真夏の白昼夢!? @South London Gallery 後編
Ifas シリーズ 2026, Ranti Bam
さて、今回はSouth London Gallery(SLG)別館からRanti Bamの個展『Sacred Groves』の紹介です。
そこに現れたのは、高さ2メートル近くにも及ぶ大きな陶彫作品。身体を思わせる一方、樹木の幹のような趣を携えています。背後から森林の中で採取したと思われる鳥の鳴き声、川のせせらぎが聞こえてきます。
In Hearthlands, 2022 Ranti Bam (Video still from Performance in Osun-Osogbo Sacred Grove, Osogbo, Nigeria. Courtesy Ranti Bam and James Cohan, New York)
Ifasシリーズは、柔らかく湿った粘土を自身の体に抱き寄せながら、折り重なるような形状の器を作り出すことで制作されます。Bamは、粘土という素材と身体が触れ合うことが、同時に大地との精神的なつながりを深めることにもなると考えています。イファ(Ifá)とは、ベナン、ナイジェリア、トーゴにまたがるヨルバランド(Yorubaland)のヨルバ(Yoruba)族に起源を持つ、古代からの精神的伝統、哲学、そして占いの体系。また、知恵や運命、予言を司るヨルバの神を表します。Bamはラゴス出身のヨルバ族で、幼少期を英国で過ごし、ロンドンとラゴスを行き来しながら育ちました。
Ifas シリーズ 2026, Ranti Bam
こちらもまた身体的ですね。
Ifas シリーズ 2026, Ranti Bam樹木を彷彿とさせるだけでなく、女性が頭上に大切な荷物を乗せてバランスを取りながら運んでいるようにも見えます。そしてまたその大切なものがクレーンのようなもので搾取されているようにも見えます。
Ifas シリーズ 2026 (詳細), Ranti Bamその荷物のようなものの一つをよく見てみると、そこには南の島の風景が。向かいに見える地はラゴスでしょうか。ラゴスは、気候変動や海面上昇により、2050年から2100年頃には一部が水没する恐れがあり、深刻な洪水や海岸侵食のリスクに直面しています。まるで人が自然を搾取し続けた代償が浮かび上がってきているようで、考えさせられます。

Abstract Vessels シリーズ 2026, Ranti Bam
こちらはなんだかユーモラスな生き物を思わせる作品。粘土の板(スラブ)を巻き付け、重ね合わせて構築されています。Bamは布や模様のついた板の上で粘土を転がして表面に質感を写し取りながら、器に他の素材の痕跡を埋め込んでいます。また、表面に手作業で穴を開けたりすることで、内側に施された釉薬を垣間見せています。Bamが用いる色彩は、樹皮、森の地面に差し込む移ろいゆく光、暗い落ち枝の間から顔を出す共生植物の涼やかな緑色など、自然界から採り入れられたものだそう。

Afikun, 2026 Ranti Bam

Igbo, 2026 Ranti Bam

Untitled, 2026 (Film 10min.) Ranti Bam
Untitled, 2026 Ranti Bam今年の初め、Bamは、自身が幾度となく訪れている、「オスン-オソボ聖林 (Osun-Oshogbo Sacred Groves)」で時間を過ごしました。冒頭のBamが粘土を抱き寄せている写真はこの聖林です。ナイジェリア南西部のオスン(Osun)川沿いに位置するこの密林は、豊穣の神である「オスン」を崇拝する場所として、何世紀にもわたってヨルバ族の人々の信仰の対象でした。信仰体系に対する外部の偏見や環境の変化、土地利用への圧力といった要因が重なり、この地域に残る数少ない聖林の一つとなってしまったそうです。
オスン川の静かな流れを追っていく映像が浅瀬に向かうと、やがて醜いプラスチックのデブリ(瓦礫)が露わになります。聖林の魔法が消え夢から覚めたような現実を突きつけられると、川のせせらぎがオスンの嘆きに聞こえてきます。







