グラフィック2022.10.26

「お客さまを元気にするために変な会社になろう」。既存の事業にとらわれず柔軟な発想で企業PRをトータルサポートする老舗企業

広島
株式会社ポップジャパン 代表取締役
Takushi Kumamoto
熊本 卓司

のぼりや旗の製造で全国トップクラスのシェアを誇るポップジャパン。1974年創業の歴史ある企業が本気で取り組んだ社内改革が功を奏し、近年は広告・ウェブ制作からイベント企画など幅広く事業を展開する「集客のプロ集団」として注目を浴びています。その歩みや社風を大きく変えた社内改革、また産学連携やSDGsの取り組みなどの新たな挑戦、そして今後の展望について代表取締役の熊本卓司(くまもと たくし)さんに伺いました。

多品種対応、小ロット対応、短納期対応でのぼり旗メーカーとして躍進する

のぼり旗の製造で業界シェアトップクラスを誇る御社ですが、創業時は「POP屋さん」だったそうですね。

当社は1974年に、私の父がPOP販売を手掛ける「ポップヒロシマ」として創業しました。お店に行くと「お買い得」とか「オススメ」とかありますよね。あれを販売していたんです。取引先からの要望がきっかけでのぼり旗を扱うようになったのですが、当初は仕入れて販売をしていました。のぼり旗の需要が高く、自社で製造から手掛けるようになり、1984年にはのぼり旗のメーカーに転身しました。
当初は大手代理店などから受注して製造する下請けのメーカーでしたが、多品種対応、小ロット対応、短納期対応で、国内シェアトップクラスを誇るまでに成長しました。若い従業員も増え会社の未来がさらに広がるようにと、2016年には社名を「ポップジャパン」に変更しました。

新たな時代を見据え、待ちの営業から攻めの営業へ

現在はのぼり旗の製造だけでなく、販促全般に関することを企画から請け負われています。事業拡大のきっかけは社名変更だったのですか。

社名変更が直接のきっかけではないのですが、名前を変えた時に多方面からさまざまなアドバイスをいただきました。また、世の中の急速なデジタル化もあり、「このままでは生き残れない」という危機感がありました。そのような中で、今後は下請けから脱却し、直接お客様から声をかけられる企業になっていくべきだと考えるようになっていったんです。
時代の変化に対応できる会社であるためにも、マーケティング力・デザイン力を強化し、「待つ営業から攻める営業」への変化が必要だと感じていました。そこでマーケティングに強い人、デザイン力がある人を迎え入れ、現在のマーケティング部門を設立。販促物制作で培ったノウハウをベースに丁寧なヒアリングや調査を行い、「集客のプロ集団」としてプランニングから各種デザイン、Web制作や店舗装飾、イベント企画運営なども行うようになりました。

「お客さまを元気にしたい」をキーワードに社内を改革。社員一人ひとりが攻める姿勢に

マーケティング部門設立と同じ時期に経営改革にも取り組まれたと伺いました。

そうですね。本当に強い会社になるには、全社が一体となり目標や課題に立ち向かえる組織でなければなりません。それには社員一人ひとりと向き合いながら、業務を改善し働き方も変えていく必要がありました。そこで外部から指導者を招き、社内改革に取り組みました。そのひとつである業務カイゼン運動「PJ(ポップジャパン)サミット」では、各部署がチームを組み、それぞれの課題を抽出し解決にむけた取り組みを実施、その成果を競い合いました。
製造と営業、クリエイティブの人たちが、お互いの仕事への理解を深めるために社内インターンシップも導入しました。「お客さまを元気にしたい」をキーワードに他にもさまざまな取り組みを行ったことで、社員同士がかみ合うようになり、会社の空気が大きく変わりました。
ありがたいことに、必要な時に必要な人と出会うことができました。指導をしてくださった人もそうですし、今のマーケティング部を牽引しているメンバーとの出会いも会社が変わる大きなきっかけになっています。

1年でのぼり旗に使用する生地はマツダスタジアム36個分

のぼり旗は年間どれくらい生産されるのですか

年間で約200万枚を生産しています。実は当社が1年で使用する生地のメーター数は国内1番で、マツダスタジアム36個分に相当する面積になります。当社は小ロットを得意としており、1回の発注数が50枚、100枚とかでも年間を通じてご依頼いただけるので、結果的に国内1番になっているんですね。喜ばしいことだと思います。

他にもさまざまな事業に取り組まれていますね。

当社の事業はプロモーション事業とプリント事業に分かれています。プロモーション事業では企業や行政、教育機関から個人までジャンルを問わず、マーケティング部の企画営業チームとクリエイティブチームが力を合わせて、お客さまの課題を解決するお手伝いをしています。プリント事業では高い印刷技術力と縫製力を生かし、のぼり旗だけでなく横断幕やのれん、はっぴ・ビブス・Tシャツなどさまざまな商品を作っています。

常に種をまき、芽を出した事業の縁を結びながら企業として成長する

ユニークなところでは着ぐるみも作られるとか。

町内会からの「着ぐるみを作りたい」というご相談がきっかけで制作するようになりました。当社はキャラクターデザインを作成するところから手掛けています。今は新しく作るだけでなく、お直しやパーツの作成、クリーニングまで引き受けています。

産学連携にも協力されるなど地域との関わりも大切にされていますね。

第1弾として2021年度に広島経済大学メディアビジネス学科 宮地ゼミの学生たちとブックカバー「HIROSHIMAを読む」を作り販売しました。地元広島をPRするもの、例えばお好み焼きや牡蠣、広島弁など、学生が“推したい”広島の文化・歴史・観光のイメージ6種類をデザインに採用したブックカバーです。他にも広島市立大学、広島修道大学の学生さんたちとも交流があり、当社の社員が講師として出向くこともあります。

SDGsにも取り組まれているのだとか。

のぼりや幕の製造過程で出る廃材・端材を活用した商品開発にも取り組んでいます。当社では、全国で使われる「交通安全」に関するのぼり旗を作っていますが、こののぼりは特に廃材、端材が多くでてしまいます。そこで、外が暗くなっても目につきやすい、蛍光生地の端材を生かす方法はないかと考え、交通安全グッズ「エコセーフティーズ」を開発しました。蛍光生地が目立つサブバックやシューズ入れ、ランドセルカバーなどの製品があります。
また、社内で使う間仕切りや座布団にも端材を使うなど、廃材発生量50%削減を目指して取り組んでいます。他にも、社内にオリジナルののぼり旗を設置したり、各部署の取り組みを発表したり、活動の進捗状況を見える化したりなどもしています。昨年は、静岡の高校が修学旅行の一環でSDGsの活動を積極的に行っている企業を訪問するということで、当社を訪れてくれました。

本当にさまざまなことに取り組んでいるのですね。

このように求められることに応えながら、さまざまなことに取り組むことは、次の事業の種まきでもあると考えています。当社には「○年後にはこんな企業になる」と目標を掲げてまい進するのではなく、たくさん種をまいてご縁があって芽が出たものを大切に育てる、といったやり方が合っていると思っています。

「お客さまを元気にするために変な会社になろう」をビジョンに掲げ実践する

フットワーク軽く行動することで、会社が発展している印象です。

当社のミッションステートメントでは「お客様を元気にするために変な会社になろう」をビジョンに掲げています。「変」とはユニークという意味で、「誰もがやったことのない事にチャレンジすること」と定義しています。社内改革を通じて、相手を否定せず「その意見いいね」「よしやってみよう」「手伝うよ」と声を掛け合う社風が根付き、チャレンジしやすい環境が整ってきました。私自身も「社長はどう思うか」と社員に聞かれたら「あなたはどう思う?」と聞き返すようになりました。それが私の考えとは違っても「まずはやってみよう」と伝え、その時に注意することだけをアドバイスします。後は社員に任せてしまうんです。任せるほどに社員は育つし、それはお客さまにとってもプラスになると実感しています。

今後はどのような会社を目指していますか。

社員の一人ひとりが、いろいろな勉強をしながら自立できる会社にしたいですね。仕事で自立できるっていいじゃないですか。「自分は経営者だ」と思って、社長になって楽しく仕事してみようかぐらいの気持ちで働いてもらいたいですね。それくらい自分に自信を持って前を向いていかないと。人に言われたことだけじゃなく、自分だったらこうする、と絵を描いて実行してみたらいいんですよ。せっかくこの会社で働きたいといってくれた人たちなので、自分の仕事や人生の舵を自分で取りながら生きて欲しいと思います。

行動すれば収穫がある。まずは動くことが大切

最後に広島のクリエイターへアドバイスをいただけますか。

「思うことをどんどん挑戦して」と伝えたいですね。今いる環境ではできないと諦めるのではなく、「こんなのがあったら面白いよ」とか「もっと広島が元気になるよ」というアイデアを、どんどん出せばいいと思います。広島の経営者に「こんなの面白いね」と言わせるようなものを持ってきていただきたい。どうしても今の環境では機会がないというなら、いつでもうちに来てください。話を聞いて一緒に考えるお手伝いをしますよ。

取材日:2022年9月22日 ライター:山名 恭代

株式会社ポップジャパン

  • 代表者名:熊本 卓司
  • 設立年月:1974年12月(2016年にポップジャパンへ社名変更)
  • 資本金:2,000万円
  • 事業内容:プロモーション事業(ロゴ制作、Web制作、店舗装飾、ブランディング、周年イベント、オリジナルグッズ作成、ポスター・チラシ、イラスト)、プリント事業(のぼり旗を中心に多品種に対応)
  • 所在地:〒731-3168 広島市安佐南区伴南2丁目5-19-26 西風新都 セントラルシティ産業団地
  • URL:https://www.pop-japan.co.jp/
  • お問い合わせ先:082-811-8500

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

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