WEB・モバイル2024.03.19

デザインの力で「バズらせて発展」させる。コンサルとの掛け合わせでブランド価値を創造

札幌
株式会社ズック 代表取締役
Keiichi Kameyama
亀山 圭一

広告やWeb、グラフィックデザインのほか、ブランドコンサルティングも手がける札幌の株式会社ズック。学生時代からデザインを学び、現在にいたるまで4社のデザイン会社を経て、2006年に独立した代表取締役・亀山 圭一(かめやま けいいち)さん。「これからの時代、デザイナーに求められるのは技術だけではない」と語る亀山さんの真意とは。これまでの経験や現在の仕事、展望についてお話を伺いました。

学生時代からデザインを勉強。一度は離れるも自分にはデザインしかないと再挑戦

はじめからデザイン業界で働こうと考えていらっしゃったのですか?

高専でデザインを専攻し、卒業後は札幌市内にあるデザイン会社、株式会社イザに就職し、2年半ほど在籍しました。当時のデザインや広告の業界は、長時間労働が当たり前の時代でして、長く働き続けることに限界を感じて退職しました。そのあと、大日本印刷株式会社に入社し、印刷オペレーターを約1年間務めました。
ですが印刷業界も同じ状況で、忙しさは変わりませんでした。日勤と夜勤のくり返しで体調を崩したのもあったのですが、クリエイティブから離れたことで、自分が本当にやりたいのはデザインなんだと気がついたんです。「今度こそ本腰を入れてデザイナーをやろう」「デザインの仕事を一生しよう」と心に決めたんです。

再びデザイナーになるために選んだ会社の条件は?

大日本印刷にいた頃、社員が大勢いて自分は会社のパーツの一つでしかないのではないか、という気持ちがずっとありました。次に働く場所はある程度裁量をもって仕事ができる環境がいいと思い、社長含め数人という少数精鋭でデザイン事業を展開している株式会社スタジオジャムを選びました。
社長には経営者のあり方や経営のノウハウなど、デザイン以外のこともたくさん学ばせてもらいました。今のズックを創業できたのはここで得た多くの知見がベースになっていますね。スタジオジャムには3年ほどお世話になりました。

独立までに4社を経験されていますが、転職に抵抗はなかったですか?

転職というより転社の感覚ですね。トライ&エラーをくり返しながらデザイン力や多様な知識をスキルアップできたと思っています。
そのあとはデザインの領域をもっと広げたいという思いでスタジオジャムを去り、札幌のデザイン業界では定評のあった有限会社アリカデザインに転職しました。受注数も多く、体力的にも精神的にも相当きつかったですが、ここで得た経験や知見は自分をいろいろな意味でタフにしてくれました。やり遂げる自信がつき、メンタルも強くなった。起業する度胸がついたのだと思います。

がむしゃらに仕事をこなした、独立からの3年間。「ズック」の由来とは

ズックを設立したきっかけを教えてください。

アリカデザインで過ごした1年4カ月は、デザイン力、企画力、折衝力など、ありとあらゆる経験と知識を必然的に叩き込まれた濃密な期間でした。高専を卒業してから約7年間、4社を渡り歩き多くのことを学ばせてもらいました。
ちょうど30歳になる年、キャリアアップするなら今だと思い、ビジネスパートナーと2人で独立を決めました。社名のズックは「靴」からきています。2人の力で歩み始めることから1足の対になっている「靴=ズック」とつけたんです。

独立後、どのように仕事を獲得したのですか?

はじめは独立のご祝儀的な意味合いで知り合いの写真家や広告代理店から仕事をいただき、そこから少しずつ順調に受注数を伸ばしていきました。とにかくいただいたオーダーに誠心誠意応え、次につながるよう、がむしゃらに働きましたね。
独立前も多忙に疲弊した期間がありましたが、独立してからも3年くらいは同じように寝る間も惜しんで働いていました。

デザインの力で企業の課題解決、ブランディング&コンサルティングの会社へ

そのあと法人化されていますが、どのような会社にしようと考えましたか?

ブランディングデザインを武器にコンサルティングができる会社にしようと思いました。ただ単にクライアントから発注されたデザインを受けるだけでなく、課題を抱えている企業をデザインの力でバズらせて発展させることを使命としています。

ブランディングデザインをやっていこうと思ったきっかけはあったのでしょうか?

スタジオジャム時代、仕事を通じて知り合った広告代理店のクリエイティブディレクターの方が、菓子メーカーのリブランディングを請負っていたんです。創業75年の歴史ある銘菓ブランドで、今でこそ北海道を代表する人気銘菓ブランドですが、当時はまだそれほどの人気はありませんでした。
その人が手がけるブランディングによって、商品がどんどん有名になっていき、企業が発展していく様子がとても新鮮で感動的でした。自分も起業したらこういう仕事をしていきたいとシンパシーを感じたんです。

現在の事業内容について具体的に教えてください。

各種デザインはもちろんですが、商品開発にも関わっていくマーケティングやコンサルティングの領域も広げて、ブランディングデザインをメインに進めています。現在は健康食品のブランドコンサルティングに携わっていて、今年中には道外市場も視野に入れて具現化していきます。
クライアントと消費者の両方の要望や反応を分析するなかで、課題解決するにはブランディングデザインの仕事が適していると思いました。クライアントと消費者の二つの視点で考えて形にすることは、コンサルティングにも生かせる大きな武器だと捉えています。

ブランディングもできるデザイン会社ということですね?

DTPの普及で写植(写真植字)の職業が衰退したように、デザイナー含めクリエイティブ業界だって技術をAIに取って代わられる時代がくるかもしれません。デザイナーがデザインだけをやっていては衰退してしまうと思うんです。
ズックは、発注されたデザインに対して、そのまま要望に応えるのではなく、本当にその制作物が必要なのか?というところから提案します。デザインは手段であり、売り方、価格帯、認知度アップの手法など、商品戦略から一緒に考え企業の課題を解決貢献します。

「廃業に追い込まれる経営者を絶対出してはならない」。ある後悔から生まれた使命感

成功・失敗問わず、印象に残っているプロジェクトはございますか?

失敗というか責任の一端を感じていることがあります。起業して7年が経った頃、函館の古い教会をリノベーションした飲食店のスタートアップに参画したことがありました。格式高い教会の雰囲気を残したフレンチレストランで、自分はグラフィック部分やお店のロゴ、メニュー表、伝票、DM、ニュースレター、Webサイト制作などのデザイン面を手がけました。
オーナーもシェフも多くのお客さんが見込めると予想してオープンしたのですが、蓋を開けてみれば、観光客どころか地元民さえも足を運んでくれません。あまりに洗練された空間で敷居の高さを感じさせてしまったのが敗因だったと思います。結局3年後にお店は潰れてしまいました。
自分はプロジェクトの途中からの参加で、すでにお店のコンセプトや内装が決定したあとでした。「もっと早い段階から関われていれば」ととても悔やみました。
その一件があってから、自分の関わった仕事で廃業に追い込まれる経営者を絶対出してはならないという大きな使命感が生まれました。

大きな自信につながった、コンペで勝ち取ったよつ葉のロゴマーク

たくさんの受賞歴がありますが、一番印象的な受賞は?

デザイナーやアートディレクターなどのクリエイターで構成された会員組織・札幌ADCによる「札幌ADCコンペティション&アワード2010」で受賞した、よつ葉乳業のロゴですね。
お題は、これまでのマークのリデザインであり、エレメントや雰囲気を持ち合わせたデザインであること。どこがよつ葉らしいのかを考え、何案も提出した結果、最終的に現在のロゴに決定していただきました。
よつ葉のロゴのデザインが採用された功績は、ズックの代名詞となり、大きな自信につながりました。よつ葉が本気でリブランディングを考え、ズックのデザインを選んでくれたことが本当にうれしかったです。

札幌を拠点としつつ道外・海外にも進出していける会社へ。来るAI時代、「人間だけにできる技」大切に

展望などをお教えください。

ブランディングデザイン強化のために、3DやグラフィックCGなど映像分野にも着手していくつもりです。ブランディング、実装、伴走していける仕組みを完全に構築するためのモデルケースをいくつも作っていこうと思います。
また、もともと広告制作をやっていたというのもあり、広告には強い思い入れがあります。世の中に影響を与えられる広告デザインで、ムーブメントを起こしていきたいですね。
今は北海道の仕事がメインですが、道外・海外にも進出していけるくらいの規模に拡大していこうと考えています。

これからスタッフを増やすとしたら、どんな資質を求めますか?

今後は事業の幅を広げるためにもスタッフを増やしたいです。デザイナーに限定せず、マーケター、コーダー、フォトグラファーでも歓迎します。
経験や技術があるに越したことはないですが、それよりも大事なのは人間力。仲間にもクライアントにもエンドユーザーにも思いやりを持てる人材がいいですね。思いやる気持ちがあれば必然と創造力は育っていくと思いますので。

これからクリエイターを目指す人にアドバイスをお願いします。

ここ20年でクリエイティブ業界はとても大きく変わりました。高い技術だけでなく、経営者目線を持つことも求められていくと強く感じます。
また、AIの飛躍的な発達がすすむにつれ、末端のクリエイターは消えていくのかもしれません。クライアントが希望する繊細なニュアンスを拾い、詳細に汲み取る力は人間だけにできる技だと思います。あくまで司令塔は人間だという意識を忘れずに危機感を持って頑張ってください。

取材日:2024年2月6日 ライター:宮本 和加子

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

株式会社ズック

  • 代表者名:亀山 圭一
  • 設立年月:2006年6月、法人化2010年10月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:広告・グラフィックデザイン・ブランディングの企画・制作
  • 所在地:〒060-0056 札幌市中央区南6条東3丁目1 レノンビル3F
  • お問い合わせ先:011-302-6960

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