WEB・モバイル2023.12.20

国を救う?福祉のDX化で人材獲得。会社の存続危機を乗り越え、利用者のやりがい創出に一役

札幌
株式会社フェイバーズクリエイション 代表取締役
Toshiki Sakai
酒井 俊樹

VRやHP制作などのクリエイティブ事業をはじめ、イベント事業などにも取り組む札幌の株式会社フェイバーズクリエイション。近年は福祉にも力を入れており、なかでもITに特化した就労継続支援事業は、IT人材不足の解消が期待されると話題になっています。サラリーマンから独立を決めた同社の代表取締役・酒井 俊樹(さかい としき)さんに、設立までの経緯や今後の取り組みについて伺いました。

成功できる道を求めて独立。クリエイティブ事業をスタート

酒井さんのご経歴を教えてください。

大学を卒業し、22〜29歳までSE(システムエンジニア)をしていました。ただ、1日中パソコンに向かって作業をしているのが辛く、正直、自分には向いていないなと思っていて…。サラリーマンという働き方にも疑問を持つようになり、何かほかに成功できる道があるはずだ、こうなったら社長になるしかないと思うようになり、独立を決めました。

会社設立の経緯を教えてください。

2016年に常務の垣野と一緒に、フェイバーズクリエイションを設立しました。当時はシステム開発ができるほどの規模ではありませんでしたが、VRに興味がありましたし、実際にVRやHPは作れましたので、そこを柱に展開しようとスタートしました。

ピンチをチャンスに変えてクライアントを増やす。会社の存続危機を乗り越え

クライアントはどのように獲得していますか。

人とのつながりや紹介、ビジネス交流会から広がっています。普段は外に出て知り合いと会うことが多く、実際に会話のなかから仕事につながったりしていますね。現場はほかのスタッフに任せつつ、サイボウズやLINEなど4〜5つのSaaSのグループウェアを使い分けて、作業や進捗状況などを細かく管理しています。

就労支援事業にIT人材発掘の活路を見出す。「才能を最大限生かす」がポイント

独立後の具体的な構想はありましたか。

当時は生きるために一生懸命でしたので、かっこいい理念などはありませんでした。今はようやく自分のすべきことが見えまして、ITを基盤にした就労支援として「福祉のDX(デジタルトランスフォーメーション)化」を理念に掲げています。

その理由を教えてください。

就労支援事業は20年から新事業として始めました。ハローワークや障がい者職業センターと連携しながら、障がい者の就職や職業を続けるためのサポートを行っています。
人にはそれぞれ得意・不得意があります。そして、就労支援というからには、スキルを身に付けて就職へとつなげなくてはいけません。それには選択肢がもっとあってもいいなと思い、私のフィールドであるIT関連の仕事を試してみました。すると、データ入力やHP制作、動画制作、撮影などは利用者さんもできることが分かりました。しかも、みなさん真面目にコツコツと仕事に取り組んでくれるんです。日本のIT人材は深刻な不足状態と言われています。本来やるべき仕事がどんどんIT化され、それに合わせて担当者を増やさなくてはいけないなか、私のようにSEの仕事が大変だという理由で離れていく人が多いのも実状です。
そこで活躍する芽があるのが、ITに特化した就労支援事業所なのです。当然、私1人では難しかったですが、弊社の社員が作業方法を利用者さんたちに教えられますので、うまく立ち上げることができました。

各自のスキルや適性判断はどのように行うのですか。

WordやExcel、HP制作、デザイン、NFT、メタバースなどの項目から、好きなことや得意なこと、やってみたいもの、実績のあることを選んでもらい、10段階で自己評価をしてもらいます。それに個性学や、才能を最大限に生かす理論であるウェルスダイナミクスなどを組み合わせ、実際に試してみた結果も踏まえて、その人のレベルやスキルを導き出します。そこから1人1人に適した作業を割り当てるため、失敗もしにくいですよ。

利用者さんへ継続的にITの仕事を提供、「国を救う事業」として賞賛も。パーティー開催で事業所づくり

利用者さんに提供する案件はどのように獲得するのですか。

23年9月には、株式会社アイリッジの子会社でシステム開発を行っている株式会社プラグインと業務提携契約を結び、継続的な就労機会提供の取り組みを始めました。プラグインは豊富な案件を有していますので、利用者さんに安定した仕事を提供していただけます。ほかにも、知り合いからの紹介を経て、厚生労働省や東京の行政、札幌市からの仕事を請け負っていますし、今後も増えていく予定です。

事業所の利用者さんも増えているんですね。

そうですね。過ごしやすい環境とやりたい仕事をやってもらうことを心がけておりまして、共感いただける方が増えてきていると感じています。
現在、事業所はフランチャイズも含めて6カ所あり、加えて札幌市内5カ所(新札幌、白石、大通、東区役所、狸小路)の開設が確定しています。さらに、道外では、広島県と大阪府に開設計画が進んでいます。

事業所づくりでこだわっている点を教えてください。

快適に仕事をしてもらうために、明るくて清潔な職場環境づくりには力を入れています。利用者さんに楽しんでもらうためのイベントも2カ月に1度開催していて、料理を作って振る舞うこともあります。ハロウィンでは利用者さんたちが自主的に行ってくれました。クリスマスもお酒をたくさん用意してパーティーを行います。

福祉DX化を発信し札幌を盛り上げたい。今の時代は「人・情報・時間」、経験を積み重ねて

ブレアフラワー

今後のビジョンについてお聞かせください。

もともとVR制作をしたくて今の会社を立ち上げましたので、VR制作にはもっと力を入れていきたいですし、実績を増やしていきたいです。ほかにもバルーンに入った花のギフト「ブレアフラワー」や左手デバイス、NFCカードなど自社製品を扱うEC事業もどんどん展開していきたいですね。
また、就労支援事業も大きく展開していく予定です。事業所は30カ所くらいには増やしたいですし、この先、グループホームと相談支援事業所、就労選択支援事業所、就労移行支援事業所、就労定着支援事業所を作る予定です。

会社として札幌に貢献したい思いはありますか。

福祉のDX化を発信することで札幌を盛り上げ、IT人材を増やすことが札幌や国のためになるのではないかと考えています。ITの仕事をしたかったけれど諦めていたという人や、もともとプログラマーだった人で就労支援が必要な方を掘り起こすことで、少しは札幌のIT化に貢献できたらうれしいですね。

最後にクリエイターを目指す人にアドバイスをお願いします。

新しいものに敏感であってほしいですね。情報のスピードはどんどん早くなっていますし、少し前に持っていたスキルはすぐに古くなりますので、最先端の情報を常にアップデートしていかないと、ついていけないと思います。

取材日:2023年11月2日 ライター:八幡 智子

株式会社フェイバーズクリエイション

  • 代表者名:酒井 俊樹
  • 設立年月:2016年7月
  • 資本金:900万円
  • 事業内容:EC制作、VR・AR制作、HP制作、各種デザイン、イベント事業、福祉
  • 所在地:〒060-0061 北海道札幌市中央区南1条西5丁目8 愛生舘ビル3階
  • 電話番号:011-777-7037
  • URL:https://favorscreation.com/
  • お問い合わせ先:上記サイトの「Contact」よりご連絡ください

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