界に新風を。希少レンズと豊富な経験で機材レンタル事業をけん引

東京
デイペイ株式会社 代表取締役
Hiroshi Shiobe
塩部 宏

テレビ、映画、CMなど、映像制作現場に機材レンタルを行う東京のデイペイ株式会社。韓国発の企業である同社にとって、台湾に続き、アジアで2番目の拠点となります。なお、韓国には、販売会社とレンタル会社をあわせて合計5店舗あります。日本支社の代表取締役を務める塩部 宏(しおべ・ひろし)さんは同業を手がける企業で約34年間のキャリアを積んだ後、現在のポジションに就きました。キャリアの集大成ともいえる時期に新たな挑戦をした理由や、映像業界の機材レンタル業務の展望などについて伺いました。

業界ナンバーワン、韓国企業のオーナーの熱量と斬新な発想に惹かれ転職を決意

これまでのキャリアを教えてください。

34年ほど、いまと同じ業種の会社に在籍していました。入社当時は社員が4〜5人ほどで、私が一番の若手だったため、さまざまな経験をさせてもらいました。徐々に責任のある仕事が増え、気づけば代表の右腕に近い立場となり、最終的には営業本部長として、会社のほとんどのことを任せてもらえるまでになっていました。

現在の会社「デイペイ株式会社」に転職された背景をお聞かせください。

前の会社で退職するまでの十数年間、幅広い業務のサポートやバックアップのようなポジションの仕事がメインでどこかマンネリを感じていました。自分が海外の同業者に移るとは思ってもいませんでしたが、声をかけてくれた「デイペイ」のオーナーがとてもエネルギッシュで、このチャンスを逃すべきではないと直感しました。

韓国の映像業界やデイペイについてどのようなイメージをお持ちでしたか?

韓国の映像業界の勢いは耳にしていました。日本では、「デイペイ」のようなハイエンド機材を扱うレンタル会社が12〜13社程度あります。一方、韓国は日本の半分ほどの人口にもかかわらず同業者の数は倍ほど。一社あたりの売上は日本より少ないのが現状です。そんな中で、デイペイの韓国本社は短期間で急成長し、業界ナンバーワンの地位を築いていました。さらに台湾にも進出して、すでに現地で売上がトップになっていると聞き、日本のレンタル業界では感じられないエネルギッシュな雰囲気や、固定概念に縛られず事業を拡大するパワーに魅力を感じました。

日本での業務の展開を一任。経験を生かし、最短で結果を出す

現在の業務内容について教えてください。

撮影機材のレンタル事業です。イベントや家庭用・個人向けの撮影機材とは違い、テレビ放送や映画で使われる「ハイエンド機材」を専門に扱っています。日本では会社ごとに注力する分野が異なり、シネマに強い、テレビに強いなどといった特色があります。テレビ用のカメラと映画用のシネマカメラは、付属品なども含めて全く異なる機材です。我が社では映画機材をはじめ、NetflixやAmazon Prime Video、Disney+の配信系ドラマなどに使用されるテレビドラマ向けの機材を中心にレンタル事業をスタートさせました。

日本での事業開始にあたり、親会社との連携はスムーズに進みましたか?

オーナーは日本の市場についてよく研究しており、事業規模や特性を深く理解していました。「日本のやり方で、塩部さんに全面的に任せます」と言ってくれたんです。
長期的には多様なジャンルの事業も視野に入れていますが、まずは私の得意分野だったこともあり、ネット配信系、映画、テレビドラマ向けの事業に着手しました。短期間でこんなにも支援してくれるのだから、我々も最短で結果を出したいというエネルギーになっています。

日本にはある程度の数の企業が存在する中、新規参入はご苦労があったと思いますが、いかがでしょうか。

確かに新たに会社を立ち上げるのは、非常に難しいです。日本の業界では、機材を安く貸し出したり、24時間営業などのサービス面で差別化を図ったり、会社ごとにさまざまな試みをしていますが、どこも人件費などの負担が大きく、成功しているとは言い難い状況だからです。
そんな中で我が社は、職人気質のあるカメラマンやプロデューサーなどクライアントのみなさんの要求に応えるべく、スタッフ全員が深い知識とこれまで培ったキャリアを生かして対応しています。

デジタル業界でもアナログな対応が鍵。調整やコミュニケーションでつながる

業界ならではの大変なことはありますか?

機材の数には限りがあるため、常にやりくりに頭を悩ませています。例えば、1,500万円のカメラを2台しか保有していない状況で、あるドラマの撮影で2台とも貸し出しているとします。そこに別のお客様から同じカメラを使いたいという依頼が来ても、お断りするしかありません。その仕事はまるごと他社に流れてしまいます。また、あるドラマのクランクアップが2月末で、別のドラマの撮影開始が2月後半から、という場合、わずか数日間スケジュールが重なるだけで機材をレンタルできないこともあります。
大切なのは、「機材がないからできません」で終わらせるのではなく、どうすれば成立させられるかを考えることです。「カメラとレンズは先に納品しますので、残りの機材は1週間待っていただけませんか?」といった調整を行うこともあります。コミュニケーションを通じて信頼関係を築き、「このレンズを試しに使ってみませんか?」と新しい提案をするなど、少しずつ次の仕事につなげていくことができます。アナログな関係性の構築が、この仕事のコツかもしれません。

ユニークな機材をそろえ、日本の配信ビジネスをけん引する存在に

御社の強みを教えてください。

日本では我々の会社でしか扱っていないユニークなレンズを複数保有しています。例えば、イギリスのレンズメーカーTrue Lens Services(TLS)という会社が製造しているオールドレンズです。オールドレンズとは、過去に製造され、すでに生産が終わっているカメラ用レンズのことで非常に希少なものです。独特の柔らかな描写が評価され、今も映像制作の現場で求められています。しかし、こうしたレンズは、そのままでは現在の撮影機材では使いづらいため、外装や構造を作り直し、現代のカメラに対応させる必要があります。そうして作られたレンズは唯一無二の価値を持ち、単玉レンズとしては一本400万円以上するものもあります。それを10本セットで貸し出す、といったことが可能なのです。
こうしたユニークな機材のラインナップは、韓国のオーナーの方針です。日本では自社でこれほどのコレクションを揃えるのは困難だと諦めていました。しかし、韓国の本社にはTLSのレンズがいくつもあり、それを使うことができます。映画『ゴッドファーザー』の撮影で使われたような伝説的なレンズをリハウジング(改造)したものなど、特殊なレンズを多数揃えていることが、我々の最大の強みです。

配信ビジネスの活況により、日本の作品も世界で見られる時代になりました。ご自身たちが携わったものが世界で評価される状況を、どのように受け止めていますか?

我々にとっては非常に幸運な状況です。Netflixのようなグローバルな配信プラットフォームが登場して、新しいチャンスが生まれています。今のところ韓国が先行し、これから日本にも波が本格的に来ると言われているタイミングで、その受け皿となる環境を準備できたのは大きなアドバンテージだと感じています。

海外グループ会社との連携と五反田TOC発のムーブメント

25年11月に拠点を赤坂から五反田に移したそうですね。

これまでは狭い準備室のようなところで作業をしていて、移転先を探しているときに、TOC(東京卸売センター)ビルがテナントを募集しているという話を聞いたんです。ここは映像業界には必須の駐車場が豊富で、「TOC」という名前は業界内での知名度も高く、場所を説明しやすいという利点もあります。総合的に考えて、ここしかないと直感しました。また、「TOC」に移ってくる映像関連の企業も増えているので、五反田から新しいムーブメントが起こるのではないかと期待しています。

今後の業務を見据え、取り組んでいることはありますか?

現在のメンバーは、この道何十年というベテランばかりで、業界に広い人脈を持っているため、その強みを生かしまずはハイエンド機材を求める質の高いお客様との関係を深めていきたいです。26年には15人ほどスタッフを増員し、業務量が多いCM案件も獲得できる体制を整えたいと考えています。

韓国の親会社と提携しているからこそ実現できること、今後リーチしたい領域はありますか?

まだ構想段階ですが、韓国や台湾のグループ会社との連携は大きな可能性を秘めていると感じています。すでにグループチャットを通じて、機材が足りない時に互いに融通し合うといった協力体制ができています。今後は、韓国や台湾とオンラインでミーティングを行い、より密な情報交換をしていきたいです。 また、最近はスタッフが全員韓国人の取引先も増えています。グローバルな案件に対応できる体制は、我々の強みです。海外の配信系ドラマなどの案件をさらに増やしていきたいですね。

取材日:2025年12月22日 ライター:田中 あおい

デイペイ 株式会社

  • 代表者名:塩部 宏
  • 設立年月:2024年9月
  • 資本金:3,000万円
  • 事業内容:撮影機材レンタル、機材コーディネート
  • 所在地:〒141-0031 東京都品川区西五反田7-22-17 TOCビル11階
  • URL:https://www.daypay.jp/
  • お問い合わせ先:03-6435-5678

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