ゲーム2023.07.19

みんなに喜んでもらえるサービスが作りたい――実現するのは“プログラミング”だ。ゲームなどでコミュニティを創出

大阪
株式会社ダンクハーツ 代表取締役
Tadashi Ohara
大原 正
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「曼荼羅イブ」サウンド作業風景

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「曼荼羅イブ」キービジュアル

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「曼荼羅イブ」ライブグッズ制作会議の様子

独学でプログラミングを学び、貯金53万円で会社を立ち上げた大原 正(おおはら ただし)さん。大阪に拠点を置き、ソーシャルゲームの企画開発をメインに展開する株式会社ダンクハーツを経営しています。もともと訪問販売を行っていた大原さんは、フリーター時代に浮かんだささいな疑問をきっかけにプログラミングに目覚めました。「コミュニケーション」を大切にしているという大原さんに、苦しかった時代を乗り越えるきっかけとなったエピソードや、企画制作する上で最も重要視しているマーケティングについて、お伺いしました。

北海道で訪問販売の営業を経験した後、どっぷりとプログラミングの世界へ

会社を立ち上げる前は何をされていましたか?

訪問販売の会社に勤めていたのですが、「大原君は北海道で営業して」と言われ、右も左もわからない状態で営業をしていました。まだ訪問販売規制法もなくハードな日々で、1年半ほど勤めてから大阪に帰ってきました。

大阪に帰られてからはどのように過ごされていたんですか?

しばらくはフリーターをしていました。Windows95や98のインターネットが普及し始めた当時、パソコンが好きで遊んでいたんですけど、電話回線にデジタル化したデータを乗せて接続するISDN、ADSLの時代で、インターネットに常時接続することができなかったんです。もっといろんなサイトや動画をたくさん見るためにはどうしたらいいんだろう?と考えた時に、「プログラミングだ」と思ったんですね。そこから独学でプログラミングを勉強して、大学入学資格検定(高等学校卒業程度認定試験)を取得して、専門学校に入りました。
そんなある日、近くの商店街のおじさんから「大原君、パソコン勉強しているんやったら、楽天に出店したいからサイト作ってくれへんか」と頼まれたんです。当時、楽天の店舗運営システム(RMS)がHTMLタグを直書きしないと作れないもので、もっと手軽にECサイトを利用できるようにと作ってあげたところ、すごく喜んでもらえましたね。

コンテストで受賞、パトロンとの出会いから貯金53万円で起業

独学から始めて、専門学校時代に実際に依頼を受けて満足してもらったという経験はすごいですね。

自己満足のまま終わらすのはもったいないと思い、学内外のコンテストに出したんですが、当時としては画期的だということでたくさん賞をいただきました。それを見た知らないおじさんが「君たち目がすごくキラキラしているから出資してあげるよ」と声をかけてくださったんです。
5人で作り上げたサービスだったんですけど、学生の甘い考えで「リスクもないしやってみるか」と考え会社を立ち上げることに決めました。会社登記するタイミングで「ごめん、うちの会社倒産しそうやからやっぱり投資はできない」と言われたんですけどね(笑)。

そんな怒涛の日々から会社がスタートしたんですね!

はい。メンバーのうち3人はすぐに就職したので、僕ともう1人で一から創めました。
作ろうとしたシステムは、専用サーバーに最低でも月50万円はかかる想定だったんですが、当時、僕の貯金が53万円しかなかったんですね。1カ月で倒産するやん、と(笑)。さすがにそのサービスはできないねということになり、いろんな企業に営業をして少しずつホームページ制作やシステム開発のお仕事をもらうようになりましたね。

新規営業で案件を取ってくるも、自転車操業で苦しい日々が続く

現在、ゲーム・IP(知的財産)開発をメインで行われていますが、ゲームに特化しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?

元々はホームページ制作から始まり、途中でコンテンツプロバイダーと呼ばれる事業を行っていました。しかし、当時の大阪の制作業界では「そんなの安く簡単にすぐできるだろう」と思われていたので、作業量に見合った価格交渉を行うのが難しく、なかなか厳しい状況でしたね。このまま自転車操業ではビジネスとしても成長はないなと考えました。

ガラケーからひらめいた、新しいコンテンツ企画が会社を救う

どのように打開策を見つけられたのですか?

忘年会で、ぼうっとガラケーをいじりながら「俺ってそもそもみんなに喜んでもらえるサービスが作りたかったんじゃなかったのか」と考えていました。その時、触っていた携帯を見て「これだ!」と思いましたね。
思い立ったが吉日で、正月が明けてすぐにNTTドコモに飛び込み営業をしに行きました。3回ぐらい断られましたけど、足繁く通ったことで受付の方が「ここに企画書を出したら話を聞いてくれるかもしれませんよ」と教えてくれて、出させていただいた企画書が無事に通ったんです。

どんな企画内容だったんですか?

当時、携帯のメニュー画面などのデザインを変えられる“着せ替えツール”というサービスや、携帯をキラキラ飾ったりする”デコ電”が流行っている時代で、女性向けのものしかなかったんですね。
男性だってかっこいい携帯を持ちたいだろうと思って、男性向けのスタイリッシュなデザインに着せ替えられるコンテンツサービスを提案しました。月額500円の利用料金で販売したところ、10万人ほどが利用してくれて、めちゃくちゃ売れたんですよ。

iPhoneが登場し、ソーシャルゲームが世の中へ

そこから現在のゲーム事業には、どのように至ったのでしょうか?

iPhoneの登場からしばらくして、モバゲーさんなどがソーシャルゲームを始められたのを機に、今のゲーム事業を始めました。「これだったら僕たちが今まで培ってきたコンテンツ制作技術とシステム開発技術で作れるな」と思ってチャレンジしました。

綿密な市場調査の上、ニッチなマーケット「仮面ライダー好きの女性」を狙う

現在、オリジナルゲームも多数制作されていますが、どのように企画・コンセプトを考えられていますか?

作品の方向性にもよるんですが、ゲーム制作においては完全にマーケティング主義なんです。綿密に市場調査をした上で企画を立てています。
たとえば好きな人にプレゼントを買ってあげようと思った時、まず相手のことを調べるじゃないですか?それとゲーム制作は一緒だと思っているんです。自分が作りたいものを作る、という考え方ではゲームは作らないですね。

自社で制作されたヒーローを育成するゲーム「ヒーロー’sパーク」は、どういった市場調査の上で作られたのでしょうか?

女性向けのマーケットはライフタイムバリューが非常に長いと言われています。女性は一度ファンになったらずっとその作品が好き、という方が男性に比べて多いのも女性をターゲットにした理由です。
当時の女性向けマーケットの中でヒーロージャンルもあるのではないかと。たとえば「仮面ライダー好きの女性って結構いるよね」というところで、その方たちに向けたサービスを作れないかと考えました。
王道のジャンルはやはりマーケットも大きいですし、作られる方も多いですが、僕らとしては他の人が狙わなさそうなニッチなマーケットに対してIPを提供する方が良いのではないかと考えました。
弊社は「人間関係をシンカ(深化・進化)させる」というミッションを掲げているんですけど、狭いコミュニティの方が人間関係は深くなると思うんですよね。僕は喫煙ルームにたとえているんですが、そこに集まる人たちってやたら仲が良かったりします。それに似た感じで、ニッチなマーケットで作品づくりをする方が僕らのミッションとしても合っているんじゃないかと思ったんです。

末永く愛され、集まれるコミュニティの場を大切にしたい

制作する上で、大切にされていることはありますか?

「コミュニケーションを生み出せるかどうか」という部分を大切にしています。ゲームはあくまでもコミュニケーションツールの一つであるという位置づけですので、コミュニケーションを促進できないような作品は作らないんです。そのため、弊社はゲーム会社だとは思っていないんですよ。

他社との差別化ポイントや、御社の強みはどこですか?

弊社は開発も行っていますが、どちらかというと他社さんからお預かりした作品を含め、長く運営することが得意です。過去にサービスが終了したタイトルはいくつかありますが、サービスを終了した瞬間に、ユーザーの方がこれまで培ってきたコミュニティがなくなってしまいました。それは弊社の方針上あまりしたくないんです。
コストをギリギリまで下げてでもできる限り長く続けて、ユーザーさんが集まれる場所だけは残せるように何ができるか考えて運営しています。会社にとってユーザーさんは大事な資産です。ユーザーさんとの縁を作ってくれたサービスを続けるために工夫をしています。

コミュニケーションを促進する企画、そして熱量のあるクリエイターを求む

今後はどのようなゲームやサービスを制作されていきたいとお考えですか?

コミュニケーションを促進できるものであれば、ゲームにこだわらずに作っていきたいですね。これまでは僕が考えた企画が多かったのですが、今後は社員から出た企画で制作していきたいなと思っています。

社員の方から提案があれば、企画はいつでも見ていただけるのでしょうか?

はい、社員からの企画は随時受け付けています。ゲームは大きな企画だと開発に3年ほどかかりますので、マーケティングがきっちりされているか、需要があるか、しっかりと考えられているコンテンツかどうかを見ます。足りていない部分はアドバイスをして手伝うようにしています。

企画を積極的に出される社員さんは、どういったタイプの方ですか?

クリエイティブに対する熱量が多い方ですね。モノづくりが好きで、こちらが何も言わなくても自律している人たちです。そういう方たちは勝手にどんどん成長していきますね。

一緒に働くクリエイターに対して、どのようなことを求められますか?

全職種で随時新しい人材を募集しています。若い人たちは情報に敏感ですので、新卒採用もしています。
弊社の採用基準は「人として良い人」です。コミュニケーションを大切にできて、かつモノづくりに対して熱量のある方と一緒に働きたいなと思っています。

多くの方にファンになってもらえるサービス制作、そして企業を目指して

来年で20期目を迎えられるとのことですが、将来のビジョンなどがありましたら教えてください。

「ダンクハーツってあのサービスを出している会社だよね」と言われるものを3~4年以内には出したいと思っています。オリジナルのコンテンツ開発という方向性でいうと、ゲームにこだわらずにIPを増やして、たくさんファンを増やしていけるようにこれからも制作を続けていきたいです。

取材日:2023年6月13日 ライター:大野 由加里

株式会社ダンクハーツ

  • 代表者名:大原 正
  • 設立年月:2005年6月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:コンテンツメディア事業、ソーシャルゲームコンテンツの企画・開発・運営
  • 所在地:〒550-0002 大阪府大阪市西区江戸堀1-9-1 肥後橋センタービル16F
  • URL:https://www.dank-hearts.co.jp/
  • お問い合わせ先:06-6136-5752

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