「シン・青木まりこ現象」

第131話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽

先月26日のお昼少し前。事務所の観葉植物に水をやっていたとき。あれ?揺れてるなと思った途端に本棚からバタバタバタと本が3冊床に落ちてきました。地震です。すぐにテレビを付けると震源地は千葉県東部で震度4。事務所のある東京都台東区は震度2。大したことないのに恐い。僕の事務所は5階建てのビルの5階なのですが、何せ古い建物。築63年、エレベータなし。令和の基準を満たしているのか心配なくらい揺れた気がしました。が、ふと冷静に。揺れよりも本の積み上げ方に問題がありそう。

僕の事務所を訪ねてくる方はクライアントさん、先輩、後輩、同僚、悪友と色々ですが、皆さん口を揃えて「地震がきたらヤバいでしょ、この本の数」とおっしゃいます。そうなのです。本の数に見合わない事務所の狭さ。なので本は縦に積み上げられ数カ所で天井にまで達しています(※写真①②③)。3年と少し前、独立をして引っ越したときにかなり断捨離をして本も半分に減らしたのですが、それからまた毎月徐々に増えてしまい、本棚に収まらず、今押入れには段ボール28箱。ざっと計算すると全部で5千冊以上。大半は未読(苦笑)。仮に平均寿命まで生きたとしても、とても全部は読みきれません。

写真①

写真②

写真③

ということは、もう今後は本を買う必要はないはずです。だって今積まれている本は書店で見て手に取って読みたいと思った本ばかりだから。因みに僕は電子書籍はダメでした。キンドル(kindle)も持っていますし何冊かは試しましたがまるで別物。本は装丁や紙質やにおいや栞の有り無しまで含めて本なのですから。大好きだから仕方ないのです。書籍愛。いや、書店愛かな。いやいや、愛というより中毒か。本屋さんが大好きなのです。

本屋さんといえば、僕が学生の頃に青木まりこ現象という言葉がサブカル界隈を中心に流行りました。Z世代やα世代の皆さんにはきっと意味不明でしょう。80年代半ばくらいの用語で、本屋さんに行くと急に便意を催す現象をそう呼んでいました。条件反射説、ストレス説、リラックス効果説など色々言われましたが、都市伝説的なものだったのかな。

そのほかにも本のにおいによる刺激説というのもありました。これには共感した記憶があります。というのも僕は街を歩いていて近くに本屋さんのにおいを感じることが頻繁にあります。仕事で海外の街でロケハン中、現地のコーディネーターさんに「すぐ近くに本屋さんがあるでしょ?」と聞くと「はい、そこにありますよ。どうして?」とよく言われました。においがするのです。何の役にもたたない特技。

そしてそのにおいに引き込まれ本屋さんに入ると出るときには必ず重い荷物が増えているのです。その結果今も事務所の片隅で見慣れた紀伊國屋書店の紙袋を発見(※写真④)。

写真④

中の本を取り出し並べてみます(※写真⑤)。

写真⑤

〇「心の闇」綾辻行人著・講談社文庫・550円
〇「君が手にするはずだった黄金について」小川哲著・新潮文庫・693円
〇「目が」背筋著・ポプラ社・715円
〇「本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件」白井智之著・実業之日本社・660円
〇「ショートショートなSF」日本SF作家クラブ編・ハヤカワ文庫・1,584円
〇「What’s that?」ハンドイットオーバー著・CEメディアハウス・1,430円
〇「banana flavored chewing gum」篠原仮眠著・ナナロク社・1,980円
〇「津田日記」津田篤宏著・新潮社・1,760円
〇「千原ジュニアが五年で描き溜めた四コマ漫画全集」千原ジュニア著・扶桑社・3,300円
〇「ハンディ版 それ犯罪かもしれない図鑑」小島洋祐監修・金の星社・1,540円
〇「週刊東洋経済7月4日号」東洋経済新報社・950円
以上11冊です。合計15,162円(税込)。ゲッ、高ッ!一緒に入っていたレシートの控えを見ると購入したのは10日以上前(※写真⑥)。週刊誌はすでに次の号が出ていますし、何で買っちゃったんだろうという本も数冊あります。

写真⑥

本が売れない時代。本屋さんの数も減って、ピーク時の半分以下。出版業界も策を打つはずです。もしかすると本の紙かインクに麻薬的な何かを入れて、本屋さんに入るとつい買いたくなるなんてことはないでしょうか。その昔、漫画「包丁人味平」の天才カレー料理人鼻田香作が作った麻薬入りカレーのような仕掛け。本屋さんに入ると条件反射的に買ってしまう。これを僕は「シン・青木まりこ現象」と名付け、一種の病気だから仕方ないと諦め、本を買い続けるのでした。

ところで、僕は3年に一度くらいのペースで漫画に嵌るのですが、最近ジャケ買いというかタイトル買いしたのが「本なら売るほど」児島青著(※写真⑦)という今回のオチみたいな話はまたの機会に。

写真⑦

プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

門田コピー工場株式会社 https://copy.co.jp/

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