Khloé Kardashianが手がけたプロテイン入りスナック、パッケージがかわいいだけじゃなかった

Vol. 89
FIND IT. LOVE IT.
Sayuri Fujii
藤井さゆり氏

最近、Starbucks(スターバックス)でよく見かける「Khloud(クラウド)」というポップコーン。淡いブルーとピンクを基調にしたパッケージがかわいくて、なんとなく気になっていました。

 

@khloudfoods

Khloud review ft. @alexandra.sarubbi 🍿

♬ original sound – KhloudFoods

 

娘に「これ、最近Starbucksでよく置いてあるよね?」と言ったら、「それ、Khloé Kardashian(クロエ・カーダシアン)のだよ」と教えてもらいました。

 

え、あのカーダシアンファミリーのクロエ?

 

さすがはTikTok世代です。私はStarbucksの棚で何度も見ていたのに、娘はブランドの背景まで知っていました。

 

@khloudfoods Khloud Q&A with our founder @Khloé Kardashian ♬ original sound – KhloudFoods

 

Khloé Kardashianは、リアリティ番組「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」で知られるカーダシアン一家の一人。インフルエンサーで実業家のKim Kardashian(キム・カーダシアン)の妹であり、父違いの妹に、同じくKylie Cosmeticsを成功させたインフルエンサーのKylie Jenner(カイリー・ジェンナー)がいます。Khloé自身もファッションやウェルネス分野でビジネスを展開しています。

 

 
 
 
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左から、Kourtney、Kendall、Kylie、Khloé、Kim。

 

調べてみると、KhloudはKhloé Kardashianが2025年4月に販売スタートしたスナックブランド。ポップコーンとトルティーヤチップスがあり、どちらの商品にも1食あたり7gのプロテインが入っているところが特徴です。

 

今年8月には、コラーゲン2gを含む総プロテイン含量17gのトルティーヤチップスKhloud Plusの販売もスタートしました。コラーゲンチップスは、Walmart(ウォルマート)のみでの限定発売です。

 

ポップコーンは8種類、チップスは3種類、コラーゲンチップスは4種類のフレーバーがあり、いずれもグルテンフリー、全粒穀物(とうもろこしを丸ごと使った穀物原料)、シードオイル不使用(キャノーラ油やひまわり油などの種子由来油を不使用)。

 

ポップコーンには「Khloud Dust(クラウドダスト)」という乳由来のプロテインとシーズニングがまぶされていて、普通のお菓子のような軽さを保ちながら、1食7gのタンパク質を加えているのが特徴。

 

トルティーヤチップスは、プロテインシーズニングをまぶすことはせず、pea protein(えんどう豆由来のタンパク質)をコーン生地そのものに練り込み、焼き込んでいます。

 

Khloud Plusのコラーゲンチップスは、ベースにpea proteinを使い、そこに加水分解コラーゲン(コラーゲンを食品や飲料に使いやすくするために分解したもの)を加えています。

 

@khloudfoods

Khloé cooked here

♬ original sound – kardashion.jenner.clips

 

Khloudポップコーン

 

@khloudfoods

girl dinner

♬ Deep House Dance – Diva Production Music

 

Khloudトルティーヤチップス

 

@khloudfoods

Finishing touches 🤍 Stay tuned for more!

♬ hurt me – Maria Taktouk

 

Khloud Plusコラーゲンチップス

 

最初の商品であるポップコーンが発売されてからたったの1年ですが、Khloudの売上は前年比200%以上の成長を記録し、全米約3万店舗へ拡大しているほどの成長ぶりです。

 

なぜこんなに成長しているかというと、商品が時流に合っていたこと、ブランドの見せ方が新しかったこと、Starbucksを巨大な試食メディアとしたことの3つが挙げられます。

 

まず最大の追い風は、プロテインスナック市場そのものが伸びていること。Forbesによると、プロテインスナックはスナック市場全体の約3倍の速度で成長している中で、Khloudは、伸びている市場のど真ん中に入ったということ。誰もが日常的に食べているポップコーンやチップスにプロテインを足したというシンプルなスナックですが、昨今のプロテイン流行りの時流に合っていた、と言えるでしょう。

 

@khloudfoods

current amazon wellness hyperfixations

♬ Silky Spring – Yuuf

 

次に、従来のプロテイン商品の見え方を変えたこと。KhloudのCEOであるジェフ・ルべインステインは、プロテイン含量7g程度という、日常的な健康に気を使いたい人々向けの量にし、パッケージもファッション寄りに設計したと説明しています。

 

プロテインスナックと言えばプロテインバーなど「ジム・筋トレ」寄りのイメージでしたが、それを前面に出すのではなく、まず「おいしそうで、かわいいスナック」に見せたこと。これによって「プロテインバー」をはじめとする、従来の男性・フィットネス寄りだったプロテインスナックを、もっと広い層に開いたのが大きいです。ブランドの見せ方が新しかったと言えるでしょう。

 

@khloudfoods the lion doesn’t concern himself with toxic masculinity #khloud #proteinsnack ♬ original sound – NAYA

 

そして、特に面白いのがStarbucks効果です。冒頭で、私がStarbucksでよく置いてあるのを見かけて気になっていたと書きましたが、KhloudはStarbucksを広告媒体のように使っている、ということです。

 

Starbucksで、淡いピンクのパッケージのSweet and Salty Kettle Cornフレーバーのポップコーンを販売した翌月、そのフレーバーのAmazon売上がほぼ倍増、大手スーパーマーケットのTargetでも売上が伸びたのだそうです。

 

つまり、Starbucksで発見する → 食べてみる → 気に入ったらAmazonやTargetで大袋を買う、という流れが生まれているのです。

 

日本のStarbucksでは、棚に並ぶスナックも基本的にはStarbucksブランドの商品で、外部企業と組む場合も、共同開発やコラボレーションという形が多く見られます。一方、アメリカのStarbucksでは、独立したスナックブランドの商品が、そのブランドのまま棚に並びます。

 

さらにアメリカでは、Starbucksは街中だけでなく、病院、大学、オフィスビルなど、人々の日常のさまざまな場所にあります。KhloudにとってStarbucksは、単なる販売網ではありません。まだブランドを知らない人に一度試してもらうための、巨大な「試食メディア」として機能しているのです。

 

少なくとも日本のStarbucksでは、まだあまり見られないマーケティングの使い方です。

 

@khloudfoods The barista duo of our dreams 🫶 Find Khloud at a Starbucks near you! @Khloé Kardashian @Kris @Starbucks ♬ original sound – KhloudFoods

 

現在、Khloudは、Amazon、Target、Walmart、Starbucks、Costcoといった大型店舗で販売されており、発売から1年足らずで29,000店舗超、2026年夏には32,000店舗規模にまで、販売網を一気に広げています。商品が売れているから小売が採用し、その露出がさらに認知とトライアルを生む、という好循環に入っています。

 

そしてもちろん、Khloé Kardashian本人の知名度も無視できません。ただ、セレブブランドなら何でも売れるわけではないと思います。

 

Targetでは、1店舗あたりの週次売上がポップコーンカテゴリー平均を96.4%上回るなど、売れ行きも好調。Walmartでは、購入者の62%がそれまでポップコーンをあまり買っていなかった新規顧客と、Khloudによって従来より購入量や購入機会が増えた追加顧客だったという結果も出ています。これはKhloé Kardashianという知名度で購入させているだけではなく、商品そのものがリピートや新規需要を生んでいることになります。

 

@khloudfoods

Khloud’s at Costco…have you tried it? 💫

♬ original sound – KhloudFoods

 

そして、私が気になっていた、かわいいパッケージデザインについても調べてみました。

 

パッケージデザインは、Amazon、Coca-Cola、Samsungなどを手がけたTurner Duckworth(ターナー・ダックワース)というブランドデザイン会社が手がけています。

 

Turner Duckworthは、パッケージデザインだけではなく、ブランド戦略、ビジュアルアイデンティティ、パッケージシステム、トーン・オブ・ボイス(ブランドがどんな話し方をするかといった言葉遣いやトーンのルール)まで手がけています。パッケージに使われているパステルカラーやモコっとしたロゴ文字もその一環です。

 

KhloéとTurner Duckworthが目指したのは、従来のプロテイン食品っぽく見えない、軽くて楽しくて少し夢っぽいブランドです。

 

Khloéからは、Khloudを“軽くて、エアリー、少しドリーミー”にしたいという希望があり、彼女の好きな雲や夕焼けが、そのまま空色やパステルのカラーパレットに反映されたとのこと。かつ、“Khloéの肩の力の抜けた前向きさ”を表現しながら、「健康的」で「おいしそう」と思わせることを狙ったと説明しています。そして、店頭で目を引くだけでなく、自宅でも外出先でもInstagramに載せたくなるようなデザインを目指したそうです。

 

もう一つ重要なのが、既存のプロテインスナック売場との差別化です。Khloéは開発時に「男性やジムに寄りすぎていないプロテインスナックが市場に足りなかった」と話しています。

 

「女性向けプロテインブランドを作ろう」と最初から決めていたわけではなく、Khloéによると、プロテインスナックの棚をかなり研究したうえで、遠くからでも目立つコントラストを作ろうとした結果、パステルや雲の世界観になったということ。実際に、子どもにもパッケージが好評で、購入者も女性だけではないそうです。

 

@khloudfoods loving khloud popcorn: green flag ✅ #khloud #proteinsnack #review ♬ original sound – KhloudFoods

 

Khloudという名前は、Khloéとcloud(雲)を掛け合わせたもの。ポップコーンを小さな雲に見立てたネーミングで、その「空・雲・軽さ」という世界観が、空色のパッケージから独自のプロテインパウダー「Khloud Dust」にまで一貫してつながっています。

 

いかがでしたでしょうか。

 

今回は、本コラムではあまり取り上げない「セレブが立ち上げたブランド」を紹介してみました。

 

Khloudが興味深いのは、ポップコーンやトルティーヤチップスといった日常的なスナックから気軽にプロテインを取れること。さらに、従来のプロテインスナックにありがちな男性的、フィットネス寄りのイメージから距離を取り、軽やかで親しみやすいブランドに仕立てていること。そして、Starbucksを単なる販売先ではなく、ブランドを知ってもらい、試してもらうためのメディアのように活用していることです。

 

もちろん、日本にもプロテインスナックはあります。ただ、Khloudのように、まず普通のお菓子として魅力的で、そのうえでプロテインまで取れるという商品は、まだそれほど多くありません。これからはアメリカでも日本でも、ただおいしいだけではなく、プロテインやコラーゲンなど、健康やウェルネスにつながる機能性を自然に取り込んだお菓子が、もっと増えていくのかもしれませんね。

 

(参考)

khloudfoods.com

Khloé Kardashian’s Khloud Is Betting Big On Protein Chips – Forbes

Khloé Kardashian’s popcorn takes off after winning coveted Starbucks display – Forbes

Khloé Kardashian’s Khloud Brand Scales At Walmart As Retailer Refines Wellness Category – Forbes

Khloé Kardashian And Kendall Jenner Partner On Exciting New Cinnamon Khloud Flavor – Forbes

KHLOUD Make It Pop – Turner Duckworth

How Khloé Kardashian’s snack brand Khloud got ahead of the protein craze: ‘The timing was everything’ – Fortune

プロフィール
FIND IT. LOVE IT.
藤井さゆり氏
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。
foxylilly.com
Instagram: @foxylilly

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