我が家のお正月の謎、『蓬莱飾り』に迫る

福岡
ライター
kosaka
香坂

 年越しの準備というものは、いくつになっても何となく心躍るものである。

 既に明けてから随分経ってしまったが、昨年の暮れは久々に実家で数日を過ごした。郷里の佐賀県では、お正月といえば「がめ煮」だ。これは福岡県でも馴染みのある(というか、そもそも福岡の郷土料理なのだが)料理で、事前に油で炒めない筑前煮、と表現すると分かりやすいかもしれない。

参照:農林水産省HP(https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/cuisine/cuisine7_1.html

 年始の某番組でも、「佐賀県民はがめ煮をメインに食べるお陰で、全国一正月太りをしない」などと紹介されており、少し嬉しくなった。しかし、基本的には何だかんだオードブルや刺身等も用意する家庭がほとんどだと思うので、私のようにしっかりと正月太る人間も少なくない…はずだ、ということはここに記しておきたい。

 さて、そんな佐賀の実家のお正月なのだが、昔から疑問だったものがある。

 

 それが「謎の正月飾り」である。

 

 具体的には半紙を敷いた三方(多分)に米を一升盛り、そこに昆布とスルメイカを一枚ずつ、左右を間違えないように飾る。そして最後に干し柿をあしらう…という形で、祖父母の代、あるいはもっと前の代から習慣的に用意されていた。

 だが、親や祖父母に尋ねても、特に理由は分からないのだという。

 これぞ形骸化。かといってもう当たり前の存在になっているからこそ、今更やめる選択肢もないのだ。

 大学時代、民俗学でちょうど正月飾りの話題になった際先生に問いかけてみても、「豊穣を祈る目的だということは何となく分かるけど…」とのことだった。確かに米に魚介類に果実となれば、食べるものに困りませんように、的な願いが込められている感じがする。

 10年前の当時はネットで調べても判然としなかったため、まあ祖父の頃は兼業農家をやっていた時期もあったというし、その辺りでご近所から指南されたのだろうと納得することにした。

 とはいえ、やはり疑問は消えない。

 この機会に再度調べてみよう、と手始めにインターネットで検索をかける。あとは図書館にでも行って…と次の手段も考えていたところで、何と課題は秒速で解決した。

 

 どうやらそれは「蓬莱飾り」と呼ばれるらしい。

 

 家庭によっては干しアワビや海老、橙(だいだい)などを飾ることもあるそうで、関西では珍しくない正月の風習なのだと。そう言われると、30ウン年首を傾げ続けてきたのが何だか恥ずかしくなってくる。

参照元:goo辞書(https://dictionary.goo.ne.jp/word/蓬莱飾り/

 母が「この時期、近所のお店ではスルメイカや昆布が結構売れてるみたいだから、うち以外にもやってるところは普通にあるのよ」と言っていたのも間違いではなかったということか。

 来年からは、また気持ちも新たに「蓬莱飾り」に向き合えそうだ。

 

 当然のように用意するけれど、実は深い意味を知らない…皆さんのご家庭にも、そんな正月飾りはありませんか?

プロフィール
ライター
香坂
オリジナル会葬礼状のライター業を経て、現在はWEB系のフリーライターとして活動中。漢字とひらがなのバランスに悩むのが好き。仕事におけるモットーは「わかりやすく、きれいに」。趣味はお酒・アイドル・展覧会鑑賞・化粧品・創作。

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