「なまえのはなし」

第134話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽氏

 

俺の生きる道に今日も行列ができています。

俺の生きる道、阿吽、大和、富白、武骨、案山子、豚山、鴨to葱、青葉、わいず、ばんから、福徳、中本、藪づか、イエロー、鶏王子、牛魔王、あいだや、忍者、こかげ、えぞ菊、天神家、はるか、一風堂、一蘭……。

いずれも僕の事務所のそばにあるラーメン屋さんの名前です(※そばにあるは偶然なので無視してください)。
上野・御徒町界隈にはラーメン店がざっと130ほどあるそうです。

王城、古城、ラパン、ボナール、トリコロール、丘、みつばち、ギャラン、みはし、猫まる、六曜館、ダンケ、マドンナ―、桂、ハード、ぶるっくす、美珈、ひまわり、ドトール、ルノワール、コメダ、スターバックス……。

同じく僕の事務所のそばにある喫茶店の名前。この界隈は喫茶店の激戦区で300店以上あるそうです。

そしてこの地域はスナックが多いことでも有名。
アダン、ココロ、ヘブン、ニコ、ハンター、きらら、あお、くるみ、純子、クレオ、あむーる、ながい、由香、ぴんぽん、おゆまる、あやめ、はなぶさ、あっこ、ルル、ゆう、ハートのエース、しみず、春、小粋、みゆき……。

こちらは全部で130店舗ほど。ラーメン屋さんとほぼ同じ数あるそうです。ちなみに僕がよく行くお店はプラネットという名前です。

さて、これらどの名前も何のお店かというのがわかるとなるほどそうかと思いますが、入れ替わるとヘンな感じになります。たとえば20時以降に見ると(事務所の対面にあるので窓からよく見えます)いつも長い行列ができているラーメン豚山。これはやっぱりラーメン屋さんがドンピシャ。喫茶豚山でもスナック豚山でも流行らないと思います。逆はどうでしょう。ラーメンみつばちはちょっと甘そう。ラーメンハートのエースも店主の顔が浮かびません。でも喫茶とスナックは相性がよさそうです。みつばちはスナックでもいけるし、現に、その昔福岡の中洲には「クラブみつばち」という老舗の高級店がありました。純子やくるみやみゆきもきっとどこかにその名の喫茶店があるはずです。

画像①

 

画像②
画像③

では、もし僕が自分のお店を出すなら屋号は何にするのでしょう。そもそも僕の本業はコピーライターです。
つまりいわゆるネーミングは専門領域。これまで相当な数を作りました。特に若手と呼ばれていた頃は案出し要員としてあらゆる業種のサービス名や店舗や施設の名前を考えました。採用されたものの中にはすでに閉店したり変わったものもありますがいくつかは元気に頑張っています。ラーメン屋さんに近いものだと東京の東中野にある油そばのお店の名前をつけさせてもらいました。確かあれは2016年だったので無事に10年経ちました。屋号は「油山」(※写真①)。地元福岡で毎日見ていた山の名前をそのままいただきました。コピーライターの素直な気持ちとしてはもう少し読みやすい書体にしてほしかった(※写真②)のですが、繁盛していれば文句ありません。あと長く続いているものだと大分にあるマリーンパレス水族館「うみたまご」(※写真③)はこの名前でリニューアルしてからもう22年になります。こちらは全部で500案くらいは出した記憶があります。今なら、AIが一瞬で考えてくれそうです。

しかしこれらは所詮他人のお店(施設)。自分のお店となると深く悩みます。仮にラーメン屋さんの場合。俺の生きる道なんてかっこよくはできません。これまでの人生、黒いTシャツが似合う生き方をしてきませんでした。せいぜい「僕のせい一杯」とかダジャレ的な名前で大スベリして即閉店です。あとは誰からも親しみを持たれる「ちゃん付け」型でしょうか。「かどちゃんラーメン」「もんちゃんラーメン」。あ、意外と悪くないかも。1年くらいは持ちそうな気がします。

喫茶店だと何がいいかな?学生の頃によく通ったお店は「来夢来人」、読み方はライムライト。チャップリンを連想させるようなロゴマークのお店でした。バナナジュースがおいしかった。あとは「みなみ」にもよく行きました。これはもう当時はアニメ「タッチ」の全盛期。いたる場所にみなみちゃんがいました。うーむ、何にしようか。悩みますね、難しい。「HIMAGINE」で「ヒマジン」と読ませて店内のBGMはずっとビートルズなんてね。ダメですね。コピーライターはすぐにダジャレに逃げてしまいます 汗。

続いてスナックだと何がいいかな?いやいや違う。こんな秋晴れの気持ちよい休日の昼下がりに僕は一体何を考えているのでしょう。ときどき襲ってくる白昼夢。そもそも僕に飲食業はムリ。食べることは好きですが作る経験は皆無。ご飯の炊き方もわかりません。まな板や包丁を買ったことは一度もありません。365日全食外食なので今後もそちらの経営にはかかわらず食べることに専念しようと思います。寝言は寝てから言うことにします。

ところで、僕の事務所のお隣は「うさぎや」というどら焼き屋さんだけど虎屋、亀十、鶴屋、すずめや等々和菓子屋さんには動物の名前が多いなぁという話はまたの機会に。

プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽氏
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

門田コピー工場株式会社 https://copy.co.jp/

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