健康ソーダブランドOLIPOPがどうやって「新しいタイプのソーダ」として生まれ変わったのか?
コーラやペプシなどの炭酸飲料は、アメリカでソーダと呼ばれます。
アメリカは今、‟健康ソーダ”ブーム。新しいブランドが次々と登場し、スーパーマーケットでもコカコーラやペプシとは別のコーナーが設けられ、さまざまなブランドが並んでいます。ここでいう「健康ソーダ」とは、低糖・低カロリーでありながら、プレバイオティクス(食物繊維などの善玉菌のエサになる成分)など体に良い成分を加えた炭酸飲料のことを指します。
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健康ソーダは、コカコーラやペプシ、人工甘味料を使ったダイエットコークとも違い、「おいしさ」と「体に良い機能性」を両立させているところが特徴です。
その分、価格は一般的な炭酸飲料と比べてやや高価格帯で、アメリカの一般的なソーダ(コカコーラ、ペプシ、ドクターペッパーなど)の12オンス缶は、スーパーでは1缶あたり約0.75〜1.50ドルで販売されることが多いですが、健康ソーダは、1缶あたり2.50〜3.00ドル前後が一般的な価格帯。
2〜3倍近い価格差がありながらも、2024年には、アメリカの健康ソーダ市場は約18億ドル規模に達したとも報じられており、前年比83%という驚異的な成長を記録。2025年には、The Coca-Cola Company、PepsiCo、Keurig Dr Pepperといった飲料業界大手が本格参入しています。
その健康ソーダ飲料市場の中心にいるのが、OLIPOP(オリポップ)です。
カリフォルニア州オークランドに拠点を置くOLIPOPは、スタートアップ発のブランドでありながら、「健康ソーダ」というカテゴリーそのものを切り開いてきました。
2018年の登場以来、プレバイオティクスを取り入れた“体にやさしいソーダ”という新しい価値を提示し、低糖・低カロリーにとどまらない「おいしさ」と「機能性」の両立によって支持を広げました。発売からわずか5年後の2023年に売上高2億ドルを突破。さらに翌年には年間売上高が4億ドルを超えるなど、健康ソーダ市場を代表するブランドへと急成長しています。
OLIPOPが特徴的なのは、そのブランドの作り方です。
クラシックソーダを想起させるフレーバーやノスタルジックなパッケージ、そしてSNSを通じた一貫した世界観によって、“飲料”ではなく“カルチャー”として受け入れられています。
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その背景には、成分や機能性だけでなく、「健康ソーダをどう魅力的に見せるか」という視点も大きく関係しています。
2018年1月の創業当時のパッケージデザインを見てみましょう。
この当時はSparkling Digestive Tonic(消化をサポートする炭酸飲料)と記載があり「健康飲料」を前面に押し出したデザインでした。しかし、フレーバーのStrawberry Vanillaの文字が小さく、印刷されているイラストも何を意味しているのかわかりにくい印象です。
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しかし創業してすぐの2018年7月に、大規模なリブランドを行っています。このプロジェクトは、ノースカロライナのデザインスタジオBreak Maidenが行っており、ブランドアイデンティティ、ブランドガイドライン、パッケージデザイン、アートディレクション、イラストレーションを手掛けています。
Break Maidenのウェブサイトによると、このリブランドは、
親しみやすさと現代性を丁寧に融合させるアプローチを採用。レトロなタイポグラフィ、やわらかなパステルカラー、クリーンでミニマルなレイアウトを組み合わせることで、ノスタルジーに根ざしながらも現代的なブランドアイデンティティを構築した。
とあります。
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リブランド後のデザインは、視覚的にどんなフレーバーなのかすぐわかりますし、健康飲料と思わせないようなタイポグラフィやイラストが親しみやすく、楽しそうなデザインが「飲んでみたい!」という気分にさせますよね。
また、Sparkling Digestive Tonicをやめて、Supports Digestive Health(腸内環境をサポート)に変更し、これを真ん中ではなく上部に記載。同時に、“A New Kind of Soda(新しいタイプのソーダ)”というブランドスローガンを打ち出しました。これは、以前は健康飲料寄りであったものを「新しいソーダ」として再定義し、カテゴリの見え方そのものを変える試みでした。
このレトロなタイポグラフィとミニマルなイラストを組み合わせた「懐かしさ」と「現代的なウェルネス」を融合したデザインは、その後のOLIPOPブランドの基礎となります。
「健康ソーダ」として機能性を語るだけでは広がらなかった市場を、ブランディングやデザインの力で“魅力的なソーダ”として再定義した点に、OLIPOPの本質があります。
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これを証明するかのように、このブランド刷新以降、その効果は目覚ましいものとなりました。OLIPOPは急速に展開を拡大し、全米で20,000以上の店舗に進出。Whole Foods、Target、Wegmansといった大手スーパーマーケットにも並ぶまでに成長しています。このデザインは2018年〜2026年の5月まで使われました。
そして、2026年5月に久しぶりにリデザインが行われています。このデザインはサンフランシスコを拠点とするデザイン会社Collinsが手掛けています。
このリデザインでは、新しいブランドスローガン “The Feel Good Soda(気分がよくなるソーダ)” を打ち出すとともに、ロゴの調整、パッケージのリデザイン、イラストシステムの再構築、ブランドキャンペーン、ソニックロゴ(音のブランドアイデンティティ)が再設計されました。
ソニックロゴとは、数秒の音やメロディでブランドを認識させる「音のロゴ」のこと。例としては、Netflixの「ドゥーン」やIntelの「テレレレ〜ン♪」の5音など。下記のインスタの投稿でソニックロゴを聞くことができます。
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今回のデザインでは、“Supports Digestive Health”という表記はすでに消えています。機能性で選ばせるのではなく、「飲んでみたい」と思わせる魅力そのもので選ばれる設計へとシフトしているということですね。
OLIPOPが自社のソーダを“魅力的で新しいソーダ”として再定義した点は、SNSマーケティングにも表れています。 インフルエンサーを起用しても、それは単なる露出ではなく、ブランドの世界観を拡張する手段として機能しているのです。
例えば、インフルエンサーの投稿でも、商品を説明するのではなく、カラフルな缶が日常のシーンに自然に溶け込むように表現されています。それは広告というよりも、OLIPOPの世界観の中で“どう存在するか”を示すビジュアルになっているのです。
例として、実際のInstagram(インスタ)投稿をいくつかお見せしましょう。
今や世界的にも有名な日本人のシニア世代のおしゃれカップルインフルエンサー、Aki and Koichi。
※投稿元が埋め込める設定になっていませんでしたので、ここのリンクを参照してください。
シャーリーテンプル味を宣伝している動画ですが、お二人が缶のカラーに合わせて赤と白を入れた装いをしていて、OLIPOPの世界観に溶け込んでいますよね。おしゃれでレトロ感のあるOLIPOPのパッケージデザインと相性ピッタリです。
次は、モデル、クリエイター、アーティストとして活躍するインフルエンサー、Jessie Lamworth。
グミサプリブランドGrünsとOLIPOPのストロベリーバニラフレーバーのコラボ商品のプロモーションでは、空になったパッケージを縫い合わせてブラトップとスカートを制作するというユニークなストーリーが展開されています。
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商品の説明をするのではなく、プロダクトそのものを素材にして新たな表現へと昇華させている点が印象的です。その結果、商品だけでなく、彼女自身の魅力も自然と引き立ち、ブランドの世界観の中で一体となって見えてきます。
最後に、女子フラッグフットボールのアメリカ代表選手であり、インフルエンサーとしても活動するAshlea Klam。
ラズベリーソルベ味を紹介する動画では、彼女の健康的で前向きなライフスタイルがそのままブランドの世界観と重なり合っています。楽しい夏のドリンクというイメージの中に、彼女自身が自然に溶け込み、あたかもその世界の一部として存在しているかのように描かれているのが特徴です。
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OLIPOPのインスタの投稿は、ブランドの世界観がしっかりと感じられ、商品そのものの魅力がより際立って見えます。
実はこのコラムを書くにあたり、勢いのある同じ健康ソーダ業界の競合ブランドについても調べてみました。多くのインスタ投稿ではインフルエンサーマーケティングが中心で、パーティーに集められたインフルエンサーたちがカメラ目線でソーダを手にする、いかにも広告的な表現が目立つなと思っていたところでした。
その対比として、OLIPOPの投稿は、同じようにインフルエンサーを起用しながらも、ブランドの世界観が自然に立ち上がってきます。それぞれの投稿が、世界観を引き出すために丁寧に設計されており、単なる露出ではなく、ブランド体験そのものをつくり込んでいるように感じられました。
健康であることを“説明する”のではなく、“魅力を感じさせる”設計に変えたこと。それこそが、OLIPOPが「新しいソーダ」として受け入れられた最大の理由なのかもしれません。
OLIPOPのインスタにはこの他にも商品の魅力を引き出している投稿がたくさんありますので、ぜひチェックしてみてください。
(参考)
Modern sodas see sales proliferate – Beverage Industry
How a scruffy, SF-born CEO disrupted a $55 billion industry

foxylilly.com
Instagram: @foxylilly






