ゲーム2021.02.17

ユーザーも作り手も楽しめる、最高の自社開発ゲームを創りたい!

大阪
株式会社イグニッション・エム 代表取締役社長 シードプランナー
Takafumi Masuda
升田 貴文

スマートフォンやコンシューマー機向けに、ゲームの開発・配信・運営のすべてを自社展開する、株式会社イグニッション・エム。代表取締役の升田 貴文(ますだ たかふみ)さんは前社在籍中、世界で大ヒットしたスマホゲーム『にゃんこ大戦争』のプロジェクトマネージャーとして、企画や開発に関与、その他キャラクターデザインなども手掛けました。

この成功経験を生かして、現在はヒットタイトルを生むための種作りを行う「シードプランナー」の役割も担っています。升田さんに会社立ち上げまでの経緯や仕事への思い、今後の展望について伺いました。

スタッフがゼロの会社。ゼロからものづくりに関われる環境に飛び込む

まず、会社立ち上げまでのキャリアをお伺いします。

子供の頃からゲームが大好きで、中学生のときにはゲームソフトを買いたいがために、新聞配達のアルバイトをするほどでした。ゲーム開発に興味を持ち始めたのも中学時代です。父が電子部品関係の仕事をしていたことから、パソコンに触れることができ、プログラミングの基礎を独学で勉強したことで、ゲームクリエイターという職業に憧れを抱くようになりました。

高校を卒業して専門学校で2年学んだものの、ゲーム会社に就職しようとしても全くご縁がなくて、一般企業に入る予定でした。でも、いざ卒業して入社日が近付くと「やはり違うな」と諦め切れなくなって。内定を断り、背水の陣でゲーム業界の就職活動を再開しました。 大手でのアルバイト採用も決まりましたが、最終的に選んだのは当時まだ無名だった会社でした。社長以外スタッフがいませんでしたが、自分でゼロからものづくりができてやりがいがありそうだと魅力を感じたんです。

どんなお仕事をされていましたか?

入社早々から、コンシューマーゲーム機「PlayStation(プレイステーション)」用のソフト開発にディレクターとして携わりました。最初は外部の開発部隊をコントロールしながら、その後は社内で開発する体制を整えるべく、エンジニアやグラフィックデザイナーなどスタッフの採用も任せてもらいながら、試行錯誤を重ねてきました。

2000年に入って、会社が携帯電話向けのゲームに参入してからは、月に2本のペースでタイトルを作ってきました。なかでもタワーディフェンスゲーム『にゃんこ大戦争』は、プロジェクトマネージャーとして企画や開発、キャラクターデザインなども含めて担当した思い入れのある作品です。 最初はiモード対応携帯電話用アプリのコンテンツとして配信していましたが、スマートフォンの普及に伴いスマホ向けに移植開発して2012年にリリースしたところ、半年で600万のダウンロードを獲得するヒットタイトルとして注目いただけました。

その後、独立して今の会社を立ち上げた経緯をお聞かせください。

『にゃんこ大戦争』が成功したことで、そろそろ新しいステージでゼロから挑戦したいと感じるようになりました。創業期からこれまで、クリエイティブにしても人事やクオリティ管理にしても、自分の思うようにやらせてもらって実績を積んだ自負があります。でも在籍した18年間に社員が60人以上に増え、組織が大きくなるにつれて、コンセンサスを取りながら物事を進める必要が出てきたことにもどかしさもあって。

それに、子供の頃から自営でやってきた父を背中で見て、いつかは代表者になりたい気持ちも持っていたので良いタイミングだと思い、退職して2016年2月に今の会社を立ち上げました。

自社開発にこだわり、人に楽しんでもらえるゲーム作り

現在の事業内容と、他社と比べた強みをお聞かせください。

ゲームの開発・配信・運営事業で、スマートフォン、コンシューマー、PC問わず展開しています。自由な発想やスタンスで作り出すことを大事にしているので、受託はせず完全自社パブリッシュにこだわり、事業として軌道に乗せられているのが強みです。

社員は17人で、エンジニア7人、デザイナー6人、プランナーや運営などの職種で4人。韓国人や中国人のスタッフも在籍し、ローカライズも社内でまかなえています。

立ち上げ当初はどんなことが大変でしたか?

単純な動作で誰でも気軽に遊びやすい「ハイパーカジュアル」のジャンルで展開しようと、第1弾のタイトルをリリースしたものの、思ったほどうまくいかなくて。そこで、もう少し戦略性が求められる内容でゲームを趣味とする「ミドルコア」向けに転換を図ることにしたんです。

前職でも、『にゃんこ大戦争』をゼロからミドルコアに作り上げるまでの過程を経験しているので、やれる自信はありましたが、グラフィックやプランニングを担当する私とエンジニア2人だけでは手が回らず、人材を増強するのに数千万円単位の資金調達に苦労しました。私自身の資産も切り崩しましたが、前職での実績が評価されて銀行から資金確保できたおかげで、無事、軌道に乗せることができました。

そうして2017年に開発されたのが、参加者が割り当てのキャラクターを操作するRPG『ぼくとネコ』ですね。「Google Play ベスト オブ 2018」インディー部門賞に選ばれて話題になりました。『にゃんこ大戦争』とはどう違いますか?

一見すると似ていそうですが、『ぼくとネコ』は『にゃんこ大戦争』ではできなかったことをやろうと思って作りました。カジュアルな見た目でありつつも深く楽しめるゲーム性で、ボタン一つで多彩なアクションができるので、ぜひスマホからダウンロードして遊んでみてください。

2021年2月18日には最新作『RASPBERRY MASH(ラズベリーマッシュ)』も発売予定ですね。

当社初のコンシューマーゲームでNintendo Switch、Steamを予定していますが、一先ず先にNintendo Switch版を2月18日にストア公開することになりました。アクション、シューティング、ローグライクそしてピクセルアートが融合したゲームで、ファンタジーやバイオレンス要素のある爽快感あふれる内容となっていますので、楽しみにしてください。

「ファンタジー&兵器&バイオレンス…「神」への「復讐」を心に誓う少女、剣、槍、レーザー、ロケットランチャー…などなど、異なる性能の武器を駆使して、立ちふさがる敵をなぎ倒せ! 近距離・遠距離攻撃とドッジロールを駆使してダンジョンのクリアを目指す、アクション、シューティング、ローグライクそしてピクセルアートが融合したゲーム! RASPBERRY MASH(ラズベリーマッシュ)の詳細はこちら。

成功体験を生かして、ヒットタイトルを作り出すサポートをしたい

代表取締役に加えて、「シードプランナー」という肩書きもありますが、仕事においてどんなことを心がけていますか?

「シードプランナー」は企画の基となる種作りを支援する立場です。ヒットタイトルを作るためのアイデアの種を与えて、それを皆で膨らませて、より大きな規模の作品を会社として作っていくのが理想です。また、ヒットさせるためのノウハウもたくさん持っているので、それらを活かしてサポートしています。

また会社の代表としては、スタッフの気持ちやモチベーションをしっかり把握しながら進めていきたいです。自分一人の力は限られているので、スタッフ一人一人が働きやすく、前向きにチャレンジができるような、風通しの良い会社作りを心がけたいですね。

いろんな人に成功のチャンスをつかみ取ってもらいたくて。ゲーム制作やデザインのすごい才能を持っているのに、引っ込み思案な性格で会社になかなかアピールができなくて、せっかくの才能がくすぶってしまう人たちを前職で見てきたので。当社では全ての人に「モチベーション高く」仕事をしてもらい、成功体験を味わってほしいんです。やはり、作り手自身がゲーム作りを楽しめるからこそ、人にも楽しさを提供できますから。

会社としてスタッフにどんなことを求めていますか。

ただ作るだけではなくて、ユーザーに楽しんでもらうことを意識してほしいですね。「どうやったらユーザーに面白さが伝わるか?」とか、同じデザインでも「こうすると皆が興味を引いて、遊びたくなるんじゃないか?」とかをユーザー目線で考える。仕様通りに作るだけでは受託開発と変わらないので、自分なりに「こうしたら楽しくなる」というエッセンスを加えてもらいたいです。

ちなみに社名の「イグニッション」とは、エンジンなどの「点火装置」のこと。「作り手魂に火をつける」、「遊び心に火をつける」など、作る側にも遊ぶ側にも起爆剤としての存在でありたいです。エムについては、「MakeのM」「MiracleのM」「升田のM」など(笑)、いろいろな捉え方ができます。

スタッフのパフォーマンスを高めるために取り組んでいることはありますか?

趣味を応援する「エンターテインメント研修手当」を毎月導入しています。漫画でもカメラでも自分がハマっていることなら何にでも支給可能です。作り手自身が何かに楽しめることは、誰かを楽しませるために大切ですから。それを開発にも生かしてほしいと思っています。

会社の今後の展望についてお聞かせください。

新しい技術やノウハウを日々吸収して技術力を高めつつ、安定した開発環境を提供するのが今後の目標です。開発環境さえ整えば、たとえば企画力が高いスタッフが、自分のアイデアをスピーディーにゲームとして形に落とし込むことができ、よりよい商品開発に取り組みやすくなると思います。

ゲームクリエイターを志す方にメッセージをお願いします。

才能のある人にしかなれない職業だと思われがちですが、やる気さえあれば誰にでもゲームクリエイターになれるチャンスはあります。でも一歩踏み出すことに躊躇(ちゅうちょ)する気持ちも分かる。その人の持つ才能や気持ちをくんで、後押しできる当社のような環境に身を置けば自信もつくと思うので、興味のある方はぜひ門をたたいてください。

かつて前職の社長が相当な覚悟をもって私を1人目のスタッフとして採用してくださったので、さまざまな経験をさせてもらえた恩があるからこそ、今度は若い人たちがヒットタイトルを作れるクリエイターに成長するようサポートをしていきます。

取材日:2020年12月11日 ライター:小田原 衣利

株式会社イグニッション・エム

  • 代表者名:代表取締役 升田貴文
  • 設立年月:2016年2月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:ソフトウェア開発、ゲーム開発・配信・運営(コンシューマー、スマートフォン、PC)
  • 所在地:〒531-0072 大阪府大阪市北区豊崎3-20-9 三栄ビル10F
  • 電話番号:06-4256-8343
  • URL:https://www.ign-m.com/
  • お問い合わせ先:上記URLのCONTACTより

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