「渋谷に行ってきました」

第133話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽氏

岩井俊二監督の代表作の一つ「スワロウテイル」が公開30周年を記念して4Kリマスター版で上映されている話を聞きつけて渋谷のパルコに観に行くことにしました。渋谷はときどき訪れますが、行き先はいつも駅横にあるのんべい横丁(※写真①)なので平日の夜ばかり。日曜昼間の渋谷パルコに行くのは久々な気がします。

写真①

それにしても渋谷という街は永遠に工事中。この分だとサグラダファミリアの方が先に完成しちゃいそうです。地下鉄銀座線渋谷駅のなぜか地上3階にある改札口を抜けてからスクランブル交差点までの通路を歩く若い人たちのスピードに付いていくのはタイヘン。僕が歳と共に遅くなっているのかもしれませんが、近所や他の街を歩くときには感じないので渋谷ならではの速度。

若者とインバウンドで溢れかえったスクランブル交差点を二三度ぶつかりながら渡り終えると渋谷西武があるいつもの景色なのですが少し様子が違います。閉店セール中(※写真②)。

写真②

そっか、いつだったかニュースで言ってたなぁ。目の前で見ると俄然寂しい気持ちになりました。ここには仕事でも何度かお世話になりました。バレンタインやクリスマスのポスター(※写真③)を作ったりもしたなぁ。前を歩くカップルが「後は何になるのかな?」「なんだろね?アパとかなんじゃないの」と不穏な会話をしています。気になったのですぐにスマホで調べる悪いクセを発動しましたがわかりませんでした。

そごう・西武(2010年)
写真③

渋谷西武の横を抜け公園通りに入っても人の波は途切れません。この道には懐かしい思い出があります。僕が新入社員のときの話。会社は西鉄エージェンシーという福岡の広告代理店。世間はちょうどバブルの時代。僕のいたクリエーティブ部はSP(セールスプロモーション)部と同じフロアでした。当時のSP部は個性的というかクセの強い人が多くて、中でもベテランの吉永さんは面白い人でした。仕事よりも趣味に全力のかなりアートな人で占いやマッサージや紙芝居が得意でした。11月の終わり頃、僕はイラストレータとの打ち合わせで初めての東京出張。日帰りですがちょっとワクワク。同じタイミングでSP部の吉永さんはクリスマスの流通視察で東京出張。表参道や渋谷の公園通りがどんな飾り付けや催しで盛り上げているのかを見て撮影して社内に共有するのが役目。「スケジュールが重なってるのでせっかくだから門田君も吉永さんの横について東京を見ておいで。日帰りじゃなくて1泊していいから」と部長から言われ二人で行くことになりました。僕の打ち合わせはスムーズに終わり、夕方に渋谷で吉永さんと合流。イルミネーションが点灯してきれいな渋谷。西武やロフトやパルコやタワレコなどを見てまわりました。僕の横で吉永さんは精力的に一眼レフで写真を撮りまくっていました。夜は居酒屋で盛んに手相を褒めていただき何一つ仕事の話はせず、土曜日の朝に福岡へ戻りました。

翌週月曜日の朝。隣のSP部のN部長がデスクで怒鳴っています。前には吉永さんが立っています。「ヨシナガ!お前これじゃ何だかわからんだろうが。こことかこことかは何色なんだよ?バカモン!」吉永さんはクリスマスの飾り付けをした街の写真を全てモノクロで撮ってきたのでした。
全くアートな人です。お元気でしょうか。

さて、公園通りの坂を上ってパルコに到着。エレベーターは混んでいたのでエスカレーターで上がります。エスカレーターも大混雑。そんな中、各階でロボットが巡回警備をしています。二度見しました(※写真④)。

写真④

渋谷はいち早く未来のようです。8階に着きました。満員の映画館(※写真⑤)。お客さんの層は幅広く老若男女。大人気です。上映時間148分。面白かった。ドキドキやゾワゾワしながら途中ダレることなく見終わりました。そして思いました。これ、初見だ!

写真⑤

1996年、今から30年前の9月。僕は確かに「スワロウテイル」を観に行きました。当時新進気鋭の監督の問題作として注目の映画。同じ歳だった(今もですが)僕は2度目の転職でまた福岡の会社(電通九州)にいました。昼食後仕事をさぼって向かいました。場所は福岡の親不孝通りに当時あったシネテリエ天神というちょっとマニアックな映画館。窓口でチケットを買って入館したところで鞄の中から携帯電話の着信音。まだスマホやSNSはなく、iモードすらない時代。鳴れば取るしかありません。イヤイヤ出ると、「急ぎの競合プレがあるからすぐに会社に戻って」と上司からの命令。クライアントはそれこそその携帯電話のドコモさんでした。あのときのプレゼンの勝敗は覚えてません。その後忙しくなったのか、もう一度観に行かなかったのですね。でもそのおかげで、今回初見でとても楽しめました。今もまだ頭の中でCharaの「あいのうた」が繰り返し流れています。

ところで、過去の名作の4Kリマスター版が次々出ていますが、元のままの方が味があっていい場合もあるという話はまたの機会に。

プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽氏
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

門田コピー工場株式会社 https://copy.co.jp/

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP