WEB・モバイル2023.06.28

釣り人による、釣り人のためのWebサービス。船主の課題を解決し、船釣りの魅力を高めたい

沖縄
スイベル株式会社 代表取締役
Jin Oshiro
大城 仁

スイベルとは、釣り糸同士を糸ヨレさせずに結ぶ釣り用具の名称。沖縄県のスイベル株式会社は社名の通り、釣りに関するWebサービスの開発を手掛ける会社です。代表取締役の大城 仁(おおしろ じん)さんは、漁師の街として知られる県内糸満市出身。幼い頃から釣りに親しんできた経験から導き出されたニーズを元に、乗船マッチングサービス「noriai(ノリアイ)」や、釣り船予約Webサイト「BOAT FINDER(ボートファインダー)」を開発しています。将来的には釣りにこだわらず、「デファクトスタンダードになり得るようなアプリやWebサービスを創出したい」と語る大城さんに、お話を伺いました。

大学を休学し、商売のおもしろさを体感。小学校からの“釣り”経験を生かし、事業を開始

会社設立までのキャリアを教えてください。

沖縄の糸満市出身で、地元の高校卒業後は沖縄国際大学の経済学部に進学しました。人一倍好奇心旺盛な学生で、バックパックで各国を旅行していましたが、「もっと自分で何かしてみたい」「金を稼いでみたい」という思いが募り、休学することにしました。
当時流行していた角煮まんじゅうを自分で製造して県内のアウトレットモールで販売したり、Tシャツを自分でデザインして販売したり、「上間沖縄天ぷら店」という県内で有名な飲食サービス会社で働きながら、社長のもとで経営を学んだり。2年ほどの社会人経験を通して改めて自分で商売することに魅力を感じ、大学を卒業してから1年ほど経った2021年にスイベル株式会社を設立しました。

卒業後の進路として就職は念頭になかったのですか?

Illustratorなどのデザインスキルは持っていたので、一旦はデザイン会社に就職したんですが、やはり自分で商売する方が性に合っていたようで、4カ月ほどで退職しました。
まず看板屋から仕事をもらって、デザイナーとして独立しようと試みたのですが、受注できたのはわずか1件でした。看板屋というのは、予算の関係上デザインを外注せずに内製化することが慣習のようで、そもそもデザイナーのニーズがないと断念しました。
しばらく、どんなサービスなら世の中にニーズがあるのか思案していたのですが、出身地が糸満市という漁業が盛んな街ということもあり、小学生の頃から親しんできた釣りの経験を生かそうと思い立ちました。身近にいた漁師や船主たちのニーズを拾い出せれば、今までにない新規事業を作り出せるはずだと思ったんです。そこで、事業領域を釣りに特化することにしました。

どのようにサービスを構築していったのですか?

最初に取り掛かったサービスが、釣りスポットの情報をフリマアプリのように売買できるスマートフォン向けアプリの開発でした。
スポットごとに釣れる魚の種類や量の情報を売り買いできれば便利だと思ったんですが、そのスポットを自分で探すこと自体に醍醐味を感じる釣り人もいますし、自分自身も、とっておきのスポットはあまり人に教えたくないものです。釣り人の気持ちに寄り添っていないと感じ、別のサービスを作ることにしました。

ありそうでなかった乗船予約管理システムで船主の手間を大幅減

そうして完成したのが、BOAT FINDER(ボートファインダー)だったのですね。

実はボートファインダーがスタートではないんですよ。それ以前に、noriai(ノリアイ)という、船の利用希望者をネット上で結びつけ、1人で参加してもほかの釣り人と乗り合って沖釣りができるマッチングサービスを開発しました。しかしリリースしてすぐに、利用者が伸び悩んでしまって。釣り人のニーズに合致していないことの表れだと痛感し、船主側に特化したサービスに変更することにしました。改めて船主たちにヒアリングし、そこから得た課題を解決できるサービスとして、ボードファインダーを作りました。

どのようなサービス内容に変更したのでしょう?

船主自身で、自分の船の情報や狙う魚種、釣り方、自身のアピールポイントなどを自由に掲載できたり、ハッシュタグで整理できたりするWebサービスです。その情報をもとにユーザーが好みの船を探して予約するという流れです。今はまだマネタイズできておらず、Webメディアとしての運営にとどまっていますが、もう間もなく、船主から予約手数料が課金されるシステムを実装予定です。

船主へのヒアリングを元に課題を見つけたとのことですが、ボートファインダーでどのような課題を解決できるのでしょう?

沖釣りの業界はかなりレガシーで、電話での予約受付が一般的です。そのため、船主が海に出ている間は女将さんなどが一日中電話番をしていることも多いのですが、船の利用は高額なため予約に慎重な釣り人も多く、クロージングに苦労していました。さらに、常連さんの予約が多いため、遠慮してかキャンセル料はほとんどもらえないほか、海況で予約の半分はキャンセルになってしまうため、売上が立たないんです。
これらの課題を解決するためにボートファインダーでは、まず船主自身が予約管理できるシステムを設けました。カレンダー上で船の在庫および客席数、料金を管理でき、ユーザーはリアルタイムでそれを確認できるので、気軽に予約できます。キャンセル料については、事前に決済できる仕組みにすることで徴収できます。

ユーザーが気軽に釣り船予約できる仕組みを作り、釣り人を増やしたい

ユーザーにとっても「気軽に予約できる」というメリットがありますね。

そうだと思います。私自身が釣りの楽しさを知っているので、より多くの方にそれを知ってほしいという想いがあり、「電話予約」というアナログかつ手間のかかる方法を変えたかったんです。また、未経験の方にとって船釣りは、「船主さんが怖そう」とか、「船酔いしても帰れなさそう」といった不安が多く、ハードルが高いものです。ボートファインダーでは船主さんとともにオリジナルのプランを作っていく予定ですので、そのような不安を解消でき、誰でも気軽に参加していただけます。

現在の利用状況はいかがですか?

リリースから約半年で、8業者が参画することになりました。ホームページの代わりに情報発信できるうえに予約対応の手間がなく、スケジュール管理や顧客管理ツールになると、喜びの声をいただいています。ユーザー数は、まだオンライン予約機能が未完成なので電話での対応ですが、月に20件ほどです。6月末にオンライン予約機能をリリース予定なので、それからが勝負だと思っています。

自社サービス開発で「デファクトスタンダード」創出。「世の中の幅広い課題を解決」に意欲

御社の掲げるビジョン「デファクトスタンダードを創り続ける革命集団」について教えてください。

デファクトスタンダードとは、市場競争を経て獲得できた業界標準のことです。例えば、スマートフォンでタクシーを呼べる配車アプリ「Uber(ウーバー)」のように、世の中の当たり前となるような新しく革命的なサービスを作りたいと、このビジョンにしました。弊社には2人のエンジニアがいて、幸いにもこのようなサービスを作ることに意欲的です。一応私が会社の代表ではありますが、彼らの方が優秀で、逆に私が叱咤激励されることもしばしばあります。心強い同志である彼らとなら、ともにデファクトスタンダードになり得るサービスを作っていけると信じています。

今後の展望や目標は?

ボートファインダーは、私の「釣り業界に貢献したい」という想い一つで作ってきましたが、今後は釣りにこだわらず、世の中の幅広い課題を解決できるサービスを開発していきたいです。例えば、病院で長時間待たずに処方箋をもらえるアプリなど、普段の生活で不便に感じていることを解消するイメージです。とことん自社サービスの開発にこだわりたいですね。
ボートファインダーについては、沖縄の10倍もの船釣り市場があるといわれる東京へ進出し、成功させたいです。私自身、現在は拠点を東京に移しており、船主たちとのつながりを広げている最中です。まだ少ないながらも、数名のオーナーさんから導入の確約を得られましたので、手ごたえは感じています。

目標実現へ向けて、どのようなクリエイターに参加してほしいと思いますか?

自ら考えて動ける方です。クリエイターは人に指示されるよりも、自分で何かを作り出すことが好きなはずですし、その姿勢を尊重したいと思っています。しかし「ロマンとそろばん」、つまりビジネスの面も考えながら、理想とするサービスを目指すことが重要です。そのために自分の考えだけに固執しないで、積極的にユーザーの声を聞きに出向き、ニーズを拾わなければなりません。それができて初めて、世の中が必要としてくれる、かつ自分も満足するものが作れるはずです。それができるクリエイターが弊社に参加してくれたら、とても心強いですね。

取材日:2023年5月10日 ライター:仲濱 淳

スイベル株式会社

  • 代表者名:大城 仁
  • 設立年月:2021年2月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:釣り船データベース・予約ウェブサービス「ボートファインダー」開発
  • 所在地:〒901-0306 沖縄県糸満市西崎町3-335,2F
  • 電話番号:090-6866-8742
  • コーポレートサイト:https://swivel.jp/
  • 釣り船予約Webサイト「BOAT FINDER」:https://boatfinder.fish

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