「街が、舞台になる夜」 F1シンガポールGPと”都市演出”のクリエイティブ

Vol.70
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.
Junya Oishi
大石 隼矢氏

 

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。10月のシンガポールといえば、やはりF1です。先日、10月9日から11日にかけて「F1シンガポール・グランプリ」がマリーナベイ市街地コースで開催されました。会社帰りにビルの谷間からエンジン音が響いてくると、「ああ、今年もこの季節か」と毎年ワクワクします。今回はこのビッグイベントを、レースの話としてではなく、「都市をどう魅せるか」というクリエイティブの視点から書いてみたいと思います。

 

■ 世界初のナイトレースが、街を舞台に変えた

シンガポールGPが特別なのは、これが2008年に始まった「F1史上初のナイトレース」だからです。

夜8時、ライトアップされたマリーナベイの摩天楼を背景に、フォーミュラカーが公道を駆け抜ける。全長約4.9km・19コーナーの市街地コースは、路面が荒く高温多湿で、ドライバーがレース中に約3kgの 体重を落とすほど過酷だといわれます。けれど観客にとっては、これ以上ないほど絵になる舞台です。

僕がいつも思うのは、シンガポールは「レースを開催している」のではなく、「街そのものを舞台装置として演出している」ということです。あの夜景は、世界に向けた最高のシティ・プロモーションになっています。

 

■ 2026年の新機軸  街も、毎年”更新”される

今年のシンガポールGPには、新しい試みがありました。同地では初開催となる「スプリント」フォーマットの導入です。土曜に短距離のスプリントレースが組まれ、週末全体の見せ場が増えました。

18年目を迎えてなお、ただ同じことを繰り返すのではなく、体験を更新し続ける。これはこのコラムで何度も触れてきた「更新し続ける街」というシンガポールの姿勢そのものだと感じます。定番になっても、止まらない。だから毎年、世界中の人がまた来たくなるんですね。

 

■ レースだけじゃない——”都市まるごと”の演出

そしてF1シンガポールの真骨頂は、実はサーキットの外にあります。

レース期間中は世界的アーティストのコンサートが連夜開かれ、街のあちこちでフリンジイベントやアフターパーティー、特別ライトアップが展開されます。3日間で街全体が一つの巨大なエンターテインメント空間に変わる。訪れる人は「レースを見に来た」というより、「この街の祝祭を体験しに来た」という感覚に近いと思います。

この巨大な”体験”を成立させているのが、実は膨大なクリエイティブの仕事です。ステージ演出、照明デザイン、映像・プロジェクション、会場のビジュアル、SNS用のコンテンツ、グッズやサイン計画、 数え上げればきりがありません。華やかな夜の裏側には、その何倍もの「見せ方を設計した人たち」がいます。

 

■ 「都市を魅せる」仕事は、人がつくる

現地にいる立場として強く感じるのは、シンガポールが「イベントを、都市の経済とブランド価値に変える」ことに本当に長けているということです。

一夜のレースを、観光・MICE・エンタメ・不動産まで波及する一大産業に育て上げる。その中核には、必ず「どう魅せるか」を考えるクリエイターの存在があります。映像ディレクター、空間デザイナー、ライティングデザイナー、イベントプロデューサー……。 彼らこそが、都市を舞台に変える立役者です。

日本でも各地でイベントや観光による地域活性が語られますが、「魅せ方の設計」にどれだけクリエイティブを投資できるかで、その成否は大きく変わると思っています。

 

■最後に

エンジン音が消えた翌朝、いつもの通勤路に戻った街を歩きながら、僕はいつも思います。あの熱狂は自然に生まれたものではなく、緻密に「設計」されたものなのだと。

都市を魅せる。ブランドを魅せる。商品を魅せる。スケールは違っても、その根っこにあるのは同じ「クリエイティブの力」です。私たちフェローズは、シンガポールで培われたその”魅せる力”を持つ人材と、それを必要とする企業や地域をつないでいきたいと考えています。2026年も残りわずか。この街の祝祭から、また多くのヒントをお届けできればと思います。引き続き当コラムをよろしくお願いいたします。

 

参照リンク
■ Singapore Grand Prix 2026|Formula 1
https://www.formula1.com/en/racing/2026/singapore

■ Formula 1 Night Race|Singapore GP 公式
https://singaporegp.sg/en/

 

■フェローズシンガポールの活動について
私たちFELLOWS CREATIVE STAFF SINGAPORE(フェローズシンガポール)は、シンガポールおよび東南アジア各国に拠点を置くクリエイティブ人材やプロフェッショナル人材との広範なネットワークを活かし、企業の皆さまの多様な課題に応える伴走の支援を行っています。
ブランド戦略に関わるアートディレクター、デザイナー、マーケター、映像・編集・ライティングのスペシャリストはもちろん、現地ならではの文脈を理解したローカル人材との共創体制の構築も可能です。
もしこの記事を通して「外部のクリエイターや現地人材の力を取り入れたい」と思われた方がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。
課題の明確化から人材の選定・伴走支援まで、一気通貫で対応いたします。
詳細はプロフィールよりご覧いただけます。皆さまからのご連絡をお待ちしています。

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.
大石 隼矢氏
1990年 静岡県焼津市生まれ。2012年 京都外国語大学 卒。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。シンガポール国内のクリエイティブ人材や専門職人材に特化した人材マネジメントサービスを提供している。
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