WEB・モバイル2023.01.18

「スタッフ全員がプレイヤー」、クライアントの理想をカタチにするクリエイティブ集団

大阪
株式会社カルタクリエイティブ 代表取締役
Jiro Tsubouchi
坪内 次郎

大阪府大阪市にある株式会社カルタクリエイティブは、グラフィックデザインを中心とした広告宣伝、販売促進の企画制作からCI・VIブランドコミュニケーションの企画制作まで幅広くクリエイティブ事業を展開しています。代表取締役の坪内 次郎(つぼうち じろう)さんは、クライアントの思いを第一に考えて提案をすることを信念としており、関西の街カルチャーを取り上げるWebメディア、ハウススタジオ、ギャラリーを運営するなど、さまざまな事業に取り組んでいます。制作物はもちろん、人にも愛情を持って向き合う坪内さんに、事業を立ち上げた経緯、事業内容、今後の展望などについて話を伺いました。

グラフィックデザイン会社での勤務を経て、会社設立へ

立ち上げまでのキャリアを教えてください。

高校生の頃から、「おしゃれなファッション誌を作りたい」という夢があり、そこからグラフィックを学びたくて、高校卒業後はグラフィックデザインの会社に就職しました。最初の頃は写真の整理や切り貼りといった下積みから始まって、先輩たちのデザインを盗み見しながら学びました。当時はコンピュータのない時代でしたので、「手先が器用であれば何とかなる」みたいなところがありました。2社目ではグラフィックをメインとしたアートディレクションを行っていました。そこでは、約50人のスタッフの仕事を見ており、制作のみならず新規獲得や人材育成などの業務も担当しました。
仕事を始めてから約20年、「独立するための経験と知識を得られた」と思ったタイミングで、最初の会社で同期だったグラフィックデザイナーの川内英幸(取締役)をはじめ、10人の優秀な仲間が集まり、2012年6月にカルタクリエイティブを設立しました。

会社設立に当たっての当時の思いを聞かせてください。

前職ではスタッフが多かったため、毎月の売り上げと仕事量の確保が必要で、クリエイティブ的なスタンスを貫くのは大変でした。だからこそ、自身の会社では、商業という要素をしっかり持つクリエイティブのプロダクションにしたいと思いました。
社名の「カルタ」は、世界共通である日本の「カルタゲーム」から名付けました。カルタはコピーを読み、いち早く絵札を取るゲームです。それになぞらえ、「我々は商業クリエイターとしていち早く絵を見つけ、キャッチしていきたい」との思いを込めています。英語では「Karuta」という表記になりますが、「日本国内から優秀な人材を発信し海外とタッグを組みたい」とのグローバル視点から、あえて日本語のカタカナ表記の「カルタ」にしました。

「クライアントに利益を還元したい」との思いから、Webメディア、ハウススタジオ、ギャラリーを運営

事業内容について教えてください。

弊社では、グラフィック・Webデザイン・アートを中心とした広告宣伝、販売促進の企画制作、CI・VIなどブランドコミュニケーションの企画制作、ポスター、ムービー制作など、さまざまなクリエイティブ事業を展開しています。創業時は主に広告から始まり、現在はWebデザインにも力を入れています。また、私自身、グラフィックや内装を手掛けていたことから、自社でWebメディア、ハウススタジオ、ギャラリーも運営しております。

どのようなWebメディアを運営されているのですか。

大阪を中心に、関西のヒト・コト・カルチャーを取り上げるWebメディア「MARZEL(マーゼル)」を運営しています。サイトを始めたのは、ちょうど心斎橋PARCOができた際に、PARCOから「関西の街のカルチャーを盛り上げるような媒体を作ってほしい」と相談があったことがきっかけです。それまで関西にはカルチャー系Webメディアがあまりなかったため、「これはカルタクリエイティブにとってもメリットがある」と思って取り組みはじめました。主に大手メディアが取り扱わない情報を取り上げているのが特徴で、サイトのデザイン、取材、撮影、編集、校正など外部クリエイターとも協力しながら運営しております。基本的には週1回でメイン記事を公開し、トピックスは情報が入り次第、都度更新しています。街カルチャーを取り上げることによって、さまざまな人とめぐり会い、可能性を広げられるコミュニティのようなものを目指しています。例えば、飲食店とアーティストをコラボするなどさまざまなことにチャレンジして、ユニークなユーザーを増やしていきたいと考えています。

ハウススタジオを運営することになった経緯を教えてください。

関西にはなかなか良いスタジオがなく、撮影となるとリース代もかかる上、スタイリストを雇って小道具をトラックで搬送するとそれなりに費用もかさんでいたため、これまでは、東京まで行っていました。東京には小道具のそろった良いハウススタジオが充実しており、私自身がスタイリストをすれば予算的に変わらなかったんです。ただ、東京のハウススタジオは、日常的に使うことができません。そこで、大阪府豊能郡能勢町に「Serge」という自社のハウススタジオを作りました。いつでも使えるうえ、レンタルスタジオとして運営することができます。お客さまの撮影費用も抑えられ、我々もその利益で、フランスで買い付けてきた家具を置くなど、内装もバリエーションに富んだおしゃれなつくりにしており、スタイリストも不要です。

ギャラリー運営に込めた想いを教えてください。

ギャラリーは「RAURAUJI /らうらうじ」といって、作品の展示販売など作家たちに活用してもらえるギャラリーとして開設しました。関東では指名で仕事が来ることが多いですが、関西ではクライアント軸の仕事が多い傾向にあるため、自分の技術を伸ばしづらいところがあります。だからこそ、作家の技術をPRできる場が必要だと考えました。作家たちが横のつながりを持ったり、コンテンツとして成り立つ場にしたり、作家のチャレンジを自社のコンテンツとして開発することができます。昨今はInstagramのような発信の場はあるものの、やはりリアルにディレクションできる場があった方がクリエイティブ力も上がるのではないかと思ったんです。

代理店を介さないからこそ築ける顧客との信頼関係

御社はひと言でいえば、どんな会社ですか。

弊社には営業担当はおらず、デザイナー、プロデューサー、ライター、フォトグラファーも正社員として採用しており、全員がプレーヤーです。現在は、正社員17人、契約スタッフ2人、役員も入れて約20人の体制で運営しております。弊社の自慢は、スタッフ同士の仲が良いことです。付き合いの長いメンバー含め、新卒や中途採用で入ってきたメンバー間に上下関係はありません。先輩からお仕事をもらう人は、師匠・弟子という関係にありますが、誰かがリーダーになって進めるということもなく、それぞれの個性や良さを尊重している環境です。

会社としての強みを教えてください。

弊社は、代理店からの発注ではなく、直接クライアントから仕事を請け負っている点が強みです。それゆえ、担当者との信頼関係を築くことを第一に考えています。直接お仕事をいただくことによって、それぞれが責任感を持って仕事に取り組み、ダイレクトにクライアントの思いを反映できます。先方は、クリエイティブに関してプロでないことも多く、代理店をはさむと、決済含めて発注側の立場からのルールみたいなものがどうしても生まれてしまいます。しかし、直接やりとりをすれば、時間をかけてそういったルールを崩すことができ、最終的にはクライアントの描く理想を一緒に作っていくことが可能となります。

お客さまからはどんな反響をいただいていますか。

「自社内で全て手掛けているから、すぐに返してもらえる」「何事も速やかに接してくれるのが良い」と言ってもらえます。だからこそ、例えばカタログの1ページを作るにしても外注はせず、一つ一つに愛情を持って制作しています。

経営者として、坪内さんが常に心掛けていることはありますか?

まずは、「あいさつ」をすること。その上で「頑張っている」ということを表に出さないように心掛けています。自分のやりたいことでお客さまからお仕事をいただいているので、他と比べることに固執したくはありません。

この仕事をやっていて良かったと思うのはどんなときですか。

一つのプロジェクトにおいて企画を考え、自身の描いたビジュアルがターゲット層に訴えかける感覚を、お客さまとある程度共有しはじめた瞬間が一番うれしいですね。共有しはじめるとその感覚が続いていくので、どんどん仕事が楽しくなりますし、それで成果を上げることができたら最高です。

スタッフが来てくれているだけでありがたい

今後、どのような会社にしたいと考えていますか。

弊社にはプロデューサーとプランナーがおり、イベント企画やプロデュース力は、自慢できる強みです。「あくまでクライアント重視」という思いを大切にしながら、広告・Web・イベントなどのお仕事をいただくクライアントのために、コンテンツをさらに充実させていきたいと考えております。

現在抱えている課題はありますか。

できるだけ社内のメンバーでやっていきたいのですが、社内で完結することに捉われると、同じようなことしかできなくなるため、兄弟会社のように活動できるブレーンを作っていきたいです。コンテンツを作るためにクライアントのお役に立てるのであれば、クリエイターでなくても良いんです。例えば、マンションの内装を手掛けるには、大工さんや電気屋さんなど異業種の人との出会いがあっても良いのではないでしょうか。

一緒に働くクリエイターに対して、会社としてどのようなことを求めていますか。

私たちは、お客さまが作ってほしいという願いをカタチにする仕事なので、ある程度は一般的な考えを持っていた方が、良いクリエイティブができると思うんです。あくまでもビジネスであるため、ある程度の売り上げや利益は必要ですが、スタッフには私生活を安定させてもらった上で、自分のスタンスを大事にしてもらい、プライベートと仕事をバランス良く過ごしてもらいたい。私は、スタッフが会社に来てくれているだけでありがたいと思っているんです。

「自分の好きなもの=売れるもの」という視点が大切

どんなクリエイターを採用したいですか。

積極的に採用したいのは、Web系のディレクター、デザイナーです。新卒採用の場合は未経験でも良いですが、中途採用の場合はある程度実績のある人材がほしいです。「自分の会社だ」という責任感を持ってくれる人、弊社を気に入ってくれて「Webデザインをしたい」という気持ちのある人であれば、長いお付き合いができるのではないかと思っています。本気でWebデザイナーになろうと思うと、プライベートとの両立は難しいですが、その気持ちがあれば絶対に伸びると思うんです。そういう人がいたら、ぜひ来てほしいです。

クリエイターを目指す人にアドバイスをお願いします。

クリエイターにはいろんな分野があり、作家寄りのアートを希望する人、商業のクリエイティブを希望する人に分かれますが、もし、商業用で考えているのであれば、「自分の好きなもの=売れるもの」という視点を持つことが大切です。例えば、「洋服が好き」「エステが好き」「こういうサービスがあったらいいな」と思うことは消費者の視点であり、すなわち「売れる」ことにつながります。「自分の好きなものが売れる」という感覚を、担当したクライアントの業種でたくさん作り、その業界に愛情を持って接していけば良い提案ができるのではないでしょうか。

取材日:2022年11月18日 ライター:堀内 優美

株式会社カルタクリエイティブ

  • 代表者名:坪内 次郎
  • 設立年月:2012年6月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:広告宣伝、販売促進の企画制作、CI、VI等ブランドコミュニケーションの企画制作、エディトリアルデザイン制作、プロモーションイベントの企画制作、運営、モバイルアプリケーションの開発及び制作、スチール撮影、ムービー撮影、等
  • 所在地:〒550-0002 大阪府大阪市西区江戸堀1-23-14 新坂ビル
  • URL:http://caruta.jp/
  • お問い合わせ先:06-6479-0515

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