ゲーム2022.06.15

「自社の看板となるタイトルを持ちたい」ゲームの企画・開発のプロフェッショナル集団のやりがいとは

大阪
株式会社クロスプラススタジオ 代表取締役・プログラマー
Satoshi Kawamoto
川本 恵史

私たちの生活に密着しているエンターテインメントの代表格といえば、真っ先に「ゲーム」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。一つのゲームを作り上げるまでには、企画・開発、音楽、シナリオ、キャラクターデザイン、プログラミングなど、たくさんの専門家が携わっています。
株式会社クロスプラススタジオでは、家庭用ゲーム、スマートフォン向けゲーム、アーケードゲームなどの企画開発を中心に行い、ゲーム業界を目指す次世代の人材育成にも力を入れています。代表取締役の川本恵史(かわもと さとし)さんは、自身もプログラマーとして活動するとともに、次世代に向けたプログラミング教育事業の展開にも取り組んでいます。会社を立ち上げた経緯から主な事業内容、今後の展望などについて伺いました。  

「ものづくりに関する仕事がしたい」とゲームクリエイターの道へ

株式会社クロスプラススタジオ設立のきっかけを教えてください。

もともと、ものづくりに関する仕事に就きたくて工業高校に通っていました。ゲームが好きだったことから、高校時代に初めて小さな2Dのゲームを作ってみたんです。それから本格的にゲームクリエイターを目指し、ECCコンピュータ専門学校のゲームプログラム開発コースに進学し、卒業後は、株式会社アクセスゲームズに入社しました。3年半勤めた後、フリーランスのゲームクリエイターとしてさまざまな企業のプロジェクトに参加してきました。そうした中、ある企業で一緒に仕事をしていた先輩がフリーランスになると聞いて、「一緒にやろう」ということになり、2018年9月に株式会社クロスプラススタジオを設立しました。

「クロスプラススタジオ」という社名の由来をお聞かせください。

いろいろなものをつなげて「クロス」させていくというイメージと、私自身プログラマーであることから、プログラム言語の「C++」を掛け合わせて命名しました。「+」は「十字(クロス)」の形をしているのでピッタリなネーミングだと思っています。

日本のみならず世界中から反応があるのがゲーム開発の醍醐味

現在の主な事業内容について教えてください。

弊社は、家庭用ゲーム、スマートフォンゲームなど、プラットフォームやジャンルを問わず、ゲーム開発といわれるものであれば、どのような案件にも対応しています。ターゲット層も幅広く、子供向けからアクション要素のある大人向けのものまで手掛けています。また、制作のみならず、ゲームの下地となる技術的な基盤作りも専門にしています。
創業当初は3人でスタートしました。現在は、デザイナー4人、プランナー3人、プログラマー12人の計19人のスタッフで運営しています。

1つのゲームを企画し、完成するまでにはどれぐらいの時間がかかりますか?

平均的には、約2〜3年です。弊社の場合、他社が練り上げた企画に対し、予算・期間・要望に応じて共同制作といった形で携わることが多いのです。複数人で1つの作品を担当することはあっても、基本的には一人につき1つの作品を担当する体制を取っています。

これまでの実績の具体的事例や、得意とする分野をお話しください。

公表しているものとしては、スマートフォンアプリ「AIカードダス ゼノンザード」というカードゲームがあります(現在は配信終了)。株式会社ディンプスさんの作品で、弊社が設立して最初に手掛けた案件でもあり、私自身も出向して、システム的な部分から多岐にわたってお手伝いしました。また、スマートフォンアプリ「ヴァンガード ZERO」というカードゲームも手掛けています。このように、公表しているものはスマートフォンゲームが多いのですが、実際のところ、弊社は家庭用ゲームの方が得意なんです。ただ、家庭用ゲームは大手企業のタイトル開発となるため、発売されるまでに時間がかかり、正式な発表はこれからになります。

ゲーム開発の仕事のおもしろさ、やりがいはどのようなところでしょうか?

ゲーム開発は、発売すれば日本のみならず、世界中の人から見てもらえる可能性があり、消費者からの反応を見られるのがとても楽しく、やりがいを感じます。特に近年は、アメリカ、北米などパソコンでゲームをする文化が強い国からの反響が大きいです。ゲームを作る段階では、キャラクターを育成したり、「こういう反応をしてほしい」とユーザーの行動をあらかじめ想定したりします。その結果、思っていた通りの反応が返ってくることもある一方で、作り手の予測を超えて「こんなことをするのか!」といったことも起きるので、そこがおもしろいところですね。

大阪を拠点にされていますが、全国展開などは考えていますか?

大阪は、業界の距離感が近く、仕事をする上ではやりやすい環境です。特に、弊社は大半が開発者で営業経験者がいないので、知り合いの会社に声を掛け仕事の話を持っていけるのは、大阪ならではの良さですね。ただ、良くも悪くもすぐに噂が広まりますから、良い評判を広げることで「一緒に仕事したい」と言ってくれる仲間を募っていきたいです。
全国展開については、2022年4月、私自身が株主となり、東京に「株式会社クリアレスト」という会社を創業しました。今後は、大阪と東京と二本柱で展開していく予定です。

現在抱えている課題などは、ありますか?

第一の課題は、採用面です。設立当初は、知人からの紹介による経験者の中途入社も多かったのですが、最近は新卒採用ベースになってきているため、即戦力となる人材の確保が難しくなってきています。1本のゲームを作るには100人規模の人員が必要なのです。例えば自社で開発したブランドを築いていくためには、即戦力となる優秀な人材を多く採用していかねばなりません。
第二の課題は、経営面です。資金がないと、自分たちで何かを作ろうと思ってもなかなかできません。自社で開発し、自社主導で他社と共同制作していく作品を手掛けるためにも、さらに利益を生んでいくことは今後の課題だと思っています。

ゲーム開発の現場を次世代へと受け継ぎ、エンタメ業界を盛り上げていきたい

 

 

ホームページには「開発者ブログ」がありますが、これを書くことで良かったことなどありますか?

まだ始めて日が浅いものの、取引先から「ブログやっているんだね」と言われることもあり、話題の種になっているのではないでしょうか。ホームページでは掲載できない開発実績もありますので、弊社の理念やプログラマーの考えなどが少しでも伝わればという思いから始めました。
特に新卒の人たちは、面接前に必ずホームページをチェックするでしょうから、これから入社を考えている人たちにぜひ見ていただきたいという思いがあります。

起業から約3年半が経過しました。これまでを振り返るとともに、今後どのような社内体制を考えていますか?

これまでは私が指示を出し、判断を仰いでもらいながら進めていくことが多かったのですが、会社の規模が大きくなるにつれて部署ごとの統制を築いていく必要があると考えています。現在のように私主導となっていると、融通が利きやすい部分はあるものの、自身の手が離せないときに判断が遅くなることもあるため、スタッフそれぞれに責任を持ってもらえるような体制づくりを徐々に進めているところです。

一緒に働くスタッフに対して、会社としてどのようなことを求めますか?

常に新しい技術に対してアンテナを張り続け、新しいものを取り入れていく意識を持ってもらいたいです。この業界は昔からブラックな部分が多いといわれていますが、スタッフそれぞれが自分の時間を作れるように、ホワイトな方向に持っていこうとしています。こういうクリエイティブな仕事は、常にアイデアを生み出していくことが大切です。しかし、仕事ばかりだと良いアイデアも生まれません。ゲーム以外の趣味も仕事に関わってくることがあると思うのでプライベートな時間も大切にしてほしいですね。

今後の展望についてお聞かせください。

基本的には、「売れるゲーム」「面白いゲーム」を作っていくことを根底に、「クロスプラススタジオといえばこの作品」といえるような、自社の看板となるタイトルを持ちたいです。
その上でゲーム業界は人手不足なので、教育として中高生向けのプログラミングスクールを構築し、業界を盛り上げていきたいと考えています。私自身、現在大阪アミューズメントメディア専門学校で非常勤講師を務めており、専門学校で学ぶようなことを中高生から始めても良いのではないかという思いがあります。

ゲーム・エンタメ業界への就職を目指している人へのメッセージをお願いします。

ゲームが好きなこととゲームを作ることは、別ですから、まずは作ることを好きになってほしいです。
ゲーム業界には、プログラマー、プランナーなどいろいろな職種がありますが、プログラマーを目指してプランナーになった人、デザイナーからプログラマーになった人もたくさんいます。
自身に何が向いているかについては、やってみないとわからない部分もあるので、学生のうちは一つに決めず、まず好きになることを大前提に志を持ち続けることが大事です。弊社では、好きなものをビジネスにつなげていくところまで考えられる人材を起用していきたいです。
また、教育面において、副業で講師を勤めてくれるクリエイターも募集しています。学生たちがプロのクリエイターから直接話を聞ける機会があると、業界人口増加にもつながります。世代ごとに規模が大きくなっていくゲーム開発の現場を次世代へと受け継ぎ、エンターテインメント業界をさらに盛り上げていきたいです。

 

取材日:2022年4月11日 ライター:堀内 優美

株式会社クロスプラススタジオ

  • 代表者名:川本 恵史
  • 設立年月:2018年9月3日
  • 資本金:1,000,000円
  • 事業内容:ゲームソフトの企画・開発・運営
  • 所在地:〒533-0033 大阪府大阪市東淀川区東中島1-6-14 新大阪第二日大ビル108
  • URL:https://crossplus-studio.jp/
  • お問い合わせ先:上記サイト「問い合わせ」フォームより

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP