AIで食品ロス分析、食品廃棄物を資源に変えるスマートごみ箱「Mill」
何年か前、オレゴン州ポートランドの一軒家にAirbnbを利用して宿泊した時のことです。その家のキッチンには、コンポストビンが置かれていました。コンポストビンとは、後で堆肥として再利用するために、生ごみを一時的に保管しておく容器です。滞在中、私たちもそこに生ごみを入れていたのですが、しばらくするとコバエが発生してしまいました。
調べてみると、キッチン用の一時保管コンポストビンは、管理の仕方によってはコバエが発生しやすく、特に夏場は1〜2日ごとに屋外のコンポストへ移すなど、こまめな対応が必要なのだそうです。
今回ご紹介するのは、そんな生ごみの悩みを解決してくれるスマートごみ箱「Mill(ミル)」。生ごみを乾燥・粉砕し、再利用可能なFood Grounds(食品の粒)へと変えてくれます。
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Millはそのようなコンポストビンや一般的な生ごみ処理機とは少し違い、「乾燥+粉砕+保管」を組み合わせた仕組みとなっています。
使い方はこうです。
1. 食べ残しの生ごみをそのままMillに入れる
野菜くず、果物の皮、パン、ご飯、肉、魚、骨(一部)、卵の殻などをそのまま投入。生ごみを細かく刻む必要はありません。
2. 夜間にMillが自動的に、温風でゆっくり乾燥、かくはん、粉砕を行う
高温で焼くのではなくゆっくり水分だけを飛ばします。リンゴ1個分の皮を捨てたとしても、乾燥後は軽くてサラサラした粒になります。
3. Millのカーボン(活性炭)フィルターがにおいを除去する
処理中の空気が活性炭(カーボン)フィルターを通り、このフィルターが魚、肉、玉ねぎ、ニンニクなどのにおいを吸着するため、キッチンでも快適に使えます。
4. Food Groundsになる
翌朝にはFood Groundsと呼ばれる乾燥した食品粒になります。特徴は、水分がほぼない、腐りにくい、軽い、においが少ないこと。見た目はコーヒーかすや粗いお茶の葉のような質感です。
5. Food Groundsをリサイクル
Food Groundsがたまったら、自宅でコンポストや土壌改良材として活用したり、Millの専用ボックスへ入れて飼料製造施設に郵送すると、Food Groundsを家畜飼料として再利用できる仕組みがあります。
この仕組みを利用すると、家庭から出た生ごみ→飼料製造施設→養鶏場→卵→家庭へという循環を作っていることになります。
家庭から送付されたFood Groundsは品質検査を行い、基準を満たしたものが鶏の飼料原料として供給され、基準を満たさないものはコンポスト化され、埋立地には送られないようになっています。
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ユーザーは毎日スイッチを押す必要はほとんどありませんし、普段のお手入れもほとんどありません。必要なのは、カーボンフィルターを約6カ月ごとに交換、内部を必要に応じて軽く拭く、Food Groundsがいっぱいになったら取り出す程度です。
デザインはマットな質感、シンプルなフォルム、家具のような存在感で、キッチンに「見せて置ける」ことを意識したものになっています。
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従来のコンポストは、虫が湧いたり、においが出たりするなど、また外に置ける庭が必要だったりして、管理が大変という課題がありました。一方でMillは、キッチンに置けるデザインで、においを抑える設計、自動処理でFood Groundsができ、食品を循環させる仕組みを持っています。
その他にMillをWi-Fiに接続することで、スマホのアプリから、夜中や電気料金が安い時間帯で設定した時刻に自動で乾燥・粉砕サイクルを実行できたり、どれくらい食品を投入したか、どれだけFood Groundsを作ったかの他、CO₂削減量といった利用データが記録されます。
上記のような仕様で、価格はMill Essentialが999ドル(約16.4万円)、Mill Plusは1,149ドル(約18.8万円)。Mill Plusはカーボンフィルターが大きいのでフィルター交換が12カ月に一回だったり、内部に重量センサーが付いていたりと便利な機能が付いていますが、内部の容量は6.5リットルと同じです。
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Millは、Appleでソフトウェアエンジニアをしていた現CEOのマット・ロジャース(Matt Rogers)と現Presidentのハリー・テネンバウム(Harry Tannenbaum)が共同で創業したスタートアップです。本社はシリコンバレーエリア、カリフォルニア州サンブルーノにあります。
マット・ロジャースは、初代iPhone開発チームのメンバーでもあり、iPodの開発にも携わっています。その後、スマートホームデバイスNestを共同創業し、2014年にNestをGoogleへ約32億ドルで売却、2020年にMillをハリー・テネンバウムと共同創業しました。
ハリー・テネンバウムは、Nest時代からマット・ロジャースと働いてきたパートナーであり、Nestでは製品企画、オペレーション、ビジネス開発などを担当、NestがGoogleに売却された後はGoogle Hardwareでディレクターを務めました。Millでは事業戦略、パートナーシップ、食品循環システムの構築を主に担っています。
創業はパンデミック中の2020年。気候変動について関心のあったハリー・テネンバウムが食品廃棄物問題の大きさに衝撃を受けて、その問題意識をマット・ロジャースに持ちかけたことが出発点となり、二人でMillの構想を練り始めました。
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最初の製品を発表したのは2023年1月。翌2024年2月には、より速く、静かで賢いモデルへ進化した第2世代を発表しています。
2025年4月には、CEOのマット・ロジャース自身が過去12カ月の売上が2,000万ドル(約30億円)を超えたとインタビューに答えています。
Millの評価ですが、執筆時点で、自社ウェブサイトでは5段階評価中4.8を獲得しています。におわないこと、デザイン、使いやすさ、環境への貢献に対する満足度は高く、サイズが少し大きいことや価格について不満が多い傾向が見られます。
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そして現在、高級スーパーマーケットWhole Foodsなどから「Millの業務用も作ってほしい」という要望を受け、レストランやスーパーマーケット向けの業務用の新製品を開発。
業務用の新製品には「食品廃棄物を乾燥・粉砕し、体積を約80%減らすこと」と「AIとカメラで、何が、どれだけ捨てられたかをリアルタイムで分析する」という役割を備えています。
例えば、スイカの皮1.5パウンド(約680グラム)、ジャガイモ0.5パウンド(約227グラム)といったレベルまで自動で識別・計測でき、厨房の食品ロスを可視化できるように設計、さらに、誤って捨てられたフォークなども検出でき、スタッフ教育にも役立てられるそうです。
また、レストランの厨房で使われているメニュー作成や在庫管理ソフトと連携し、「盛り付け量が多すぎる」「食材を仕入れすぎている」「レシピを見直したほうがいい」といった改善策を提案し、最終的には、「発注量の調整」「メニュー変更」「シェフへの通知」まで自動化する構想です。
既存の食品廃棄分析システムでは、捨てるたびに食品をカメラの前に置き、重量を量り、タッチパネルで食品名を確認するといった手間が必要でした。しかし、忙しい厨房ではこうしたひと手間が積み重なると、次第に使われなくなります。
そこでMillが目指したのは、「いつも通りごみを捨てるだけ」でデータが集まる仕組みです。スタッフは普段と同じように食品を捨てるだけで、AIが食材の種類や量を自動で認識・記録していくという形です。
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いかがでしたでしょうか。環境のために生ごみを資源に変えるごみ箱が、AIにより「いつも通りごみを捨てるだけ」で食品ロスの分析からレストランのメニュー変更まで提案できるようになるなんて、レストランや食品業界にとってはとても画期的ですよね。
ちなみに、Millのインスタグラムには製品だけではなく、プロのシェフによる美味しそうな料理のレシピもたくさん投稿されていて、見ているだけでも楽しいです。CEOのマット・ロジャースがApple出身ということもあるのか、製品そのものを売るのではなく、製品を使って何ができるか、どんな暮らしが実現するかという「体験」を伝えることを重視しているところにAppleのDNAを感じました。興味のある方は、ぜひインスタもチェックしてみてください。
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(参考)
Google Acquires Smart Thermostat Maker Nest For $3.2 Billion – Forbes
Exclusive: VC-backed Mill reaches $20M in revenue, sets expansion – AXIOS

foxylilly.com
Instagram: @foxylilly






