絶対に“オモシロイモノ”しか作らない。国内外アワード250以上受賞の福岡発クリエイター集団
福岡を拠点に映画やTVCM、ゲーム、体験型コンテンツなどの映像を制作している空気株式会社。国内外で250以上のアワードを受賞し、2025年開催の大阪・関西万博でも映像コンテンツを制作した同社の根底には、「絶対にオモシロイモノしか作らない」という揺るぎないポリシーがあります。「“オモシロイ”とは、心が動くこと」と語る代表取締役社長の木綿 達史(もめん たつし)さんにお話を伺いました。
学生時代に映像制作を学び、フリーランスへ。青天の霹靂で会社を設立

木綿さんがクリエイティブの世界に足を踏み入れた原点を教えてください。
高校2年生までは学校の先生になりたいと思っていましたが、当時から映画が好きだったこともあり、福岡県にある九州芸術工科大学に進学しました。進学してからはCGやデザインが楽しくて、ひたすら映像制作やデザインをしていました。
そこからどういった経緯で会社を設立することになったのでしょうか?
弊社の現取締役会長の江口カンとは大学が同じで、僕が一方的に知っているほど目立っている存在でした。社会人になり、ひょんなことから江口と再会。フリーランスになりたてだった僕は事業運営のアドバイスを求めると「甘えるな」と言われ、撃沈しました。しかしその2カ月後に「会社やるけどやらん?」と声をかけられました(笑)。驚きましたね。
それが1997年に共同設立された空気株式会社の前身「有限会社空気モーショングラフィックス」です。2007年に「空気株式会社(KOO-KI)」へ社名を変更し、2014年からは僕が代表取締役社長に就任しました。設立当時は2年くらいで終わると思っていましたが、30年近く続いていますね。
立ち上げ当初の様子を教えてください。
最初はひどかったです。やることがなさすぎて、床が斜めになっている間借りの事務所の扉を、みんなでピンク色に塗って過ごした日もありました(笑)。
設立2年目ぐらいから、ミュージックビデオを放送する音楽番組から声がかかるようになり、仕事が入ってくるようになりました。同時期にCMも手がけるようになり、だんだん名前が売れてきて、東京からもお仕事をいただけるようになりました。
5年目になる頃には、東京での仕事比率も大きく占めていました。クリエイティブの世界だと、あまり場所は関係ないと感じましたね。当時は「アナログからデジタル」へ本格的に移行していく過渡期で、主流になりつつあったパソコンでの映像制作は注目してもらえたのだと思います。
万博でも展示。制作するうえで大切なのは「心が動くこと」
現在の事業内容について教えてください。
僕たちは映像を軸として、おもしろいものを作る会社です。ディレクターの個性やスタイルを生かして、映画やドラマ、TVCM、ゲーム、アプリ、体験型コンテンツなどを制作しています。
最近特に伸びているのは、体験型のコンテンツです。科学館や動物園、2025年大阪・関西万博でも関西パビリオン「HYOGO ミライバス」や 「スシロー未来型万博店の外観&エントランスサイネージ」など4つのコンテンツを制作させていただきました。
おかげさまで2000年を皮切りに国内外のアワードにおいて、これまで250以上の賞を受賞することができました。
ほかの映像制作会社と比べて、貴社独自の映像制作へのこだわりを教えてください。
「絶対にオモシロイモノしか作らない」というポリシーを掲げて、それに沿って作っています。“オモシロイ”っていう言葉は、幅広く捉えられると思いますが、僕は「心が動くこと」だと思っています。かっこいいことも、かわいいことも、笑えることも、どれも“オモシロイ”ことなんです。
それぞれ“オモシロイ”の基準が人によって異なると思いますが、どのような基準を設けているのでしょうか?
自分がおもしろいと思うだけではダメですね。嫌々作って良いものができた試しがないので、起点は自分が「やりたい」と思えることにして、自分が楽しむことは前提条件。そのうえで、“見た人が喜ぶかどうか”が基準です。それらのバランスをとっていくことが、人の心に届く“オモシロイ”につながっていきます。
作品づくりのアイデアはどのような時に思いつくことが多いですか?
アイデアが出てくるタイミングはバラバラですね。話していたらふとアイデアが湧いてきたり、全然違うことを考えている時に出てきたり。Bの案件を考えている時にAの案件のアイデアを思いつく、というようなひらめきもあります。
あとは距離を置いた方が良い時もありますね。
KOO-KIの企業Podcast「ケイシャのしゃべり場」。映像制作会社で働くスタッフ達が日々感じた「オモロイ」をゆる〜く雑談しています。2025年で5年目を迎え「コンテンツマーケティング・グランプリ2024」では優秀賞を受賞!
社内メンバーは「ライバルであり仲間」
2025年からは大阪でBar SORA-KEをオープン。
依頼があった時に担当クリエイターはどのように決めていますか?
依頼案件に合わせて、企画を出し合う場合もありますし、決め打ちで担当を決める場合もあります。今、スタッフの人数は35人いて、作品を作っている人だけでなく、作ることに関わる人全員がクリエイターという認識です。クリエイターそれぞれスタイルも得意分野も異なりますが、“オモシロイモノ”を作る軸は共通で持っています。
担当はフレキシブルに決めているんですね。
はい、そうですね。クリエイティブなことに個人で向き合っていくと必ず調子の良し悪しの波があります。それを支え合えるのがチームの良さですね。メンバーはライバルであり仲間だと思っています。切磋琢磨して個人スキルを発揮し、チームでも戦えるようなメンバーです。
リラックスした雰囲気づくりによって個人の力が最大限発揮できるよう、マネジメントをしています。
福岡から“オモシロイモノ”を作り続ける。AIを仕事のパートナーに

今後どのような会社にしたいとお考えですか?
空気株式会社としての未来は、人をどんどん増やして規模を大きくすることではなく、“何をしたいか”を重視していきます。
僕は経営者として、みんなの意見に耳を傾けることを意識しています。それぞれが自分の意見を堂々と持って仕事に向き合ってほしいと思っているからです。
個人的なミッションは、KOO-KIの社風をみんなに引き継いでいくこと。「“オモシロイモノ”を作る」という熱意あふれるこの会社が存続し続けてほしいです。
たくさんの賞も受賞され、会社規模も拡大していますが、福岡を拠点にし続けている理由はなんでしょうか?
なにより福岡がとても好きだからです。仕事の数自体は東京の方が多いので、僕は行ったり来たりしていますが福岡に戻ってきた時はリラックスできますね。人をもてなしたり楽しませたりすることを好む人が多いのか、福岡では気を張り続けなくてもよい感じがします。
今でこそリモートワークもできるようになったので、東京でも大阪でもあまり差はありません。今後は地元・九州の仕事にももっと取り組んでいきたいですね。
今後やってみたい表現や案件について教えてください。
個人的にはAIを使って、どこまで映像を作れるか試してみたいです。会社全体としても、AIを取り入れることはポジティブに考えています。「AIが出てきたから仕事がなくなる」という声もありますが、僕はそうは思っていません。「僕たちは何のために映像を作るのか」を常々考えているからです。むしろ何をやらなきゃいけないか明確なので、AI技術も上手に使って良いパートナーになると思います。AIが出してきたものの良し悪しを、ディレクターとしてしっかりと判断をしながら、より“オモシロイ”作品を提供し続けていきたいです。
取材日:2025年7月18日 ライター:藤木 彩乃
空気株式会社 KOO-KI Co.,Ltd.
- 代表者名:木綿 達史
- 設立年月:1997年12月
- 資本金:1,475万円
- 事業内容:TVCM・WebCM・ゲームオープニングなどの映像制作事業、企画制作事業、アニメ・映画・アプリなどのオリジナルコンテンツ事業
- 所在地:〒810-0023 福岡県福岡市中央区警固1-15-6 KH22ビル5F
- URL:https://koo-ki.co.jp
- お問い合わせ先:092-713-4815(代表)










