WEB・モバイル2022.04.06

「社員が望むなら事業を180度転換してもいい」。電気関連技術×クリエイティブで描く自由な未来

高松
株式会社藤井システムエンジニアリング 代表取締役
Haruki Fujii
藤井 晴樹

香川・多度津町を拠点に事業拡大を続ける藤井システムエンジニアリング。受配電設備やシステムといった専門領域に強みを持ち、近年ではデジタルサイネージやウェブ制作・運用などの新規事業も積極的に展開しています。 従来の強みだけにとらわれない成長の背景には、一人ひとりの社員と向き合い、ともに「10年ビジョン」として10年後の未来を描く藤井晴樹(ふじい はるき)さんの思いがありました。

「1日20時間働き、元日も稼働」。がむしゃらだった個人事業主時代

藤井さんは18歳で就職し、その後はいわゆる「一人親方」として独立したそうですね。当時の歩みについてお聞かせください。

工業高校を卒業して大手電機メーカーの子会社に就職しました。そこではプログラマーとして働き、仕事は充実していましたが、「もっと収入を増やしたい」という思いで独立を目指すようになりました。
幸いだったのは、当時の上司や先輩が独立への道筋を作ってくれたこと。おかげで私は個人事業主となってからも、その電機メーカー子会社の仕事を請け続けられました。独立当初から売り上げは順調で、ほとんど経費がかからない状況だったこともあり、収入は会社員時代よりも大幅に増えましたね。その後は事業を拡大しながら社員を雇用するようになり、一定の売り上げ規模になった段階で法人化しました。

創業事業である受配電設備関連の事業は、「画面ソフトウェア設計」や「PLCソフトウェア設計」といった高度な技術・経験が求められる分野だと思います。貴社が長年にわたり大手顧客から信頼を得ている秘訣はどこにあるのでしょうか。

技術的な側面で言えば、私はプログラマーとしては“五流”だと思っています。技術に長けた人なら5行で済むプログラムに、頭の固い私は10行かけてしまうことも。
それでもお客さまに選んでいただけるのは、「人」の部分が評価されているからだと自負しています。独立以来、私はどんなに忙しいときでも、お客さまからのご依頼を決して断りませんでした。お盆や年末年始の時期は案件が重なりがちで、ある年の正月には、元日から1人で現場に入っていたこともあります。20代のころは1日20時間くらい働いていた時期もありました。たくさん案件をこなして稼ぎたかったし、何よりも私に声をかけてくれるお客さまの役に立ちたかったんです。
同じような働き方を今の社員に求めることはできませんし、そんなふうに動いてほしいとも思っていません。ただ、現在の当社があるのは、こうやって地道に信頼を積み重ねてきたからこそだと思っています。

新規事業でも、頑固にクオリティを追求する

近年はデジタルサイネージやウェブ制作など、新たな事業を積極的に展開されています。

おかげさまで、受配電事業は強固な収益基盤となりました。これを土台に新規事業を積極的に進め、当社ならではの技術力を生かしていきたいと考えています。
デジタルサイネージ事業では、街にあふれている一般的な広告媒体としてではなく、人材採用に特化して企業の従業員募集専用のデジタルサイネージを作りました。
ウェブ制作では、運用にも力を入れているのが特徴です。売れるサイト作りとしてはSEO対策などが一般的ですが、私たちはページ数と情報量にこだわり、私たち自身が毎月お客さまを取材してコンテンツを提供しています。

制作・納品して終わりではなく、顧客の成功のために関わり続けていくのですね。

はい。クオリティにも妥協しません。
たとえば私たちが制作したウェブサイトのコンテンツのなかに1カ所、誤字があったとします。他社では「すぐに修正します、すみません」程度で済ませることかもしれない。しかし私たちは、たった1カ所の誤字だとしても原因を検証し、再発防止策を記した報告書をお客さまへ提出します。
もちろん人間ですから、ミスをゼロにすることはできないでしょう。大切なのは同じミスを繰り返さないために真剣に動けるかどうか。こうした姿勢があるからこそお客さまから信頼され、「ここまでやる会社はないよね」と言っていただけるんです。

良い意味での「頑固さ」を感じます。なぜここまで徹底できるのでしょうか。

私は何事も、まっすぐじゃないと気が済まないんですよね。長男として、子どものころから「お前がしっかりせないかん」と言われ続けて育ったことが影響しているのかもしれません。自分自身にも常に「まっすぐに仕事ができているか」「ぶれていないか」と問いかけながら仕事をしています。

会社や事業の枠組みよりも「人」が大切。月1回の社長面談で相互理解を深める

今後に向けてはどのような展望を描いていますか?

具体的な事業アイデアとしては、電気関係の知識を生かして電気自動車の普及に貢献するインフラ設計や施工にも挑戦していきたいと考えています。アパートやマンションでも安価に設置でき、効率よく充電できる設備が普及すれば、電気自動車に乗り換えたいと考えるカーユーザーがどんどん増えていくはずです。
こうした展望の根底にあるのが、「技術力で『スゴイ!』を世界へ」を合言葉にして10年後の未来を描く「10年ビジョン」です。社員一人ひとりとのコミュニケーションに基づき、みんなと一緒に実現したい未来や、みんなが幸せになれる将来像を表現しました。この10年ビジョンを具体化したイラストは社員が描いてくれたのです。

「10年ビジョン」イラスト

そして、こうした事業を展開していくために何よりも大切なのは、社員が働きやすい環境を作り、仕事を楽しんでもらうことです。会社は単なる器であり、真っ白な入れ物でしかありません。そこに集まる人たちの個性によって色がつき、色が混ざり合うことによって独自の価値が生まれていくのではないでしょうか。だから、会社や事業の枠組みよりも人が大切。極端に言えば、社員全員が望むなら、社業を180度転換してもいいとさえ思っています。

社員のみなさんの思いと向き合うために取り組んでいることはありますか?

現在は毎月1回、30〜60分の「社長面談」を全社員と行っています。この場では仕事で成果を出せるようにするためのアドバイスはもちろん、プライベートのことも互いに腹を割って話せるようにしています。普段は顧客先に常駐している社員もいるので、こうしたコミュニケーションが本当に大切なんですよ。たとえば先日は、若い社員から「付き合っているパートナーとの関係」を相談されたこともありました。

最近は1on1(上司と部下の1対1の面談)を導入する企業が増えていますが、「若い部下とどんな話をすればいいか分からない」と悩む上司も多いようです。藤井さんはどうやって、プライベートも含む打ち解けた会話をしているのでしょう?

20代前半の社員と話すときには、なかなか話題の共通項が持てないこともあります。そんなときはまず自分から腹を割って話すようにしていますね。「僕の若いころは、とにかく金を稼げればいいと思って勘違いしていたんだよね」とか。
そうやって上司から自分をさらけ出し、打ち解けた会話をすることによって、部下もどんどん上司に興味を持ち、質問してくれるようになります。互いのことをよく知っているから、普段の仕事の場面でもスムーズに意思疎通が図れるようになるんです。

事業が広がっていくなかで、今後はさらに多様な人材が必要になるのでは。

そうですね。高い技術力を持つ人材が増えている一方で、クリエイティブに強みを持つ人材はまだまだ不足しています。 足元のウェブ事業においては、「デザイナー1名・コーダー1名・セールス1名」を1チームとする体制を広げていきたいと考えているんです。高いクオリティでデザインやコーディングに対応し、お客さまのご要望やご質問に即答できるセールスがいる。そんなチームを増やして、より多くのニーズに応えていきたいと思っています。

取材日:2022年2月22日 ライター:多田 慎介

株式会社藤井システムエンジニアリング

  • 代表者名:藤井 晴樹
  • 創立年月:2007年1月
  • 設立年月:2015年9月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:受配電システム向けソフトウェア設計・制作・保守、受変電設備更新・改造作業、ウェブ事業全般、IoTソフトウェア開発
  • 所在地:〒764-0005 香川県仲多度郡多度津町大通り4-60
  • 電話番号:0877-85-8726
  • URL:https://f-se.jp/

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